ヘルペスウイルスの種類と増殖について

 

14班

99079 福田 いずみ 99080 藤原 元嗣 99081 松野 文子

99082 松本 美根子 99083 道又 潮香 99084 村田 和久

 

GIO

ヘルペスウイルスの種類及び、感染,増殖の仕方を理解し将来役立つ知識を身につける。

 

SBO

・ヘルペスウイルスの種類を挙げることができる。

・ヘルペスウイルスの構造について説明できる。

・ヘルペスウイルスの増殖,感染の仕方を説明できる。

・ヘルペスウイルスによる感染症の病名を挙げ、その症状について説明できる。

・ヘルペスウイルスによる感染症の治療法(抑制法)を述べることができる。

 

ヘルペスウイルスとは…

直径約mの正20面体カプシド(100110nm)が、内にDNAを包み込み、外に宿主細胞核膜に由来するエンベロープを被った構造(150200nm)を示すビリオン(粒子としての形態と増殖する条件を備えたウイルス粒子)を、形態学的にはヘルペス型ウイルス、分類学的にはヘルペスウイルス科と定義する。

このようなヘルペスウイルスは、真菌から霊長類にいたる60種類以上の生物に分布している。その数はすでに90余種に及び、1種類の動物には数種類のヘルペスウイルスが見られる。その典型がヒトヘルペスウイルスである。

 

ヘルペスウイルスの性状

ウイルスはその生物学的性状にもとづき次の3つの亜科に分類される。

@)Alphaherpesvirinae(αヘルペスウイルス亜科)

ウイルスは培養細胞内での増殖が迅速で感染細胞は容易に破壊される。生体内で

は知覚神経節に潜伏感染する。

単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,ならびにB型ウイルスがその

例である。

 

A)Betaherpesvirinae(βヘルペスウイルス亜科)

培養細胞内でのウイルス増殖が緩慢で、感染細胞は 巨大となり、核および細胞質

に特有の封入体が形成される。ウイルスは、唾液腺,リンパ網内組織,腎臓など

潜伏感染する。

サイトメガロウイルスがその例である。

 

B)Gammaherpesvirinae(γヘルペスウイルス亜科)

宿主域は狭く、Bリンパ球かTリンパ球のいずれかを標的細胞として感染し、リ

ンパ組織に潜伏感染する。

EBウイルスがその例である。

ヘルペス群ウイルス感染と臨床像

初感染

再活性化

αヘルペス

単純ヘルペス1型(HSV-1)

口内炎

口内炎

単純ヘルペス2型(HSV‐2)

陰部ヘルペス

陰部ヘルペス

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)

水痘

帯状疱疹

βヘルペス

サイトメガロウイルス(CMV)

伝染性単核症

肺炎,網膜炎

ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)

突発性発疹

発疹症,肺炎

ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)

突発性発疹

βヘルペス

Epstein-Barrウイルス(EBV)

伝染性単核症

リンパ増殖異常症

ヒトヘルペスウイルス8

カポジ肉腫

 

 

単純ヘルペスウィルス

人で最も多く見られヘルペスウィルス科では代表的である。また細胞培養が容易であり(HSVは宿主範囲が広く、大部分の培養細胞で増殖し、サイクルも短い)、実験動物の系があるので最も多く研究されたウィルスの1つでもある。

単純ヘルペスウィルスは、1型と2型に分けられる。1型は主として口唇、眼、皮膚で発病し(口唇型:oral type)、2型は主として外陰部、尿道で発病する(性器型:genital type)。

 

表6−3 HSV-1HSV-2の比較

性状

HSV-1

HSV-

ヒトの感染

感染部位

初感染

発がん

 

ウイルス粒子

DNA浮上密度

(塩化セシウム中,

紫外線感受性

熱感受性

 

ウイルス感染細胞

細胞変性効果(CPE

ヒト胎児細胞

ニワトリの漿尿膜上のポック

チミジンキナーゼ

 

IUdR感受性

 

実験動物感染

ウサギ角膜炎

 

口唇、眼、皮膚(口唇型)

小児期

 

 

 

1.724〜1.726

 

 

 

 

円形化

1型特異的抗原性

40℃耐性大

 

 

 

中程度

 

外陰部・尿道(性器型)

成人期

子宮頚がん(?)

