9.参考資料、語句説明および最近の症例
<参考資料>
図説病態内科講座17
感染症 、メジカルビュ−社、1994年.新図説臨床看護シリーズ
成人看護−2、学研.看護医学用語の読み方と意味、医学芸術社、
1988年.医学大辞典、朝倉書店.
看護学大辞典、メヂカルフレンド社.
http://makioka.y-min.or.jp/InfCtl/MRSA05.html/ http://saigata-nh.go.jp/saigata/kangofu/MRSA/ http://www.icl.hsp.saga-med.ac.jp/taisaku/ http://www.msc.panasonic.co.jp/ http://www.jpma.or.jp/03message/ http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno/3002/02hp/
<語句説明>
創傷
:創は皮膚の連続性の離断を伴う開放性損傷をいい、傷は皮膚の連続性が離断されない閉鎖性損傷をいう。創と傷は、厳しく使い分けられるものである。
じょく創
:栄養不足により、限局された組織の一部分が機能停止した状態。長期臥床社、衰弱患者、整形外科患者などにもできやすい。
コアグラーゼ
:血漿を凝固する酵素。ブドウ球菌での産生能は、病原性と相関がある。
IVH(
静脈内高カロリ−輸液):経口栄養摂取が不可能か不適当な時に用いられ、濃厚糖液、混合アミノ酸液、電解質、ビタミン類を静脈により栄養補給するもの。
リネン
:敷布、枕カバ−、病衣など、布を素材にして使用されているものを総称していう。
プラスミド
:細胞質遺伝子の総称。大腸菌の薬剤耐性や毒素産生プラスミドがよく知られている。
院内感染
:患者によって病院内に持ち込まれた病原体による医療従事者や他の入院患者に対する感染。
グラム染色
:細菌の分類、同定、鑑別上きわめて重要な染色法である。この染色法では、濃紫色(黒紫色)に染色される細菌をグラム陽性菌、赤色(濃赤色)に染色される細菌をグラム陰性菌という。グラム陽性菌は、ブドウ球菌、レンサ球菌、乳酸菌、ジフテリア菌、抗酸菌、芽胞を有するかん菌、真菌などがある。グラム陰性菌は、淋菌、髄膜炎菌、腸内細菌、ペスト菌、スピロヘ−タ、リケッチアなどがある。
菌体外毒素
:菌体外に分泌された毒性物質で、単純タンパクからなり、加熱およびホルマリンで容易に毒性を失う(トキソイド)が、抗原性は強いジフテリア菌、ボツリヌス菌、破傷風菌などの毒素が代表的である。
抗生物質
:微生物のカビや放線菌のような細菌が作り出した化学物質で、他の病原微生物の発育を抑制する。合成ペニシリン、セファロスポリン類、テトラサイクリン類、エリスロマイシン類、ストレプトマイシン類、セフェム類、ポリミキシン、抗真菌薬、抗癌薬などがある。
溶血毒スタヒロリジン
:ウサギ、ヒツジおよびヒトなどの赤血球を溶血させる様々な種々の溶血毒があるが、そのなかでαトキシン(α
-toxin;α溶血毒)が重要であり、ウサギにこれの皮内注射をすると、局所に壊死を起こす(皮膚壊死毒)。また、静脈内注射で死亡する(致死毒)。
白血球殺滅毒
:ヒトおよび動物の白血球を破壊する。
腸管毒
:人体に経口的に与えると、吐き気(悪心)、嘔吐、下痢、腹痛などの急性中毒症状をおこす。集団食中毒の原因ともなる。摂取した食物や吐物から高率に黄色ブドウ球菌が検出される
皮膚剥脱毒素
:特殊な菌体から産生するタンパク質毒素で、乳幼児の皮膚を剥離させ、熱傷性皮膚症候群の原因となる。
毒素性ショック症候群毒素
:発熱、発疹、低血圧、臓器不全などのショック症状を引き起こす毒素。
敗血症
:血流中で菌が増殖して多数の菌が見られ、激しい臨床症状を示す状態。
肺化膿症
:肺の慢性化膿性疾患を総称して肺化膿症という。
β−ラクタム剤
:ベータラクタム系抗生物質。ペニシリン類およびセファロス誘導体は、その分子中にβ−ラクタム環と呼ばれる化学構造を要するので、βラクタム系抗生物質と総称する。β−ラクタム剤の作用点は、細菌の細胞壁を構築する酵素群であり、本剤により、その生合成が阻害されると、菌は自己融解を起こし殺菌される。細胞壁阻剤の多くは人体細胞に作用点がなく、副作用の少ない優れた選択毒性を示す。
MRSA腸炎
:消化器外科術後に好発する大変重篤な病態である。治療の遅延は、MRSA菌の菌毒素によりショック状態をきたし、やがてMOF,DICとなって死に至る。
多臓器不全
