エイズ(
AIDS)とは?エイズは英語で
AIDS:Acquired immunodeficiency syndoromeの頭文字をとったもので、日本語では後天性免疫不全症候群という。後天性とは生まれつきの病気ではないということ、免疫とは体を病気から守る抵抗力のこと、不全とは働きが悪いということ、症候群とは症状の集まりを意味する。エイズは
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスの感染症で、このエイズウイルスに感染すると、体内でのウイルスの増殖により、次第にに免疫力が衰え、遂に、普通のヒトならまったく病気にならないような病原体の感染でも重病になり、死ぬことが多い病気である。日本のエイズの疫学上の定義は“
HIV感染に引き続く免疫不全の結果、特定の23種類の病気(下参照)のどれかになったらエイズと呼ぶことにする”としている。
エイズと診断される疾患
カンジダ症
カンジダというカビの1種によって、舌に白い苔(こけ)ができたり、口の中の粘膜に白色斑ができる病気。 原因となるカンジダ・アルビカンスは真
菌(→
真菌類)の1種で、消化管や膣などの粘膜に常在する。ふだんは良性の菌だが、
抗生物質、ステロイドなどによって免疫の働きが弱くなったり、抗生物質によって細菌叢(さいきんそう)が変化すると、異常にふ
えて、症状があらわれる。
サイトメガロウイルス感染症
サイトメガロウイルス感染症はAIDSの指標疾患の中ではカリニ肺炎に次いで多くみられる感染症で、網膜炎、肺炎、
副腎炎、食道炎、腸炎、脊髄炎などを起こす。
カポジ肉腫
皮膚、粘膜、リンパ腺、内臓にできる悪性腫瘍。全身の皮膚に小さな紫色の斑点が広がり、脇の下、太ももの付け根のリンパ節が腫(は)れる。末期になると、全身に結節状の腫瘍ができる。エイズ患者の約3分の1にみられるが、最近は減少しているようである。また、カポジ肉腫がエイズの直接の死因になることはほとんどない。1994年、ヘルペスウイルス(→ ヘルペス)の新種がカポジ肉腫に関係していることがわかった。カリニ肺炎
カリニ原虫という微生物が肺の中に巣くうことで、起こる肺炎ヘルペス
ヘルペスウイルスによっておこる感染症で、大きくわけて、単純ヘルペスと帯状ヘルペスがある。疱疹(ほうしん)ともいう。ヘルペスは水ぶくれができる皮膚疾患に対してつかわれている。単純ヘルペス
(単純疱疹)単純ヘルペスをおこすウイルスは1型と2型にわけられる。1型はおもに口唇ヘルペスを、2型はおもに陰部ヘルペスをおこす。口唇ヘルペスは、風邪やインフルエンザ、肺炎などで熱がでた後などにあらわれ、口のまわり、唇、鼻、顔、耳、口の中、咽頭に小さな水ぶくれができる。ウイルスは、顔面神経節という神経の一部分にひそんで、発熱、日光、ストレスなどの刺激をうけるとふえ、再発をくりかえす。消炎鎮痛薬の服用や、軟膏(なんこう)などで治療する。
陰部ヘルペス(→ 性行為感染症)は性行為によって感染する病気で、最近ふえている。はじめ陰部にひりひりするようなかゆみを感じ、やがて小さな水ぶくれが次々にできて、痛みやかゆみがひどくなる。頭痛や熱がでることもある。水ぶくれは1〜3週間でやぶれ、かさぶたになる。妊娠している女性が感染すると、出産のときに産道で胎児に感染し、命にかかわる危険性が高いため、帝王切開をおこなうことが多い。
ここで、HIV感染者がニューモシスチス・カリニ肺炎になったら「エイズになった」と言いう。もし予防治療によってカリニ肺炎にならなかったら、免疫不全の程度がもっとひどくてもエイズとは言わない。
アメリカでは
1993年1月からエイズの定義を変え、CD4陽性T細胞数が200/μl未満、あるいは百分率で14%未満になったら症状がなくてもエイズとした。(5才未満では正常域が異なるので別の定義になる)。ここまで低下すると無治療で正常に戻ることはないので、早く医療と福祉を受けさせるという社会政策的な意義がある。他の国では診断基準にCD4陽性T細胞数を組み入れていない。検査値が施設ごとに異なり、再現性もよいとは言えず、試薬や機械が高価なので開発途上国に向かないからである。