ボツリヌス菌の歴史的背景

 

ボツリヌス菌は、1895年ベルギーのエルメンゲンによって発見され、肉製品によ

る食中毒の原因菌であることが発見されました。ソーセージを意味するラテン語「ボ

ツルス」にちなんで、「ボツリヌス」と命名されました。

<報告されているボツリヌス中毒>

北海道の漁村:1951年自分で作った「いずし」を食べて死亡。さらにその女性の

通夜にきた隣人知人がこの「いずし」を食べてしまい、4人の死亡者と3人の重症者

が出てしまいました。多数の死亡者が出たため、犯罪事件と疑われましたが・・・食

べ残した「いずし」からボツリヌス毒素を証明し原因がわかりました。

熊本のカラシ蓮根:1984年7月みやげによる食中毒であったため被害は13都道

府県にわたり食中毒患者は38人、そのうち11人が死亡しました。この原因になっ

たカラシ蓮根は、油で揚げた後に真空パックに詰められたもので、当時は安全な保存

食品と考えられていました。しかし、土壌に分布(食品が蓮根ですし)しているボツ

リヌス菌は、5分の煮沸で破壊されますが、油で揚げることによって菌自体は死滅し

ても、菌が作る芽胞は生き残ります。

<ボツリヌス菌による食中毒の発生状況>

我が国においては、昭和59年にA型ボツリヌス菌に汚染された辛子レンコンを原因

食品として患者36人、死者数11人の大規模な発生がありましたが、昨年までの過

去10年間の発生状況をみると、事件数14件、患者数29人、死者数0人であり、

死者は昭和60年以降みられていません。(なお、本年は6月30日現在までに事件

数2件、患者数4名の発生。)

また、本年6月にはマレーシア産オイスターソースからA型ボツリヌス菌が検出さ

れ、気泡の発生等製造工程に起因する衛生上の問題が強く疑われたことから、同一

ロット製品等の回収等が行われた事例がありました。

一方、米国における患者の発生状況をみると、大規模な集団発生のあった平成6年

(1994年)の50人を除き、最近では年間20人台の発生が報告されています。