インフルエンザの治療について
今までインフルエンザに対する特別な治療方法はなく、症状に合わせて、解熱剤や鼻水を抑える薬、鎮咳剤などを使ったりしました。急性期には経口摂取が困難であり、症状改善のため輸液が必要となる場合もあります。脱水症状の予防や、気道粘膜の乾燥を保護するため水分の補給をする必要もあります。また、弱くなった粘膜に細菌が感染するのを予防するために抗生物質を投与したりしていました。しかしこれはあくまでも症状を抑えたり、重篤な合併症を防ぐためのものであり、インフルエンザウイルスそのものを押さえるための治療ではありませんでした。一方パーキンソン症候群という病気の治療薬である塩酸アマンタジン
(商品名シンメトリル)(ノバルティスファーマ社より発売)という物質が、A型インフルエンザウイルスの増殖を抑えることがわかり、海外ではすでに使用されていました。我が国では、アマンタジンは臨床的に評価された精神活動改善作用から、抗パーキンソン剤あるいは脳梗塞に伴う意欲・自発性低下の改善を目的としてこれまで使用されてきました。日本では1998年11月に厚生省によりA型インフルエンザ治療薬として承認されました。アマンタジン(Amantadine)はインフルエンザウイルスの脱殻、侵入を阻止し、抗ウイルス作用を発揮します。アマンタジンの誘導体であるリマンタジン(Rimantadine) も、より強い抗ウイルス作用を表わします。臨床的には両者ともインフルエンザAウイルス感染には効果があるが、インフルエンザBに対しては無効です。アマンタジンがA型インフルエンザの発症を低率に抑えることが出来たとの報告も見られます。しかし、アマンタジンはインフルエンザ発症後
48時間以内に投与を開始しないと十分な効果は得られないとされています。そのためには迅速なインフルエンザの診断が必要であり、このキットの有用性が考えられるわけです。なお、この薬の投与はすべての人に必須であるわけではなく、高齢者、免疫力の低下した人など、A型インフルエンザに感染したときに、症状も重く死亡率が高いと考えられる人や、それらの人に接する医療従事者などへの投与が望ましいとされています。また、インフルエンザワクチンを接種できない人は、継続的に服用することに、インフルエンザへの罹患を予防する効果もあるとされています。
……インフルエンザ治療におけるアマンタジンの投与量……
・・米国専門委員会勧告ガイドライン・・
1−9歳 |
10−13歳 |
14−16歳 |
65歳以上 |
5 mg/kg/日 |
200 mg/日 |
200 mg/日 |
100 mg/日以上 |
150 mgを上限 |
体重40 kg以下 |
||
5 mg/kg/日 |
1
日2回分服(不眠があるため出来れば朝・昼がよい)腎機能低下者では
100mg/日以上の投与は禁但し、これは米国でのガイドラインで、本邦での保険投与量は成人100mg/日です。小児への投与量は示されていません。
・・塩酸アマンタジンの市販薬の種類と薬価・・
商品名 |
製薬会社 |
薬価(円) |
シンメトレル |
チバガイギー |
100 mg錠 84.40 |
トーファルミン |
ファルマ |
100 mg錠 33.80 |
アマゾロン |
澤井 |
同上 |
アテネジン |
鶴原 |
同上 |
ルトシン |
辰巳 |
同上 |
散剤・顆粒もあります
このうち、今回保険適応が認められたのはシンメトレルだけです。
発売後
20年以上経過した薬ですが、認可は1種のみ。