 

 

1.27〜1.729

 

 

 

 

巨細胞

2型特異的抗原性

40℃耐性小

 

 

 

1型より激症

 

構造

コア(DNAと蛋白)はバーベル上のコア蛋白を軸としてその周囲に2本鎖、線状のDNAの糸がドーナツ状に巻き付いてできている。カプシドは正20面体であり、その各面ごとに5個の、合計162個のカプソメア(6角柱、中央に穴が空いている)が対称的に配列している。

 

 

感染

<初感染の過程>

@ウィルスが皮膚表皮や粘膜に進入、増殖。

A隣接細胞への伝播によって、局所に病巣を生じる。

Bウィルスが局所リンパ節に向かって移動。同時に知覚神経繊維の末端に進入して軸 索内を上向し、1型は三叉神経に、2型は仙骨部脊髄神経節や生殖器周辺の自律神経節に到 達する。感染経路は、1型は唾液感染、2型は、膣分泌液・精液を介して主に感染する。

 

普通、ウィルス血症を生じないので遠隔感染は見られないが、まれにその可能性 もある。(まれに、2型性器感染時に流血白血球からウィルス血しょうが起こる。)

<初感染>

1型: 多くは1から4才の間で起こり、その大部分が不顕性である。成人に達するまでにほとんどの人が1型に対する抗体保有者となる。何故なら、HSVに対する中和抗体は初感染後1週間で結成中に見られ、3から4週間後にその抗体価は最高に達し、以後年齢とともに減少するからである。

2型:性交によって接触感染を受けるため性器での感染は成人期に多い。しかし産道感染による新生児の全身感染も見られる。

<再感染>

神経細胞に潜在していたHSVが活性化されると起こる。

<再感染の過程>

初感染による病巣の治癒後、ウィルスは関連領域内で潜伏感染に入る。その後、発熱、日焼け、移植受容者、免疫抑制剤投与中の患者など、諸種の刺激によって潜伏ウィルスが活性化し、再発となる。症状は一般に初感染のときよりも軽徴である。

 

 

増殖の仕方

エンベロープによって宿主細胞に吸着、細胞膜との融合又はエンドサイトーシスによって細胞質内に侵入。脱穀の後、核内で増殖し核膜を破って成熟。

 

症例

<1型>

咽頭炎、扁桃炎、角膜炎(再発病型)、皮膚炎、角結膜炎(初感染病型皮膚粘膜感染)、ヘルペス湿疹(カポジ水痘様疹:初感染病型皮膚粘膜感染)など

2型>

性器ヘルペス疹など

<主な病名とその症状と治療法>

1.急性ヘルペス性歯肉口内炎acute herpetic gingivostomatitis1型由来

症状: 突然の高熱に続く口腔粘膜、舌・歯肉の発赤、ほうしんと浅い潰瘍。

感染: 口あるいは手を介した唾液感染や、家族内感染、性行為感染も見られる。

治療:口腔内の洗浄、消毒、栄養、水分の補給、解熱薬の使用。公金薬による2時感染の予防。抗ヘルペスウィルス薬としてアシクロビル(ヘルペスウイルスが自らの核酸合成のために持つ特殊な酵素チミジンキナーゼによってリン酸化されてはじめて活性化し、ヘルペスウイルスの核酸合成を阻害する。このため、ヘルペスウイルスが感染していない正常ヒト細胞内では、ほとんどリン酸化されることなく、活性化されないので、ヒトに対する毒性は極めて少ないが、ヘルペスウイルス以外のチミジンキナーゼを持たない非ヘルペス属ウイルスには無効である。)の使用。

