DNAワクチン

 

DNAワクチンはウイルス遺伝子のDNAの断片を筋肉注射などで体内に抗原として投与し、体内で抗体を作らせて免疫機能を高め病原ウイルスに対する抵抗力を高めるワクチンで、次世代ワクチンとして注目を集めています。感染性がなく真核細胞内で複製しないので弱毒化ウイルスを用いた生ワクチンに比べ安全性が高いと考えられています。

DNAワクチンは遺伝子の複製技術を使えば培養タンクで簡単に生産が可能です。米国ではマラリアDNAワクチンの健康な成人に対する安全性と有効性が確認されました。他にもインフルエンザやB型肝炎、癌などで精力的に研究されています。

 

日本では、浜松医大微生物学教室の小出幸夫教授らによって、研究が進められています。研究グル−プがDNAをワクチンに使うことに着目したのは、体内に侵入した細菌やウイルスを攻撃する免疫は、病原菌によってタイプや働きが異なるが、遺伝子組換で必要なタイプの免疫を思うままに選択することができるためです。

研究グル−プが動物実験で用いたのは、リステリア菌という細菌で、人間の細胞に次々に入り込んで悪さをするものです。感染防止の”ストッパ−役”はリステリア遺伝子の一部で、「リステリアリジンO」という蛋白質を分泌します。

この「リステリアリジンO」のDNAをいったん”運び屋(ベクタ−)”の役割を果たす遺伝子のプラスミドに組み込んだ上でネズミの細胞に埋め込みます。これによりネズミに、分泌タンパクに対する免疫機構が作られワクチンの働きをします。

免疫のタイプは「リステリアリジンO」のDNAのうち、どの部分を使うかにより決まります。例えば、細胞内に侵入した細菌を直接攻撃する場合は「キラ−T細胞」、一方、細胞に入り込まない細菌や毒素を攻撃する場合は、抗体を作るよう命令する、いわば”指令塔”役の「ヘルパ−T細胞」をそれぞれ生み出し感染を予防します。

DNAワクチンは、安全性が高いとされるほか、低コストで、遺伝子が安定しているため、冷凍庫などの保存施設のない発展途上国での接種、普及が期待されるなど次世代のワクチンとしての可能性を秘めているのです。

 

 

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