感染免疫1(パート2の第二回目のテーマ)

細胞生物学(パート1)に続いて、感染免疫1では感染症に焦点を合わせたテーマとする。G.I.O .人類が地球上に生まれてからこれまでさまざまに外界からの攻撃を受けてきた。あるものは人に感染し、病気を起こし、死をもたらし、あるものは共存共生してきた。現在もそれは続いている。パート1(血清免疫学)では、免疫学を中心とした生体防御機構について学習し、パート2(微生物学)では、病原体の種類・病原因子・毒素を中心に学習し、host-Parasite relationship (宿主・寄生体相互関係)のなかでの感染と免疫の基礎的概念を、特異的、非特異的生体防御機構を中心に理解することを目標とする。

この目標を達成するためのグループ学習のテーマを以下に述べる。

原則として、1)グループ分けは、事前に学生諸君全員と協議して決定するものとする。2)テーマについては学生の希望があればテーマとして取り入れることもある。現在提案されているものを以下に記載する。

テーマ2 

1. 腸内常在菌叢の役割

配付される図表を見ること。サルモネラ食中毒菌の感染実験である。食中毒菌を正常のマウスに経口投与した群、皮下注射した群、および長期に抗生物質(ストレプトマイシン)投与したマウス群の3群について、投与菌数と感染死亡数をグラフにしたものである。

学習項目ヒント(LIs):

1)この図から腸内常在菌叢の役割について調べよう。

2)皮膚などのflora の役割についても調べよう。

3)院内感染が起こりやすい理由についても調べよう。

4)参考文献・関連サイトの紹介

  Normal Flora のすべて(図表)がよく記載されている。

        http://gsbs.utmb.edu/microbook/ch006.htm

  5)次に掲げた質問に答えてみよう

http://www.medmicro.mds.qmw.ac.uk/underground/bactsick/bactsick.html

 Not all bacteria cause disease

 The Normal Flora

 The Normal Flora: Gut

 The Normal Flora: Mouth, nose and throat

 The Normal Flora: Genital Tract

 The Normal Flora: Skin

 How do we know that a bacterium is a pathogen?

  6)無菌動物で見られるトランスロケーションtranslocation

     消化器外科などで問題となる。Google bacterial translocation

 

2. 院内感染、日和見感染について

DPB diffuse panbronchiolitis という呼吸器の病気がある。若いときから副鼻腔炎などの慢性炎症を繰り返し、次第に気管支炎、気管支肺炎、肺炎を繰り返し、肺胞壁が壊れ、肺気腫状となる。多くの人は50代ごろから症状がさらに顕著となり、息切れ、呼吸困難のため入院加療が必要となる。軽快と増悪を繰り返し、そのつど発熱、喀痰増加を繰り返し、肺機能が低下のため酸素療法が始められ、感染を繰り返しているうちに呼吸不全がさらに進行して、発症後10数年から20年位で死亡する。日本におけるこの病気に似たものとしては欧米人の中に Cystic Fibrosis (CF) という頻度の高い遺伝子病がある。今回は、 DPB CF という病気を勉強するのではなく、次に述べるウサギの実験をもとに学習目標(SBO)を決めてください。

ウサギの実験(図表を配付する):正常なウサギに107個の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa )を後ろ足の臀部筋肉内に注射したところ、膿瘍を形成し、大きくなったり小さくなったりするがそのまま慢性化していた。同じように処置したウサギに、緑膿菌注射から治療の目的で3時間ごとに抗菌剤(個の緑膿菌に有効なゲンタマイシン)を必要量注射して経過を見た。臀部の菌数は時間とともに減少しついには治癒した。一方、抗がん剤投与(骨髄機能を障害する)によって、体の感染防御細胞をほとんどなくしてしまったウサギに、同様の処置をしたら、どんどん血液中の菌数が増加し、図に見るように12時間以内にすべてのウサギが死亡した。抗がん剤投与したウサギの群で、緑膿菌を注射してから3時間ごとに抗菌剤GM注射したところ、始めは急速に菌数が減少したが、しばらくすると菌数が増え始め、結局48時間以内に全ウサギが死亡した。

この実験は、骨髄機能が落ちた個体では、感染防御をする細胞が減少するかまったく亡くなった状態になっていて、この状態では体に入ってきた細菌を防御できない。正常であれば、抗菌剤投与で殺菌できるけれども、防御細胞が存在しないと抗菌剤投与のみによっては感染防御が不十分で、結局敗血症sepsisで死んでしまう。

