真核生物のべん毛の構造

担当 末松

 

すべての真核生物のべん毛は、軸糸(axonema)とよばれる微小管束からなっている。9本の外側ダブレット微小管が、中心にある1対のシングレット微小管を囲んでいる。

この微小管の「9+2」配列は、ほとんどすべての繊毛とべん毛の基本構造である。(図1参照)

(図1)

各ダブレット微小管はA,B管(またはサブファイバー)からなる。A管は13本のプロトフィラメントからなる完全な微小管であり、B管は10本のプロトフィラメントからなる。このA,B両管が1本ずつ融合して管壁を一部共有した形を取っている。軸糸を作る微小管束は円筒状の細胞膜で囲まれている。生物や細胞のタイプに関わらず、軸糸の直径は約0.25μmとほぼ一定であるが、長さはたいそう異なり、数μm〜2mm以上と変化する。

細胞に付着するところで、軸糸は基底小体(basal body)と連結している。(図2参照)基底小体の構造は、動物の中心体の中央に埋まっている中心小体と同一で、生物によっては基底小体が機能的に互換性を持つ。基底小体は長さ0.4μm、直径0.2μmの円筒状で3つの微小管が融合したトリプレット微小管が9組配列してその壁を作っている。(図3参照)

(図2)べん毛の基部の写真

 

(図3)べん毛基底小体の写真

 

各トリプレット微小管は1本の完全な13本のプロトフィラメントの微小管(A管)を持ち、これに不完全なC管が融合したB管がついている。基底小体のA、B管は軸糸の微小管に続いているが、C管は基底小体と軸糸間の移行帯内で終わっている。(図4参照)基底小体は、軸糸の伸長を開始させるのに重要な役割を果たす。

(図4)

 

軸糸内では2本の中心シングレット微小管と9本の外側ダブレット微小管は軸糸の全長にわたって続いている。外側のダブレット微小管は軸糸でのみ見られるチュ−ブリンの特別な重合体である。各ダブレット微小管のA管に固定して結合しているのは内、外のダイニン腕の2列である。(図5参照)

(図5)

 

これらのダイニンは隣り合うダブレットの微小管のB管に接している。ダブレット微小管のA管とB管結合部はテクチン(tektin)という蛋白質で強化されている。テクチンはαヘリックス蛋白質で中間径フィラメント蛋白質と似た構造を持っている。直径2mm、長さ約48nmの各テクチンフィラメントは、A管がB管に接する外側ダブレット微小管の壁に縦方向に走っている。

 

軸糸は3通りの質架橋によって束ねられている。(図6参照)シングレット微小管の中心対ははしごの横棒のような周期的な架橋によって連結され、内部鞘(inner sheath)と呼ばれる繊維構造によって囲まれている。ネキシン(nexin)と呼ばれる蛋白質からなる、第二の連結は隣り合う外側ダブレット微小管をつないでいる。軸糸に沿って、86nmの周期で存在するネキシン連結は弾性構造である。それは、打波の際に外側ダブレット微小管が縦方向に互いに滑走するのを可能とするからである。第三の連結は、放射状スポーク(radial spoke)からなり、中心シングレット微小管から放射状に外側ダブレット微小管の各A管に伸びている。

(図6)

 

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