2.性器ヘルペスgenitial herpes2

症状:陰部に多発性の疼痛を伴う小水泡あるいは潰瘍。臀部、大腿にも生じる。

新生児がこれに産道で全身感染すると、重篤になる。→新生児ヘルペス(眼や皮膚の病変あるいは脳炎や全身感染症を引き起こし、致死率も高い。発熱,哺乳力不良などで始まり、次いで痙攣,呼吸窮迫,循環不全などに発展。)

感染:性交、母子感染。

治療:治療薬には、アシクロビルやビダラビン(Ara-A)がある。対症療法として、局所の痛みに消炎鎮痛薬の投与、局所麻酔剤の塗布が行われる。

3.単純ヘルペス脳炎

症状:脳炎の約1020%を占める。発熱、頭痛、悪心、嘔吐などで急性発症し、2〜数日で意識混濁から昏睡を呈する。原核、妄想、痙攣が見られる。時に精神神経症状で発症することがある。

感染:皮膚、口唇、角膜などから接触感染し、口内炎、角膜炎などを生じた後、知覚神経節に潜伏すると考えられている。三叉神経節に潜伏していたHSV-1が賦活されてまれに脳炎を起こす。

病理:病変は,浮腫の強い壊死性の炎症であり,出血を伴うこともある.側頭葉が最も侵されやすいが,前頭葉眼窩面,島回,扁桃体などもよく障害される.通常,病変は一側に強く偏っている.HSV-1は,ニューロンのみならずグリアや血管内皮細胞にも感染し,核内にCowdry A型封入体を形成する.

治療: アシクロビル,あるいはビダラビン(アデニンアラビノシド;Ara-A)が用いられる.前者がより有効で副作用が少ないが,後者は耐性を生じ難いという利点がある.. 腎障害や肝障害のあるときは投与量を減らす.

4.口唇ヘルペス(再発病型)1型由来

症状:口唇やその周囲に小水泡が指先ぐらいに集まってできる。後、水疱が自然に破れ、びらん(表皮がはがれたような状態)になり、最後はかさぶたになって治る。

他に眼、鼻、まれに手の甲、尻などの周りにもできる。

 

感染:唾液感染 、または再発だが、免疫機能が低下しているときに再発し易い。

治療:アシクロビル 。民間療法で、初期の冷却というのもある。その方法は、 患部を皮膚表面温度で7℃以下になるように冷やすという方法だ。この温度でウイルスが活動を停止するか死滅するのではないかと考えられている。

水痘‐帯状疱疹ウィルス(varicella-zoster virus

構造

VZV粒子の性状

 

粒子の形態上から単純ヘルペスウィルス(HSV)と異なる点は、ヌクレオカプシドのなかに存在するコアの比率に相違がある。VZVはコアのない粒子が多いことが特徴。

 

・粒子構成蛋白

 

VZVのウィルス粒子には少なくとも32種のポリペプチドが存在し、分子量は280,000-21,500である。

 

感染

 

VSVはウィルス保有者の鼻咽頭粘膜中もしくは皮膚水疱内に存在し、直接接触あるいは水疱内溶液の呼吸器への散布によって感染する。通常の環境では空気感染が主であるが、

病院内では医療従事者の手指、診療器具、衣服を介しての間接伝播も存在する。

VZVは上気道から侵入し、所属リンパ節で増殖する。そしてウィルス血症を起こして皮膚に散布され、表皮細胞で増殖する。ここで水疱が形成され、水疱が治癒したあともウィルスは脳神経あるいは脊髄神経の神経節に潜伏する。のちになんらかのの理由でウィルスが再活性化すると帯状疱疹を起こす。

 

症例

1.水痘・帯状疱疹

 