学習項目ヒント(LIs):

1DPB, CF について簡単にどのような病気か学習しましょう。

Google : びまん性汎細気管支炎

Google   CF or cystic fibrosis

2)菌交代現象、superinfection とは何か

3)抗菌剤の使用方法

4)耐性菌の出現について

5)なぜ感染防御機能が低下していると、抗菌剤投与によっても治癒しにくいのか?また日和見感染を起こしやすくなるのか

6)易感染性宿主とは

 

3.  ワクチンについて

アメリカでは、訴訟の関係もあって、高齢者が入院してくると肺炎連鎖球菌に対するワクチンが義務づけられている。またインフルエンザ流行期になる前にはワクチンの接種が義務づけられている。感染症がいまだに流行している地域に海外渡航するヒトは、目的地に応じたワクチンの接種が推奨されている。

日本では、母子手帳に記載されているスケジュールに応じてワクチン接種が義務づけられていたり、推奨されていたりする。この際ワクチンについてのすべてを学習しておこう。

学習項目ヒント(LIs):

1)ワクチンとは何か、どのような種類があるか

2)ワクチンの効果・意義について

  インフルエンザウイルス感染に対するワクチンの効果〔メディカルトリビューン参照〕

3 DNA ワクチンとは何か、その作用は

  http://dnavaccine.com/

     4)  マラリアに対するワクチン

     5)   B型肝炎ウイルスのワクチン

     6)  HIV に対するワクチン

 

 

4. 抗菌剤(抗細菌、抗真菌、抗ウイルス)の作用と耐性化の機序

黄色ブドウ球菌を培養していてたまたま紛れ込んだ青かびの一種から分泌される抗生物質によって黄色ブドウ球菌が溶菌したのを観察したフレミングが、ペニシリンを見つけた話しはあまりにも有名である。この発見に刺激されて抗生物質を産生する真菌や細菌探しが始まる。ペニシリンが使用されはじめて二年もしないうちに耐性菌の報告がなされるようになった。

1)抗菌剤(抗細菌)の種類

2)抗菌剤の作用機序について

3)なぜ耐性菌ができるのか、耐性化のメカニズム

4)抗菌剤〔抗真菌〕

5)抗菌剤〔抗ウイルス剤〕

6MRSA および、VREとはなにか

追記:緑膿菌で新しく発見された薬剤能動排出ポンプ (MexX-MexY-OprM)

緑膿菌は、従来より各種の抗菌薬に耐性を示す傾向があり、医療施設内で発生する感染症の原因となるグラム陰性桿菌の筆頭に上げられる細菌である。

薬剤耐性には様々な耐性機構が関与しているが、構造や系統が異なる複数の薬剤に同時に耐性を獲得する主な機構として、細菌の細胞膜と外膜に存在する「薬剤能動排出ポンプ」の数的増加や機能亢進が知られている(1)

 

緑膿菌の薬剤排出ポンプの種類としては、これまでに「MexA-MexB-OprM」、「MexC-MexD-OprJ」、「MexE-MexF-OprN」の3種類が報告され、解析が進められてきたが、最近、アミノグリコシド、テトラサイクリン、エリスロマイシンなどの排出に関与すると考えられる第4の排出ポンプ「MexX-MexY-OprM」が

発見され報告されている(2)

カルベニシリン、セフタジジム、ラタモキセフ、アズトレオナムなどのβ-ラクタム薬耐性においては、MexX-MexY-OprMポンプは、 MexA-MexB-OprMポンプの補助的な役割を果たしていると考えられるが、アミノグリコシドなどの特定の抗生物質の排出に関しては、 MexX-MexY-OprMポンプが主要な役割を果たしており、しかも、ゲンタマイシンなどが存在することにより、細菌の膜のMexX-MexY-OprMポンプの分子数が増加するなど、緑膿菌は、菌の周辺に存在する抗菌薬の種類に応じて、その排出に適した種類の排出ポンプの発現を増加させつつ生存していることが示唆された(3)

 

 参考文献

1. H. Nikaido, Science 264(5157):382-388, 1994

2. N. Masuda, et al., Antimicrob. Agents Chemother. 44:2242-2246, 2000

3. N. Masuda, et al., Antimicrob. Agents Chemother. 44:3322-3327, 2000

 

