マラリア原虫の生活環

マラリア原虫の生活観はよく知られてはいるが、複雑である。蚊に刺されてスポロゾイトSporozoitesが血中に入り肝細胞に進入していく。肝細胞の中で寄生虫は繁殖し、各マラリア原虫種に変化した後、感染肝細胞はメロゾイトMerozoitesを放出する。このメロゾイトは赤血球に進入し、無性生殖によって増殖し、生殖母体となって次の蚊へと取り込まれる。赤血球内での無性生殖の際に、メロゾイトはまず、トロフォゾイトTrophozoitesとなり、マラリアの4型の各々がある程度明確になる。したがって、末梢血の厚層塗抹標本に適切な染色を施すと、マラリアの各型が識別できる。無性生殖が完成すると、トロフォゾイトから新たなメロゾイトが生み出されて、赤血球の破裂とともに放出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血中に放出されたメロザイトが赤血球に進入する際に、赤血球膜には原虫タンパクが挿入され、抗原変異と抗原多型性を示す。この抗原が宿主の免疫機構による標的となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蚊体内における発育環はいずれの種も基本的には同様である。蚊の中腸内において、雄性体は形態を変化させ、雌性体へ侵入し、受精、すなわち有性生殖を行う。これによって接合体Zygoteが形成される。これは次に運動性のオオキネートOokineteとなり無性生殖によって無数の胞子小体Sporoziteを作る。この胞子小体は蚊の唾液腺に集まり、次の吸血の際人に経皮的に注入されて、感染がおきる。

 

段階

場所

段階名

初期の成長型

段階終了時の侵入型

増加率

有性生殖期

蚊の胃壁

配偶子生殖

---

オオキネート

1倍

無性生殖期()

蚊の中腸外壁

伝播生殖

スポロシスト

スポロゾイト

10.000

無性生殖期()

ヒトの肝細胞

肝臓増員生殖

肝臓栄養体

メロゾイト

10.000~30.000

無性生殖期()

ヒトの赤血球

赤血球増員生殖

赤血球栄養体

メロゾイト

8~32

 

赤外型に関する最近の研究によりマラリア原虫の生活史は大きく書き改められつつある。それはマラリア再発に大きな役割を持つとされる休眠型(ヒプノゾイトHypnozoite)の発見による。この休眠型はマラリアの種類により持っているものと持っていないものがある。スポロゾイトから移行した休眠型は単核の状態で数ヶ月も肝細胞内に存続し、やがて発育分裂して放出されたメロゾイトが血流の赤血球へ侵入して赤内型となり、臨床的な再発relapseをひきおこすとされる。

 

《参考》マラリア原虫が赤血球に進入していく様子