結核の治療

T、結核の初回化学療法

RFPの開発を契機として、この十数年の間に結核化学療法短期化の研究が世界各国で推進され、従来2〜3年は必要とされていた治療期間が、少なくとも初回治療に関する限り1年以内に短縮できることが明らかにされ(短期化学療法)、初回治療の進め方に画期的な変革がもたらされた。

【化学療法の基本方針】

感性剤のみによる併用療法が原則で、それには治療前(3回)、治療中(毎月1回)の菌検査、耐性検査が不可欠である。治療初期(2〜6ヵ月)に極力強力な方式を処方し、菌陰性化すれば処方を減弱する(初期強化化学療法)。

【薬剤の選択】

抗結核薬の序列、耐性基準 、投与法を一括表示したが(表1)、この表を用いて、耐性剤を除き、感性剤の中から上位3剤を選べば、それが最適の処方となる。ただしマイシン剤同士の併用は副作用が重複するので禁忌。また交叉耐性の関係でマイシン剤の使用順位は、SMKMCPMまたはEVMとする。

従来SMINHPASの3剤を一次薬、その他を二次薬と呼び、一次薬3剤併用が初回治療の標準方式とされていたが、現在はこの区分が撤廃され、INHRFPの2剤にSMまたはEBを加えた3剤併用(軽症例ではINHRFPの2剤併用)が初回治療の標準処方となった。

【治療期間】

従来、一次薬による初回治療で菌陰性化した無空洞または空洞閉鎖例では約2年、再治療例はこれより半年〜1年長く、初回治療で菌陰性化した空洞残存例では菌陰性化後約3年、再治療による菌陰性空洞残存例の治療期間は不明とされていたが、今後の初回治療はINHRFPを主軸とする6〜12ヵ月の短期化学療法が標準となった。

U、結核の再治療

入院時菌陽性例の約20%が再・継続治療例である。診断確定のために治療開始前に3回菌検査をおこない耐性検査を実施する。X線所見のみで治療を再開している例が非常に多い。菌検査とともに確実な既往歴(治療内容、排菌経過、副作用)をとる。不明のときは保健所に問い合わせる。

治療は感性薬剤による多剤併用を原則とし、有効薬剤を十分生かしきれるように治療方式を工夫する。治療が有効なら治療開始6ヵ月後までに培養陰性化をみる。6ヵ月までに培養陰性化の果たせないとき、あるいは一旦陰性化後再排菌した場合は使用薬剤を変更する。変更に当たっては使用中の全部の薬剤を止めて、別の未使用薬剤、感性薬剤の組み合わせにかえる。

再治療の治療成績は治療開始時の薬剤、とくにINHRFPの耐性の有無により大きく左右される。INHおよびRFP感性例は他剤も感性のことが多く、初回治療の標準治療に準ずることができる。RFP感性・INH耐性例では培養陰性化後1年半の化学療法が必要である。RFPを含まない治療で培養陰性化に成功した空洞閉鎖例ではXP所見の改善停止後2年〜2年半治療を継続する。主剤のIMHRFPが耐性になったとき、主剤以外の治療で6ヵ月後になお菌陽性の例は外科治療を検討する。

 

V、結核の外科治療

結核に対する外科治療は、化学療法が発達するまでの長い歴史に間に、Forlaniniの人工気胸術を初めとし、種種工夫され、今日の肺癌に対する外科療法などの胸部外科隆盛の基礎を築いた。しかし、強力な化学療法が出現し、内科的療法が著効を示すようになった今日、外科療法の適応となる結核症例は著減した。

@、外科療法の適応症例

    1. 薬剤耐性菌による難治性排菌陽性肺結核
    2. 気管気管支の瘢痕性狭窄
    3. 膿胸合併例

A、外科療法の術式

直達療法として肺切除術、切開排膿療法、気管気管支形成術が行われており、虚

脱療法として胸郭形成術、骨膜外充嗔術が行われている。このうち主力をなすの

は肺切除術と気管・気管支形成術である。

難治性排菌陽性例が手術対象となるため手技的には高度なものが要求され、術

後合併症をきたさないための努力が必要である。