5. 多剤耐性結核菌とHuman Immunodeficiency Virus

TBは世界最大の死亡者を出す感染症で、状況はどんどん悪くなっている、 HIV の流行と多剤耐性の結核の出現によって。存在するワクチンBCGはいくつかの野外実験によって無効性が証明された。最先端のワクチンの開発が研究されている。次世代のワクチン開発の前に何故BCGが無効であったのかを理解しておく必要がある。

1)多剤耐性結核菌とは

2 HIV とは何か、

3)結核の治療

4 エイズ の治療

5BCG とツベルクリン反応

6)エイズのワクチンについて

 

6. ウイルスの臓器親和性について

ウイルスが細菌と大きく異なる点の一つに臓器親和性がある。ポリオウイルスは消化管上皮粘膜で増殖した後、脊髄前角運動細胞に感染し、運動マヒをきたす。 A 型肝炎ウイルスも消化管粘膜上皮細胞で増殖した後、肝細胞に感染し肝炎を引き起こす。このようにウイルスは進入部位で一旦増殖した後、最終の感染部位にたどり着きそこで増殖する。サイトメガロウイルスはほとんどの細胞に感染する。ウイルスの臓器親和性について学習しよう。

1)ウイルスの種類による臓器親和性の違いについて

2)節足動物を媒介して人に感染するウイルスについて

3)ウイルス血症とは何か

  4)ウイルスが細胞に付着し、進入し、脱核、細胞内移動し、増殖、出芽     

   の過程について

5)ヘルペスウイルスの潜伏感染、回帰感染、持続感染について

  6)感染してから数年とか数十年して発症するウイルスについて

 

7. 細胞内寄生性細菌の種類と特徴

戸田新細菌学または医科細菌学に記載されている細菌について以下の点を学習しよう。

1)細胞内寄生性細菌の定義と種類と特徴

2)生体の防御機構をエスケープする機構について

3)細胞性免疫と感染防御機構について

4)スーパーオキシドや酸化窒素などの誘導と殺菌活性

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6

 

8. 佐賀県はC型肝炎感染者が多く、肝ガン死亡率も高い

日本では一九五一年に民間の血液銀行が設立され、売血制度がスタートした。その後まもなく、輸血に伴う肝障害が知られるようになり、六〇年前後には輸血後肝炎として関係学会などでその急増が問題視された。C型肝炎は高率で持続感染者(キャリア)となる。国内のC型肝炎患者は二百万人以上といわれている。二〇〇〜四〇〇ミリリットルの輸血を受けて輸血後肝炎となり、現在肝硬変や肝がんで苦しんでいる多くの患者が存在する。キャリアになった人では、初めの数年間は健康診断でお馴染みのGPT(肝細胞の破壊の程度を示す指数)が大きく増減する。この急性期の後はGPTが低い値、あるいは正常値を示す安定期となる。これはHCVの表面タンパクが変異して、リンパ球からの攻撃をかわした状態を意味する。この安定期は数年から数十年間持続する。そして多くの人が、中年になると安定期から再活動期に移行する。GPTは高値となり肝障害が進行する。慢性肝炎から肝硬変、さらには肝がんへと移行する。肝硬変になった人は肝不全、あるいは肝がんになって死亡する確率が高い。

学習項目ヒント(Lis):

1.          肝炎ウイルスについて学習しよう

2.          Mrs. Elaine’s Hepatitis C Resource Page 

  Mrs. ElaineC型肝炎情報のホームページ(日本語版)

     http://ns.lancenet.or.jp/heppers/ 

3.. C型肝炎ウイルスの感染経路、発病、慢性肝炎、肝硬変、肝ガン

  4. 治療と予防

  5. インターフェロンについて

  6. 血液製剤の持つ社会的問題( HIV 、B型肝炎を含む)

 

 

9. グラム陰性菌とグラム陽性菌の違いについて

 

1)グラム陽性とグラム陰性細菌の構造、染色性の違いについて

2)細胞壁の構造について

3)ペプチドグリカンについて構造と生合成、生理活性について

4LPS について構造と生合成、生理活性について

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10. 細菌の示す病原因子 Bacterial Pathogenesis について

 

1)細菌の病原因子についてリストアップしよう

2)細菌の産生する菌体外毒素について種類と作用機序

3)細菌のきょう膜の示す感染防御機構について

4)細菌のもっているせん毛について

5)細菌の鞭毛について

6

テキスト microbook

      http://gsbs.utmb.edu/microbook/ch007.htm

    adhesion and colonization

      http://www.bact.wisc.edu/microtextbook/disease/colinize.html