ここでは、企業・学校のエイズ教育について考えたいと思います。

企業では?

職場におけるエイズ問題に関するガイドライン
(いわゆる労働省のガイドライン)

職場におけるエイズ対策の基本的考え方

 (エイズ教育)
1 事業者は、職場において労働者に対しエイズ教育を行い、エイズに関する正しい知識を提供すること。
2 事業者は、エイズ教育や相談等の企画、実施に当たって産業医に中心的役割を担わせること。

 (HIV検査)
3 職場におけるHIV感染の有無を調べる調査 (以下「HIV検査」という。)は、労働衛生管理上の必要性に乏しく、また、エイズに対する理解が一般には未だ不十分である現状を踏まえると職場に不安を招くおそれのあることから、事業者は労働者に対してHIV検査を行わないこと。
4 事業者は、労働者の採用選考を行うに当たって、HIV検査を行わないこと。
5 労働者が 事業場の病院や診療所で本人の意思に基づいてHIV検査を受ける場合には検査実施者は秘密の保持を徹底するとともに、検査前及び結果通知の際に十分な説明及びカウセリングを行うこと。

 (HIV感染の有無に関する秘密の保持)
6 事業者は、 HIV感染の有無に関する労働者の健康情報については、その秘密の保持を徹底すること。

 (雇用管理等)
7 事業者は職場において、 HIVに感染していても健康状態が良好である労働者については、その処遇において他の健康な労働者と同様に扱うこと。また、エイズを含むエイズ関連症候群に罹患している労働者についても、それ以外の病気を有する労働者の場合と同様に扱うこと。
8 HIVに感染していることそれ自体によって、労働安全衛生法第68条の病者の就業禁止に該当することはないこと。
9 HIVに感染していることそれ自体は解雇の理由とならないこと。

 (不慮の出血事故等における感染の予防)
10)事業者は、職場における労働者等の不慮の出血事故の際の労働者へのHIV感染の予防のため労働者に対する応急手当の方法の教育、ゴム手袋の備付け等の必要な措置を講ずること。

次に東京ガスのエイズ教育マニュアルを紹介します。

<企業のエイズポリシー・エイズ対策事例>

各企業のエイズ対策の実際
(平成8年10月1日更新)

●事例1 <東京ガス>

東京ガスは、平成4年10月にエイズ問題啓発委員会を設置して対策活動に着手。平 成5年5月にはエイズ対策の基本方針である「エイズ対策取り組み指針」を策定した。

*基本的な考え方

A 東京ガスおよびグループ各社は、社員およびその家族を対象に、予防に関わる啓 発教育を徹底して行う。
B 東京ガスおよびグループ各社は、人権尊重の立場から次の対応を図る。
  ・今後とも、いかなる場合においても社員に対し、
HIV抗体検査を実施しない。
  ・
HIV感染者およびエイズ患者が発生した場合、そのプライバシー保護を徹底して行う。
  ・
HIV感染者およびエイズ患者が発生した場合、その雇用・処遇など、会社生活につ いて一切差別を行わない。

■上記のエイズポリシーに従い、東京ガスのエイズ対策は次の2段階で進めることとした。

<第1段階>

東京ガスグループの社員(約4万人)とその家族に対し、主としてエイズについての 正しい知識の普及のための啓発活動を展開する。

<第2段階>

HIV感染者もしくはエイズ患者が、社内またはグループ内に発生した場合には、 本人の人権を第一に考え、かつ最適の処置を取る。

■現在東京ガスのエイズ対策は第1段階から第2段階にウエイトを移しつつある。

*「エイズに関する職場管理者対応マニュアル」の作成

職場管理者が感染者・患者である部下からその事実について申告を受けた場合、どのように対応していくかが最大のポイントとなる。この対応を誤ると本人の人権を守ることが むずかしくなる恐れもあり、社内に無用の混乱を引き起こすことも予想される。そこで、

