マラリアの病原性
マラリア原虫はハマダラ蚊の吸血によってヒトに感染する.この感染型であるスポロゾイトはまず肝細胞に侵入し増殖する(赤外型発育).次いで血流中に放出され,赤血球に侵入し,この細胞内で輸状体,栄養体,分裂体と発育し(赤内型発育),細胞分裂の結果生じた十数個の娘虫体(メロゾイト)が赤血球を破壊し,各々が新しい赤血球に侵入し,また,赤内型発育を繰り返すが,メロゾイトの一部は生殖母体となり蚊の吸血で蚊の体内に取り入れられた時,有性分裂しスポロゾイトを形成し,1サイクルを完了する.
良性マラリアでは、感染赤血球率が全赤血球数の1~2%をめったに超えないのに対して、熱帯熱マラリア原虫はどの赤血球にも無差別に侵入するため、この感染率は高く、感染赤血球の割合が10%を超えると、重篤な症候を引き起こす。
マラリアの潜伏期間は,三日熱マラリアで8~27日,熱帯熱マラリアでは5~12日,四日熱マラリアでは28日,卵型マラリアでは11日であるが,三日熱マラリア,四日熱マラリア,卵型マラリアの場合,潜伏期間が数カ月続くことがある.前駆症状である倦怠感や体調不全をきたした後,突然,悪寒,戦慄と共に高熱が起こり,頭痛,嘔吐,関節痛等をともなう.発熱は4~5時間持続し,その後,平温に戻る.熱発作は三日熱マラリアや卵型マラリアでは48時間,四日熱マラリアでは72時間の間隔で起こる.一般に,熱帯熱マラリアの熱発作間隔は36~48時間であるがときとして長引くことがある.この発熱間隔はメロゾイトが赤血球に侵入して,娘虫体が形成され赤血球を破壊し,外部に放出されるまでの期間と一致する.急性期後,貧血,脾腫,肝腫がみられ,また,循環不全,全身出血,腎不全,ネフローゼ症候群をも併発する.熱帯熱マラリアの場合,急速の昏睡を主症状とする脳性マラリアや黒水熱を併発し,死をもたらすことがあるため,特に注意すべきである.ところで流行地における観測によれば,鎌状貧血症,グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症,卵型赤血球増加症等の遺伝性疾患を持つ者はマラリアに対して抵抗性をもつ.また,duffy抗原欠乏症の患者には三日熱マラリア原虫は感染しない.これらはマラリア流行地にみられる疾患で,長い人類の歴史の中でマラリア感染との戦いで自然淘汰の結果のためとの説がある.
マラリア原虫の赤血球侵入
http://malaria.himeji-du.ac.jp/IPublic/Aikawa/rbc.html
参考文献)http://www.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/m0.htm
http://malaria.himeji-du.ac.jp/IPublic/Aikawa/home.html