結核患者に対する看護

 

A.観察の要点

  1. 発熱:午後、夕方に熱が上がり、微熱が続く。粟粒結核は高熱が続く。体温を記録し熱型をみる。
  2. 咳嗽・喀痰:空洞がある患者は、早朝痰を多量に喀出し咳が多い。
  3. 粘液性、粘液膿性、膿性、血性など痰の性状、量を観察する。

  4. 喀血:喀血の量を観察し、適切な処置を行いながら小喀血・中度喀血、大喀血の状態であるかをとらえる。
  5. 大空洞のある活動性結核患者においては、肺動脈の壁がもろくなっており、大喀血のおそれがある。

  6. 呼吸困難:肺の呼吸面積が少なくなった重症結核患者に現れる。
  7. 胸痛:胸膜炎を起こしているとき、胸背痛を訴える。
  8. 体重減少:症状が進行するほどるいそうが強くなる。
  9. 盗汗:体温が夕方上がり、翌早朝に下がるので、寝汗をかいていることがしばしばある。
  10. 抗結核剤の副作用:聴力、発疹、消化器障害に注意する。
  11. 検査結果の把握:胸部X線検査、結核菌検査、ツベルクリン反応検査

 

B.ケア

  1. 感染予防

  1. 排菌している患者は隔離し、清潔区域と汚染区域を設定し、感染防止の管理を行う。
  2. 咳嗽、くしゃみなどの飛沫感染を防止するため、外来者との面会時など患者はマスクを使用する。患者に接するときは予防着を着用する。
  3. 痰や付着したものは感染源とならないよう処理する。
  4. 汚染物の処理や患者の処置などの後は必ず手指の消毒を完全にする。院内感染を起こさないようにする。
  5. 患者には、咳やくしゃみをするときはハンカチ等で口や鼻をおおうことや喀痰の取り扱いについて指導しておく。喀痰はちり紙でとり、紙袋等に入れて焼却する。
  6. 蓄痰して、痰の量や性状の観察が必要なときで、紙コップを使用する場合は、そのまま焼却する。消毒して再び使用する容器を用いる場合は、10%クレゾール液を痰と同じ量入れて12時間後処理する。
  7. 看護婦は個人衛生に気をつける。定期的な健康診断を必ず受ける。

  1. 安静

  1. 身体的および精神的に安静が保てるように、環境をととのえ日常生活援助を行う。
  2. 咳を誘発して安眠をさまたげないように、室内の温度、湿度が適切に維持されていることを確認する。
  3. 病気に対する不安、家族への感染の恐れ、入院しているためにおこる仕事や経済的問題など相談にのり、精神的支援をする。
  4. 療養期間を長く要するときは、特に暖かい励ましが必要である。

  1. 栄養
  2. 安静と同時に蛋白質、脂肪、炭水化物、ビタミン等栄養に富んだ食事を十分にとって、病気に対する抵抗力をつけることが大切である。

    食欲が減退しているときは、患者の好みなどを考え、できるだけ摂取できるように工夫する。

  3. 与薬
  4. 抗結核薬を長期に内服しなければならないので、きちんと服用していることを確認する。

    各薬剤の効果と副作用をよく知っておき観察し早期発見につとめる。胃腸障害を起こしやすい薬は、食事中や食直後の服用など軽減をはかる。

  5. 対症看護

発熱、咳嗽、喀痰、喀血、呼吸困難、胸痛などの症状がある期間においては、対症看護を行い患者ができるだけ体力を消耗しないよう安楽であるように工夫する。

 

C.生活指導

  1. 正しい服薬:服薬を中途半端にすると耐性菌が現れやすくなり、治療を長引かせることになるので、薬がなくなる前には受診して、内服が持続できるようにする。
  2. 日常生活:不規則な生活や過労は肺結核の誘因になるので、十分な睡眠をとり、3度の食事を栄養のバランスよくきちんと食べることなど、日常生活における健康管理の基本について指導する。
  3. 高血圧、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍など合併症のある患者は、その注意点もあわせて

    食事など具体的に指導する。禁煙を守れるようにする。

  4. 定期的受診:抗結核剤の内服を続けていくためや結核菌の検査を受けるためなど、定期的な外来受診が必要であることを指導する。受診時に仕事など社会復帰に関して、意志に相談しながら決めていくようにする。