HIV感染者・エイズ患者の人権を第一に考え、かつ闘病生活を支援する
・エイズに対する知識不足・偏見・差別に基づく職場でのトラブルを未然に防止する

ことを目的として、職場管理者が具体的にどう対処すべきかという行動原則を定め た「エイズに関する職場管理者対応マニュアル」を作成した。このマニュアルは、

・処遇・雇用における差別防止
・プライバシーの完全保護

の2つの柱から成り立っており、

・感染もしくは発病を告げられた場合
・トラブルが発生した場合
・患者の傷病手当金請求書を取り扱う場合
・患者本人が死亡した場合

のそれぞれの場合について、職場管理職者が具体的にとるべき行動をフロ ーチャートで示している。

<又今後の課題としてこういったことがかかれてありました。>

●人事に提出する診断書の扱い
 現在の診断書のシステムでは、多くの企業で、人事や給与面の処遇に支障が出るため、診断書に病名を書くことになっています。また、保険を使って治療を受けると、保険の申請の際に企業の担当者に病名が知られてしまいます。エイズが発病した場合は、医療費が高額であるにもかかわらず、会社に知られたくないと思ったら、保険を使わずに治療を続けるしかありません。この問題を根本的に解決するには、企業の人事部や産業医など現場の努力だけでは不十分であり、会社のトップの理解を得て進めていくことが必要です。
 さらに
●日本社会にはいまだにエイズに対する危機感が少なく、エイズ教育を緊張感を持って実施することをむずかしくしている。
●いつまでエイズ問題を特別なテーマとして扱っていくのが妥当なのか。
●企業ができることには限界がある。この問題は、職場だけでなく学校などとも歩調を合わせてやっていく必要がある。
などといった意見もみられます。

<企業のプライバシー保護に関する考察・エイズ問題が企業のあり方を考える契機に>

 「HIV/エイズ問題」ということばは、社会がこの病気に対して偏見や差別をもたなくなり、数ある病気のひとつにすぎないと認識するようになったときに消えるでしょう。しかし、エイズ対策企業懇話会の話し合いは、日本社会や企業がいままで無視してきた問題をあぶりだしています。
 たとえば、個人のプライバシーの問題。会社の中で、社員のプライバシーはこれまで十分に尊重されていたでしょうか。プライバシーの問題でもある診断書の取り扱いも、エイズをきっかけにクローズアップされました。しかし、他人に知られたくない病気はエイズだけではないはずです。もし、これまでも個人のプライバシーが充分に尊重されていたのなら、エイズの問題が出てきたからといって、ことさらにプライバシー保護や企業の守秘義務が取りざたされる必要はないはずです。
 また、企業と社員の関係も問われています。「会社は家族」なのか、「会社と社員は契約で結ばれたドライな関係」なのか、それによっても感染者や患者に対する企業のエイズ対策の中身は違ってくるでしょうし、プライバシーの捉え方も違ってくるはずです。 エイズ問題への取り組みは、図らずも日本の企業の根本を改めて見直す機会となっています。(
http://www.win.ne.jp/~msi/IN_member/IN_member.html    エイズ対策企業懇話会ホームページより)

労働省ガイドラインの中にもエイズ教育について書かれてあるが企業によりけりであり十分な教育が行われていないのが現状です。東京ガスのエイズ教育マニュアルを紹介したが一番企業のなかで教育がすすんでいるためとりあげました。これからの教育のあり方として企業における統一したマニュアルが作成され十分に教育されていくことが望まれます。

学校では?

   文部省では  「発達段階に応じて正しい知識を習得させることによりエイズを予防する能力・態度を養うとともに患者・感染者に対する偏見や差別を除き、人間尊重の精神を育てて、人間の完成・豊かな人間形成をねらいとして、エイズ教育の充実を図るために1.教材の作成・指導資料の充実 2.教職員の研修の充実、3.指導方法の研究と普及」を主要目的多くの施策を推進してます。   

1993年から「エイズ教育推進地域事業」を策定し、全国47都道府県に所在する小・中・高等学校からモデル校として選定し、エイズ教育と性教育のあり方について実践的な研究をおこなっています。この推進事業では児童・生徒の発達段階や地域の実態に応じたエイズ教育のための各学校種別ごとの指導計画の研究と実践、エイズ教育を実践するための学校種別問題及び関係機関との連携の在り方の研究、各学校と家庭との連携のあり方に関する研究など主要テーマとされていました。わが国におけるエイズの主要な感染経路として国内における異性間性交渉によるものが増加し、さらに性活動の低年齢化などエイズ教育が児童・生徒に対する性教育と不可分の問題となった状況を踏まえた対策です。

