脳性マラリア

脳性マラリアの主な病理学的所見は,感染赤血球による,脳毛細血管の閉塞および閉塞血管の周辺に起こる出血である.この毛細血管閉塞は感染赤血球の表面にknobと呼ばれるマラリア抗原を含む突起が形成され,血管内皮細胞表面のレセプターと接着するためである(写真参照)。この細胞間の接着の分子構造は最近解明されつつあり,将来,脳性マラリアの治療や予防のためのワクチン開発に寄与するものと思われる.また,感染赤血球による毛細血管閉塞は脳のみならず他の臓器にも観測され胃腸器官,肺臓,眼底等に出血をもたらす。皮下組織の毛細血管閉塞状態は皮下毛細血管の閉塞状態と類似するため,皮下組織のbiopsyにより脳毛細血管の閉塞状態や脳性マラリアの重症度を推定できる。

 

 

マラリアに感染した赤血球によって詰まった血管

 

 

 

 

 

マラリアに寄生された赤血球。表面に多くの突起(knob)が見られる。

 

 

 

 

マラリアに寄生された赤血球の膜の写真。

表面のknobが明瞭に見える。