O157の症状
O157感染症では、全く症状がないものから軽い腹痛や下痢のみで終わるもの、さらには頻回の水様便、激しい腹痛著しい血便とともに重篤な合併症を起こし、時には死に至るものまで様々である。
多くの場合(感染の機会のあった者の約半数)は、おおよそ3〜5日の潜伏期をおいて頻回の水様便で発病する。更に、激しい腹痛を伴い、まもなく著しい血便となることがあるが、これが
出血性大腸炎である。胃潰瘍などの血便は黒ずんで見えるが、この血便は真っ赤な鮮血です。発熱はあっても、多くは一過性である。血液の検査所見では、合併症が始まるまでは特徴的なものはなく、軽度の炎症所見が見られるのみである。出血性大腸炎の場合は、腹部超音波検査で、結腸壁の著しい肥厚が見られることが特徴的である。
O157感染による有症者の約6〜7%では、下痢などの初発症状発現の数日から2週間以内(おおくは5〜7日後)に、
溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome,以下、「HUS」と略す。)または脳症などの重症合併症が発症する。ひどくなると、尿毒症になり、強いけいれんや、意識障害を引き起こすここともある。なお、激しい腹痛と血便を認めた場合は、その数日後にこれらの重症合併症を起こすことがあるので、特に注意が必要である。
ア.
溶血性尿毒症症候群(HUS)HUSは血栓性微小血管炎(血栓性血小板減少性血管炎)による急性腎不全で、(1)破砕状赤血球を伴う貧血、(2)血小板減少、(3)腎機能障害を3徴とし、小児期ではO157感染症に引き続き発症することが多い。
症 状:顔色不良、乏尿、浮腫、意識障害
尿 検 査:尿蛋白、尿潜血
末梢血検査 :白血球数増加、血小板数減少
血液生化学検査:LDH値上昇、血清ビリルビン値上昇、CRP値上昇
HUSでは、これらの症状に引き続き、赤血球数減少、ヘモグロビン値低下、ヘマトクリット値低下、破砕状赤血球の出現、血清BUN値・クレアチニン値・GOT値・GPT値の上昇が見られる。
イ.
脳症脳症はHUSと相前後して発症することが多い。その予兆は頭痛、傾眠、不穏、多弁、幻覚などで、これらが見られた場合には数時間から12時間位の間に痙攣、昏睡などの重症脳神経系合併症が起こる可能性がある。