この研究結果はエイズ教育が実効果をあげるためには、単に画一的な学校教育にとどまるのではなく地域性に配慮し、関係機関や家庭とともに密接な連携と共通な認識が必要なことを示し、また現状では多くの問題が残っていることを示しています。特に性の問題に関しては児童・生徒の意識や認識に個人差が大きく、教師の知識や指導力も必ずしも十分といえないのが現状と指摘されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こういった資料が作られていましたが文部省では新たな資料作成を作っています。

 

 

 

1 新たな資料作成の必要性

1

学校における性教育は,体育科,保健体育科を中心とする各教科,道徳,特別活動等学校教育活動全体を通して指導されてきたが,近年の児童生徒等の性的な成熟の早期化や性に関する情報や産業が氾濫するなどの社会環境の変化により性の逸脱行動が問題化している等,新たな課題が生起している。

 

2

また,性教育に関する指導資料については,昭和61年に「性に関する指導の手引−中学校・高等学校編−」(文部省)を作成したが,上記のような新しい問題が生起していることなども踏まえて,平成10年12月に小学校・中学校など,平成11年3月に高等学校などの学習指導要領が改訂されたところである。さらに,保健体育審議会答申(「生涯にわたる心身の健康の保持増進のために今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り方について」平成9年9月22日)において,「現代の社会状況に対応した性に関する指導を効果的に行えるような,適切な指導資料や教材を開発することなどの関連施策を更に充実する必要がある。」と指摘されているところである。

 

3

このようなことから,平成9年度より文部省に調査研究協力者会議を開催し,検討の結果を本参考資料としてとりまとめ,全国の学校に配布したところである。

 

 


2 改訂の要点

(1)構 成

次の6章で構成した。

第1章

学校における性教育の基本的な考え方

第2章

発達段階等に応じた性教育の目標及び指導内容

第3章

性教育の具体的な指導方法

第4章

性教育における家庭・地域との連携

第5章

性に逸脱行動に関する指導

第6章

性に関する指導の具体的事例とその考察


(2)特 徴

第1章においては,学校における性教育の基本的な考え方を示した。

中でも,性教育の目標を「児童生徒等の人格の完成と豊かな人間形成を究極の目的とし,人間の性を人格の基本的な部分として生理的側面,心理的側面,社会的側面などから総合的にとらえ,科学的知識を与えるとともに,児童生徒等が生命尊重,人間尊重,男女平等の精神に基づく正しい異性観をもつことによって,自ら考え,判断し,意志決定の能力を身に付け,望ましい行動を取れるようにすることである。」とし,生きる力を身に付けるとする,新しい学習指導要領との整合性を図った。

第2章においては,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,障害がある児童生徒等の発達段階に応じた具体的な目標及び内容を示した。(従来の指導資料は,幼稚園,小学校,障害がある児童生徒等に関する記述はない。)

第3章においては,性教育は,知識を身に付けるだけでなく,意志決定や行動選択のための技術・能力(スキル)を身に付ける必要があることを示した。

第4章においては,性教育における家庭・地域との連携の重要性について記述した。特に,学校−家庭,学校−地域社会,学校−関係機関の連携について今日的な現状に即した記述とした。

第5章においては,性の逸脱行動を法的な規制と関連させて記述した。

第6章においては,具体的な事例を8例示し,その解決策を示した。

http://www.hokenkai.or.jp/HIV/library/lib_index.html 文部省ホームページより)

文部省ではこういったパンフレットがつくられているが実際に学校ではエイズ教育に差がありきちんと授業に組み込まれているところ、いないところばらばらなのが現状です。

今後増えつづけるHIV問題で教育こそが唯一のワクチンといわれている。そういった中、正しい知識の普及だけにとどまらず自分自身の人生観を含んだ教育、地域と連携しながらの充実した統一された教育が必要です。

         

                 参考文献:エイズ教職員のためのガイドブック平成10315日発行

                              国立大学保健管理施設協議会エイズ特別委員会