パラミクソウイルス科に属するウイルスの中で、ヒトに病原性を示すものには、パラインフルエンザウイルス(14型)、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスがある。これらのウイルスは表1の性状を共有している。しかし一方で、赤血球凝集能とノイラミニダーゼ活性の在否に違いが認められるので、本科のウイルスはさらに、パラミクソウイルス(赤血球凝集能+、ノイラミニダーゼ+)、モルビリウイルス(赤血球凝集能+、ノイラミニダーゼ−)、ニューモウイルス(赤血球凝集能−、ノイラミニダーゼ−)の三つの属に分けるのが慣例であった。ところが近年になって、各ウイルスの遺伝子の発現様式や塩基配列に関する情報が蓄積された結果、表2に示す新しい分類が提唱されている。従来パラミクソウイルス属に一括されていたウイルスが2つ(新分類のパラミクソウイルス属とルブラウイルス属)にグループ分けできること、ならびにニューモウイルス属が他の2属とは遺伝子の構造が大きく異なることの2点が重視された分類といえる。

 

 

 

1.パラミクソウイルス科の性状

エンベロープで囲まれた直径150250nmの球状粒子.

表面には2種類のスパイクが存在する.

ヌクレオカプシドはらせん対称で直径は18nm(ただし、ニューモウイルス亜科は14nm).

遺伝子は二本鎖のマイナス鎖RNAで非分節性.

ウイルス粒子がRNAポリメラーゼを内蔵する.

細胞融合能を持つ.

細胞質に好酸性封入体を形成する(ただし、モルビリウイルス属は核内封入体も).

 

表2.パラミクソウイルス科の分類