:外傷治療後、大手術後、ショック離脱後あるいは敗血症などの経過中に心、肺、腎、肝などの主要臓器の2つ以上の機能不全が同時あるいは、連続して発症してくる状態をいう。
尿路感染症
:腎、膀胱、前立腺、尿道、精巣上体、精巣等の尿路の非特異的感染を総称していう。
腸球菌(Entecococci):
ヒト腸管の常在菌である。主として経口感染によって腹痛、下痢、嘔吐などの症状を発現させる伝染病菌である。コレラ菌、チフス菌、赤痢菌またサルモネラ菌や腸炎グブリオなどの食中毒起因菌はしべてこれに該当する。
アミノグリコシド系の抗菌薬(アミノ糖抗生物質)
:ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲタマイシン、アミカシン、トブラマイシン等がある。広範囲抗菌スペクトルをもち、グラム陰性かん菌に対しても有効である。
黄色ブドウ球菌
:一般に化膿症の原因菌である。コアグラーゼや腸管毒素、他にも多くの代謝産物である外毒素を産生することで、種々の疾患を引き起こす
ペニシリン
:1928
年、イギリスの細菌学者フレミングが発見した抗生物質の1つ。多くのアオカビ、特にP.notaumおよびP.chrysogenumの培養液中に産生される酸性抗生物質。
テトラサイクリン
:化学構造に4つの環状構造を持つ種々の抗生物質の属名である。テトラサイクリン類は、ペニシリンの製法と同様な方法で、種々のストレプトミセス(真菌)の代謝産物により抽出して作られる。同様に
1つのものから部分合成により他のものを作ることができる。多くのテトラサイクリンは、経口投与で活性を有する。
エリスロマイシン
:1952
年に、キノコの代謝産物から単離された抗生物質。経口、非経口および局所に投与する。その抗菌スペクトルは、化膿性の菌(連鎖球菌、ブドウ球菌、その他)ブルセラ菌属、ジフテリア桿菌を含む。
メチシリン
:黄色ブドウ球菌などが産生するペニシリン分解酵素(ペニシリナーゼ)によっても分解されない抗菌剤として最初に開発されたペニシリン(
DMPPC)である。
バンコマイシン
:Streptomyces orientalis
から分離された抗生物質。主としてグラム陽性菌に作用するが、ある種のグラム陽性菌にも作用する。
第1、2、3世代セフェム
:β−ラクタム系抗生物質には、ペナム、ペネム、セフェム、カルバペネム、モノバクタムの5系統がある。全抗生物質の約8割がβ−ラクタム剤で、その中でもセフェム系の抗生物質が最もよく使われている。耐性菌対策から第1世代セフェムから第3世代セフェムまで分類されている。
<最近の症例>
1.下記のケースは医療事故であるが、
MRSAによる院内感染が原因で生じた。筑波大学付属病院、乳児に10倍の抗生物質を投与
1999年7月、当時0歳だった入院中の乳児に、主治医の指示ミスから通常の8〜10倍の抗生物質が投与され、手に血流障害を起こす医療ミスがあった。この障害で乳児は壊死した片手の指全部を切断した。病院の説明によると、1999年
7月13日、乳児がMRSAに院内感染していることが分かったため、抗生物質のバンコマイシンを投与するよう主治医が、副主治医を通じて看護婦に指示。この際、主治医は1回25ミリグラム(1日3回)とすべきところを、誤って1回250ミリグラムと口頭で指示した。14日正午になって、別の研修医が投薬指示用紙を見て大量投与に気付いた。しかし、乳児は片方の手に血流障害を起こしており、11月になって手の指5本を切断する手術を受けた。2.下記のケースは、小児の
MRSAによる院内感染が原因で起きた。東京大医学部付属病院、小児科入院の
7人の乳幼児が感染小児科に入院していた乳幼児、児童計
36人のうち約二割に当たる7人の乳幼児が、抗生物質の効きにくいMRSAに感染していたことが今年わかった。このうち5人は、小児科内で院内感染している。病院によると感染が判明したのは、先天性心疾患や筋疾患、中枢神経障害などで入院している生後3ヶ月と4ヶ月の男児2人と、7ヶ月〜2歳の女児5人。現在入院中の36人に対して今月までに行った検査で、のどや鼻、気管の分泌物、たん、尿などからMRSAが検出された。生後11ヶ月の女児ら2人は入院した際の検査で、すでに感染が確認されたが、残る5人は入院後の検査で感染が分かっており、病院は院内で感染した事実を認めている。生後8ヶ月の女児は入院時に、すでに感染していた11ヶ月の女児と同じ病室になり、感染した。同病院は、医師や看護婦らが診療後、手などを十分に消毒しないまま、別の入院患者を診療した際に感染した疑いが強いとみている。