粘膜免疫の機構と機能(免疫学と消化管を中心とする)

@ 胸腺と骨髄と消化管を中心とした免疫機構

Tcellが胸腺で分化し、自他の識別能力を教育され、末梢リンパ組織に送られる。そのほかBcell、抗原提示細胞等が中心である。しかし胸腺を欠くヌードマウスにもTcellが存在することからTcellは胸腺以外でも分化し、その場所として消化管が注目されるに至った。

A 粘膜免疫

消化管中心の粘膜関連のリンパ組織が、従来の胸腺や骨髄と異なった免疫中枢機構として働いていることが確定した。粘膜の表面は胃腸、泌尿生殖器、呼吸性の器官に顕著である。粘膜の免疫システムは、粘膜の表面に影響を与える病原菌に対する免疫を供給する傾向にある、分子、細胞、組織化されたリンパ様構造より成り立っている。細胞内の病原菌による粘膜の感染は、細胞免疫の誘導という結果に終わる。この反応は、分泌性免疫グロブリンA抗体の合成により正常に行われる。これは、インフルエンザのような粘膜を伝わる病原菌によるより深い組織の浸潤に対する防御の最初の大事な防御線を供給する。病原菌に対する粘膜の防御は、粘膜上皮や、生得的免疫メカニズムといった生得的バリアと適応した宿主の免疫の両方からなる。出現した病原菌の大部分は粘膜に伝達し、宿主に感染するために粘膜のバリアを通らなければならない。粘膜の病原菌に対する最高の防御は、全身と粘膜の免疫両方に導入できる有能な粘膜ワクチンであるだろう。

<粘膜免疫の概要>

1) T cellの分化 

2) 消化管で抗原と接触し、B celllgAを産出し、全身に分布するいわゆる分泌型免疫系である。(経口免疫透導のlgA産出と調整について研究されている)

3) これらに関するインターロイキンを含む内部環境が消化管にも用意されていると考えられている。

4)消化管上皮の間隙にはリンパ球様細胞が入り込んでいる(消化管上皮リンパ球)。この機能としてTcellレセプター(TCR)を有し、消化管独自のTCRとされている。

5)粘膜免疫系の特異な調節機能

a)経口的摂取の抗原に対し、強い全身的免疫反応が起こらないのは抗原が消化されるのではなく、蛋白質は大きなペプチドの段階で吸収され、Tcell依存症の反応や抑制を引き起こしていることによるらしい(粘膜免疫そのものの働きによると考えられる)

b)消化管上に特異なM細胞が存在し、大きな抗原分子を粘膜下のリンパ装置に送り込み、消化管に入る抗原に対し粘膜免疫系は絶えず反応している。

c)商品成分などに対する抗体は血清中にほとんど表れない。[経口的に取り組まれた抗原に対し強力な免疫抑制が働いている]これが[経口免疫寛容現象]である。

 

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