コレラとは

(1) 形態

0.30.6×1.55.0μmの湾曲した菌体(コンマ形)をもった 桿菌で、端在性

1本の鞭毛をもって活発に運動する。コレラ菌の鞭毛は腸内細菌と異なって被膜

(sheath) があり、したがって直径はやや23nmである。中心部(core)は他の菌とほ

ば同様と考えられ、直径は10.5nm、分子量約45,000の単一の蛋白から構成されてい

る。生の標本における運動は極めて特徴的で、「飛蚊状」と形容される。一般の染色

液によく染まるがpfeiffer液がよく用いられる。

 

(2) 培養

通性嫌気性で普通の培地によく発達する。発育pH域は6.09.4であるが、アルカ

リ側を好み、至適pH7.68.2である。発育温度域は3040℃、高温では死滅しやす

いが10℃でも発育はする。至適温度は37℃。

 

(3) 菌形

血清学的観点から、O抗原とH抗原が知られているが後者は1つの型しかない。前

者はA,B,Cの3つに分けられ、温度安定性の抗原の有無で鑑別される。ABの組み合わ

せの血清型はOgawa(小川型)、ACの血清型はInaba(稲葉型)、ABCは稀な血清型で

Hikozima(彦島型)と称される。

 

(4) 臨床症状

コレラ菌は自然なはヒトにのみ感染してコレラcholera,cholera asiaticaの原因

となる。菌は経口的に感染し、胃液で殺されることを免れた菌は小腸で急激に増殖し

34時間ないし45日、通常1日内外の潜伏期ののち、いわゆるコレラ症状をもって

発病する。すなわち不安感にひきつつ゛いて、多量の水溶の下痢(米のとぎ汁様便)

と嘔吐を主徴とし、下痢の量は全経過を通じて数lから数十lに及ぶ。その結果著し

い脱水症状と血漿の電解質の異常をきたし、皮膚は乾燥して弾力を失い、いわゆる洗

濯婦の手を呈し嗄声、無尿、筋肉痛、痙攣、昏睡、虚脱、心臓および腎障害などをき

たし、治療されずに放置されたときの致命率はしばしば60%を超える。発熱、腹痛は

ないのが普通である。