結核菌について

形態

〈光学顕微鏡による所見〉

長さ1〜4μm、幅0.2〜0.5μmの細長い杆菌であり、まっすぐ、また

はわずかに湾曲している。

グラム陽性、抗酸性であり、運動性はない。

鞭毛、莢膜、芽胞はない。

〈電子顕微鏡による所見〉

多層の厚い細胞壁と、その内側の細胞膜に包まれ、細胞の内部には層状のメ

ソソ−ムが存在する。

菌体内には電子透過度の低い大型顆粒(ポリフォスフェイト)を主体とする

異染顆粒、小型顆粒および空胞様顆粒が存在する。

細胞壁には特殊な二重の線維構造(paired fibrous structure)がみられる。

培養

結核菌は血清・卵・バレイショなどを培地成分に加えないと発育しないし、

その発育速度は遅く、37℃で集落形成までに4週間ぐらいかかる。炭素

源としてはグリセリンを最もよく利用し、窒素源としてはアスパラギンがよ

く使われる。至適pHはやや酸性で6.8ぐらいであるが、pH6.0〜

7.6でも発育可能である。

〈固形培地〉

結核菌の分離培養、純粋培養、薬剤耐性検査などに用いられる。灰白色ない

し淡黄白色、乾燥性の小集落をつくり、培養が進むと漸次増大して、通常乾

燥性R型の菌苔となる。よく用いられるものとしては、小川培地がある。

〈液体培地〉

結核菌の大量培養、増菌培養、ツベルクリンの製造などの目的で用いられる。

〈定量培養法〉

動物への接種生菌数、臓器内の生菌数、BCGワクチンの生菌数などの算定

に必要な培養法である。

抵抗性

結核菌は無芽胞菌としては抵抗性の最も強い細菌である。これは結核菌の菌

体組成の特質、疎水性や集塊発育性によるものと考えられる。直射日光で死

滅させるのに2時間もかかり、喀痰中の結核菌では、20〜30時間もか

かる。日陰に置かれた喀痰中では数週間は生存し、乾いた喀痰中では6〜8

か月は生きている。消毒薬に対しては5%フェノール溶液、5%クレゾール

液中ではいずれも24時間を要する。加熱では60℃で20〜30分間、

75℃で5分間かかるが 、牛乳中の結核菌の殺菌は60℃で1時間、65

℃で15分間、70℃で10分間と多少長くかかる。喀痰中のものを殺菌す

るには、煮沸で5分間以上が必要である。

染色性

結核菌には脂質に富む厚い細胞壁があるので、色素の通過が妨げられ染色さ

れにくい。したがってその染色には媒染剤を加え、加温するなど強力な手技

を必要とする。だが、いったん染色されると、酸、アルコール、煮沸などの

強い脱色作用にもかなり耐える。この抗脱色性は細胞壁脂質、特にミコール

酸と色素(塩基性フクシン)とが結合するためと考えられる。また細胞壁が

何らかの損傷を受けてその完全性を失うと抗酸性もなくなるという実験的

知見から、菌体膜の透過性が抗酸性を支配するという考えもある。