水痘と帯状疱疹の病原ウィルスである。同一ウィルスが未感染の小児に外因感染により水痘を、既感染者の年長者に内因感染により帯状疱疹を起こす。初感染児の70〜80%が水痘を示す。その後ウィルスは後根神経節に潜伏し、のちに外傷、結核、悪性腫瘍、免疫抑制療法などを誘因として再活性化し、神経を伝わって皮膚に感染し症状を起こす。この潜伏感染および再活性化のメカニズムはよく分かっていないが、帯状疱疹は免疫機能が低下すると再発しやすいと考えられている。

・水痘と帯状疱疹の比較

水痘

帯状ヘルペス

患者

小児(5〜9歳がピーク)

成人(主に老人)

抗体保有者

なし

あり

感染の型

顕性初感染

回帰発症

感染源

外来性

内在性

流行

あり

なし

臨床症状

全身(両側)の水疱形成

神経痛、水疱(片側)

ウィルスの体内伝播

血行性

経神経性

病変

上皮細胞

上皮細胞、神経節等

ウィルス抗体

IgM、IgG

IgG

帯状疱疹の組織像:

表皮内水疱が認められ,その内容にはウイ

ルス感染により変性した表皮細胞〜巨細胞

が含まれる.ウイルス感染による表皮細胞

の変性は風船様変性balooninig degenerat-

ionと呼ばれ,特徴的な形態を示す。

 

症状:VHV未感染者がウィルスに感染すると、11-21日の潜伏期間を経て発疹が出現する。全身に水疱があらわれ、同時に発熱をもよおす。発疹の数は患者により様々であるが、血小板減少症の患者は水疱が出血性となり、免疫抑制剤などを用いていると死亡することもある。

帯状疱疹はまず前駆症状として、片側の神経分布領域に一致して神経痛様の疼痛、知覚異常あるいは掻痒感が数日から一週間つづき、やがて水疱を生じる。この時期に軽度の発熱やリンパ節腫脹がみられることもある。水疱は23週間で完治に向かうが、時に壊死性の変化が強く、潰瘍となり瘢痕を残すこともある。

 

治療:

水痘患者にはアデニンアラビノシド(ara-A)とアシクロビル(ACV)がHSVVHVともに増殖を阻止する。対症療法として、解熱剤なども用いる。帯状疱疹患者には、通常は非ステロイド系消炎鎮痛外用剤と非ステロイド系消炎鎮痛剤の内服で十分であるが、疼痛が強い場合には星状神経節ブロックなどを用いたりする。

 

 

水疱 帯状疱疹

 

VZVの免疫

 

水痘、帯状疱疹のいずれの場合にもその回復機構に免疫が関与している。ウィルスを皮膚に接種すると、抗体保有者(水痘経験済み)は限局性の水疱形成で終わるが、非保有者は全身感染(水痘)を起こす。一般に水痘に対する免疫は一生つづくと考えられているが、まれに再び水痘に感染し発症することがある。これらの患者は抗体価が低く、細胞性免疫も低い。

 

 

 

サイトメガロウイルス

 

性状

DNAは分子量150*ダルトン、G+C含量58%。

不安定で扱いにくいが、ソルビトールをくわえ、−90℃に凍結保存すれば、感染性を維持することが可能である。

種特異性が強く、 ともにヒトを唯一の宿主とし、感染性ウイルスは細胞内にとどまる。

 

感染

初感染はウイルスの垂直伝播(経胎盤、経産道、経母乳)および水平伝播(唾液、尿、輸血、臓器移植)によっておこり、おもに不顕性感染である。

 

症例

1.先天的巨細胞封入体症

症状:患児は低出生体重であり、黄疸を伴う肝肥大、脾腫出血斑、貧血などみとめられるほか、とくに中枢神経が侵されており、小頭症、脳内石灰化像、網膜炎などがみとめられ、知能発育障害をのこす。

 

先天性サイトメガロウイルス感染症 (congenital cytomegalovirus infection) 全身像 小頭症、肝脾腫がみられる。 他に精神運動発達遅滞、けいれん、黄疸、溶血性貧血、血小板減少などがみられる。

顔貌

著明な小頭症がみられる。

.頭部単純CT

著明な脳室拡大と脳室壁および一部脳実質の石灰化がみられる。

左:頭部単純X線写真、右:頭部エコー

頭部単純X線写真で脳内に石灰化陰影がみられる。頭部エコーでは脳室の拡大と脳室壁のエコー強度の増加を認める。

 

.

