サイトカイン(粘膜免疫に関する)について
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.サイトカインとは?免疫系や造血系の細胞は、その恒常性を維持する上で、また必要に応じた分化や増殖に際して、各種の情報を細胞間で伝達交換している。このような作用をになう、免疫担当細胞やその周辺細胞から産生される分子量、20,000前後の液性因子タンパク(単純タンパクまたは糖タンパク)をサイトカインと称する。
サイトカインはホルモンとは異なり、一般にはごく近傍の細胞間で受け渡され、循環によって遠くの受容細胞に作用する事は少ない。ある細胞が産生するサイトカインがその産生細胞自身に作用する場合オートクリン的作用と呼び、隣接する細胞へ作用する場合をパラクリン的作用と称する事もある。
その作用はかく細胞に対する特異的レセプターを有する細胞に発揮されるが、レセプターを発言する細胞が多岐にわたる場合は、その作用もまた多様なものとなる。
現在知られている主要なサイトカインには、リンパ系細胞の増殖の機能分化に働くインターロイキン(IL-1〜IL15)、ウィルス感染で産生され干渉に働く事から名ずけられたインターフェロン(IFN-α,β,γ)、LPS刺激や炎症反応早期に産生されるIL-1、IL-6、TNFなどの炎症性サイトカインなどがある。
2.サイトカイン受容体
サイトカインが各種細胞に対してさまざまな作用を及ぼすのは、対応するレセプターが細胞表面に発現しており、シグナル伝達を行うからである。サイトカインレセプターはその構造や機能の類似性からいくつかのファミリーに分類される。
:クラス1レセプターファミリー:
多くのインターロイキン受容体が属し、単量体ないしは三量体で、細胞外領域に遺伝子の相同性が高い部分が見られる。対応するサイトカインが結合すると、種々のチロシンキナーゼが活性化されて細胞内タンパクのチロシン残基がリン酸化され、細胞内シグナル伝達が起こる。
:クラス2レセプターファミリー:
IFL-
α/βR、IFL-γR、IL-10R、が含まれ、いずれも分子量約100,000の細胞膜糖タンパクである。:
TNLレセプターファミリー:細胞外領域にシステインを多く含んだ特徴を示す。
各サイトカインはそれぞれ異なった遺伝子にコードされ、異なったアミノ酸配列を示すタンパクであるが、それぞれのレセプターの構造には類似点が多く見られ、一部のサブユニットを共有するものも多い。
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.粘膜免疫に関係するサイトカイン
(粘膜免疫に関するサイトカインの種類と性状) |
|||
サイトカイン |
分子量(kDa) |
主な産生細胞 |
主な生物学的作用 |
IL-2 |
15 |
活性化T細胞 |
T細胞増殖、機能活性化 |
IL-4 |
15 |
TH2型細胞 |
B細胞増殖、免疫グロブリンクラス変換 |
IL-5 |
50 |
活性化T細胞 |
B細胞増殖、好酸球増殖 |
IL-6 |
21-28 |
T、B細胞、マクロファージ |
B細胞分化、造血肝細胞増殖 |
IL-9 |
40 |
T細胞 |
T細胞増殖、赤芽球増殖 |
IL-10 |
40 |
TH2型細胞 |
TH1細胞、マクロファージからの |
サイトカイン産生抑制 |
|||
IL-12 |
75 |
マクロファージ、B細胞 |
INF-γ産生誘導、NK活性化、TH1機能活性 |
IL-13 |
17 |
T細胞 |
IL-4類似の機能 |
INF-α/β |
20 |
繊維芽細胞、マクロファージ |
抗ウィルス反応、抗腫瘍効果 |
INF-γ |
20 |
αβ型T細胞、NK細胞 |
マクロファージ活性、抗ウィルス反応 |
γδ型T細胞 |
:
IL-2:1976
年に刺激したヒト末梢血液培養上清中に見出されたT細胞増殖因子で、分子量約15,000の糖タンパクである。主として抗原やレクチンで活性化されたT細胞から産生される基本的には活性化T細胞の長期培養を可能にする増殖因子であるが、B細胞、NK細胞、マクロファージなどに対する分化増殖因子活性も示す。また細胞傷害性T細胞、NK細胞によるキラー活性を増強する。:
IL-4:B
細胞増殖因子やB細胞刺激因子とよばれて、休止期のB細胞に作用して増殖を促す因子として同定された。活性化T細胞のうち、特に抗体産生応答に働くTH2型細胞や肥満細胞から産生される。試験管内では、B細胞に増殖誘導やMHCクラスTの発現、IgE産生誘導作用を示すほか、T細胞、単球、マクロファージ、造血系細胞にも作用するが、IL-4遺伝子欠損マウスでは血清IgEとIgG1の著名な低下が見られたことから、生体内における主要な作用が免疫グロブリンのクラススイッチにあると考えられている。TH2細胞はオートクリン的にIL-4を産生して分化する一方、産生されたIL-4がTH-1の分化や機能発現を抑制することも知られている。もどる