(サイトメガロウイルス肺炎)

胸部X線写真、上:治療前、下:治療後

肺野にびまん性の陰影を認める。Ganciclovir による治療により著明な改善がみられた。

眼底:網脈絡膜炎

境界鮮明な瘢痕性病巣がみられる。

他の眼合併症として、白内障、視神経炎、小眼球症などがある。

 

後天的には自然感染、あるいは新鮮血の輸血により外因感染が生じ、サイトメガロウイルス単核症をおこすことがある。いわゆる輸血後症候群である。また、臓器移植を受けた患者の約90%にサイトメガロウイルス感染が証明されるが、それは提供者に由来する外因感染の場合もあるが、多くは潜伏ウイルスの活性化による内因感染である。

 

写真資料 http://www.med.nagoya-u.ac.jp:8888/super/data/TEXT/INFECTI3.HTM

 

感染:先天的には、未感染の妊婦が初感染した場合にウイルス血症がおこり、胎児は経胎盤的に感染して、先天的巨細胞封入体症をきたすことがある。

 

治療:ガンシクロビルと、ホスカルネットが免疫不全患者の感染者にしようされる。

サイトメガロウイルス網膜炎には、ガンシクロビル5mg/kgを一日2,3回、2,3週にわたって静注し、ついで同量を11回維持量として静注する。

サイトメガロウイルス性肺臓炎、胃腸炎に有効なのはホスカルネットで、40から60g/kg8時間ごとに2週間静注し、ついで同量を11回、維持量として静注する。

 

EBウイルス(Epstein-Barr virus

構造

形態学的には他のヘルペスウイルスとは識別できないが、抗原性や生物活性の差違に 基づいて同定しうる。

DNAは分子量116×ダルトン,G C 含有量58%である。

 

増殖および感染性

EBウイルスはヒトおよびマーモセット(Marmoset 南アメリカ大陸の熱帯にのみ生息する小さなサルの仲間)の白血球(B cell)を標的細胞として感染する。感染した場合、ウイルスの完全増殖は示さないで白血球をトランスフォームする(増殖能を与える)。中には、トランスフォームしないウイルスもある。それぞれ前者をtransforming EV virus、後者をnontransforming EV virus と呼ぶ。

ウイルスは潜伏状態になり、大部分の細胞ではウイルス遺伝子のごく一部しか発見されない。ただしまれに、ウイルスの全遺伝子を発現し、感染性のウイルスを作り出す細胞もある。

 

症例

EVウイルスは、口腔粘膜から侵入し、粘膜上皮、特に口腔、咽頭、耳下腺で増殖する。

これらの上皮細胞を壊死にいたらせるため咽頭炎などの炎症を引き起こす。

また、肝臓、骨髄、脾臓、脳にリンパ球浸潤をきたす。

 

<主な病名とその症状と治療法>

1.伝染性単核球症(infectious mononucleosis

世界中に見られる。感染は発展途上国の小児に多く、それらの国では無症状か軽症が多 い。臨床的伝染単核球症は、若年成人になってからの感染が先進国に見られる。それらの国々では、キス感染すると考えられるので、キス病ともいわれる。感染者の約半数は無症候感染である。

 

病名:伝染性単核球症、腺熱、単核球性口内炎、単核球性扁桃腺炎

 

症状:8090%以上の患者に発熱、咽頭痛、咽頭・扁桃腫脹、リンパ節腫脹の症状と徴候が見られる。50%以上に達する単核球症(リンパ球症)が見られ、異型リンパ球も10%以上に見られる。また、95%以上に肝機能異常が認められ、半数に脾腫を認める。合併症として、自己免疫性溶血性貧血、脾臓破裂、中枢神経系症状、無菌性髄膜炎、心外膜炎、血小板減少症などがある。発疹は1〜5%の患者に見られる。

通常、1〜数週間のうちに回復するが、中には数ヶ月にわたり軽度の不定の症状が続くこともある。年齢が上がるほど重傷となる。小児では症状が軽く気づかれないことが多い。死亡はまれ。

 

感染:唾液を介する直接感染である。小児では、直接感染の他、唾液の付着したおもちゃや介護者の手指などを介する間接感染もある。輸血によっても感染する。感染期間は、1年以上にわたり、咽頭からウイルスを分泌する。健常者でEBウイルス抗体陽性者の約2割は長期保菌者と考えられる。潜伏期は、4〜6週間である。

 

治療:特異的治療法はない。重傷例では抗炎症剤が有効という。ペニシリンは伝染性単核球症に禁忌とされている。

予防:一般的な個人衛生管理以外、特にない。

伝染性単核球症 扁桃は腫大し、口蓋垂は浮腫状となる。扁桃には厚い白色の滲出物が付着している。

 

 

2.バーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma

バーキットリンパ腫は、赤道アフリカに見られる顎下リンパ節を主に冒す単クローン性のリンパ腫である。第814染色体転座や第2,22染色体転座が起こっている。EBウイルス初感染の2〜12年(多くは6年)後に発症する。

 

症状:下顎部に最も多く、次いで腹部に見られる。増殖は極めて早いが、抗がん剤の感受性も高い。5年生存は約半数。

 

感染:ヒトからヒトへまたは蚊などを介してリンパ腫が移ることはない。引き金となるEBウイルスには幼児期にすでに不顕感染している。アフリカのバーキットリンパ腫発症のピークは8〜9歳で、潜伏期は数年である。患者から病原性の強いEBウイルスは分離されないので、特に感染期間といえるものはない。

 

予防:伝播性の疾患ではないので、感染症としての予防対策は立てられていない。

バーキットリンパ腫 著明な上顎リンパ腫が見える

3.上咽頭癌(nasopharyngeal carcinoma

2040歳に多くみられる鼻咽頭粘膜上皮由来の癌である。中国南部と台湾に患者は集積し、一般に比して約10倍の発生頻度となっている。EBVCA lgA が血中と上咽頭粘膜分泌液に存在するのが特徴で、検診に用いられている。EBウイルス由来のワクチンが予防目的に試みられている。腫瘍は科学療法に反応する。

 

 

参考

単純ヘルペスウイルス

「戸田新細菌学」

Medical Microbiology 」(Jawetz, MelnickAdelberg nineteenth edition

「エッセンシャル微生物学 4版」医歯薬出版株式会社

「病原ウィルス学」KINPODO

「感染症学」 医学書院

http://www.lapjp.org/lap1/nlback/nl09/nl09std.html

http://www.iwate.med.or.jp/kenkouzousin/12/herpes.html

 

水痘‐帯状疱疹ウィルス

「戸田新細菌学」

「水痘-帯状疱疹」(1987、日本アクセルシュプリンガー出版、高橋理明・新村眞人)

「新細菌学入門」(1991、南山堂、牛場大蔵、斎藤和人)

http://www2.mwnet.or.jp/^icchy/myhomepage/cont06.htm

 

サイトメガロウイルス

「戸田新細菌学」

 

EBウイルス

「戸田新細菌学」

MOLECULAR BIOLOGY OF THE GENE 4版」

「臨床ウイルス学 講義篇」講談社

「感染症学」診断と治療社

「伝染病予防必携 4 」財団法人 日本公衆衛生協会