急性肝炎

原則的に一過性の良性疾患である為、特別な治療薬は要しない。一 般的には安静と必要に応じた補液等を行うのみで充分である。

……臥位の姿勢を極力とる。(臥位は肝血流量が立位より多い。)

有効肝血流量を増加させることは、急性障害肝に対して好影響を与える。

……ブドウ糖(ビタミンを含む)――食欲不振にて摂食できない時。

  健胃剤、消化酵素、総合ビタミン――食欲増進、消化を助ける。

  プレドニン、ウルソエオキシコール酸――黄疸が強い時。

  グルカゴン、インスリン――重症肝炎の時。

……脂質を減らし、糖を中心とした、やや高蛋白なバランス良い食事

従来の高エネルギー、高蛋白食は、回復時に肥満を招く。

慢性肝炎

慢性肝炎とはウィルスによって、惹起された免疫反応による持続性の肝細胞障害である為、治療薬には作用機序より考えると大きく4種類に分類できる。

1.肝細胞保護作用を主体とする薬剤(肝作用薬)

2.免疫反応を抑制する薬剤

3.免疫反応を増強することによりウィルスの排除を狙う薬剤

4.抗ウィルス薬

 

  1. 肝細胞保護作用を主体とする薬剤(肝作用薬)

主な作用

    1. 肝細胞保護作用と壊死の改善
    2. 肝再生の促進
    3. 肝における代謝の改善

代表的薬物

@グリチルリチン――慢性活動性肝炎の組織学的な改善

A肝臓抽出エキス(アデラビン)――GOTGPT、γグロブリンの改善

Bチオプロニン(チオラ)――GOTGPTZTTの改善

C肝臓加水分解物(プロへパール)――肝組織呼吸促進作用、GOTGPTの改善効果

Dポリエンフォスファチジルコリン(EPL――GOTGPTの改善

Eウルソデオキシコール酸(ウルソサン)――利胆作用、肝血流増加作用、胆汁うっ滞改善作用

F漢方薬――肝作用薬の単独投与のみでは、慢性肝炎の治癒は期待できない為、抗ウィルス薬、免疫調整薬との併用が

望ましい。

 

2.免疫反応を抑制する薬剤――副腎皮質ステロイド

この治療法は、以下の理由から、実際にはほとんど行われていない。

    1. 自己肝細胞に対する免疫反応を完全に抑え込めれば、肝炎ウィルスは残ったままで肝炎は治癒すると思われるが、B型、C型肝炎ウィルスの発癌性の問題が残される。
    2. 長期投与によっても、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎は充分に抑え込めない。

 

3.免疫反応を増強することによりウィルスの排除を狙う薬剤

免疫系を介しての坑ウィルス効果を狙う。

    1. 副腎皮質ステロイド離脱法――HBVによる慢性肝炎のみ有効
    2. 副腎皮質ステロイドを短期に大量に使うことにより、宿主免疫能を抑え込みB型肝炎ウィルスを増殖させ、その後 にこの薬剤を急速に中止することで、宿主の免疫能を賦活化し、B型肝炎ウィルス感染細胞を破壊することにより、ウィルスを排除したり、ウィルス量を減少させる。

      効果・副作用

      高い治癒率を示す反面、副作用も強く、一時的にせよ肝炎を悪化させる治療法なので、治療途中で重症になる例もある。

       

    3. 免疫賦活剤を用いる治療法

1)OK−432――胆癌宿主の免疫能を賦活する。

2)シゾフィラン――胆癌生体の免疫能を賦活する。

3)インターロイキン−2(IL-2)――T細胞増殖因子

4)インターフェロン(IFN-γ――マクロファージの活性化作用

T細胞のIL-2レセプターの発現増強作用等免疫系への作用

IFN-γは抗ウィルス作用は弱く、免疫調整薬としての作用が主体に考えられている。

 

4.抗ウィルス薬

@インターフェロン(IFN

〈概要〉

インターフェロンは、身体がウィルスに感染した時に体内で作られる物質で、間接的にウィルスの増殖を抑える作用をする。インターフェロンがウィルスに感染した細胞と結合すると、その細胞がウィルスの増殖を抑える酵素を作り出す。未感染の細胞と結合すると、RNA分解酵素が活性化される。これは、ウィルスが侵入し、遺伝情報であるRNAを放出した時に分解してしまうので、ウイルスは増殖できない。元々、インターフェロンは、必要に応じて、体内で作り出されるのだが、慢性化した肝炎を治すには量が足りない為、それを助ける為に、体外から補充するのである。

〈分類〉

IFN-α……主に白血球が産生

IFN-β……線維芽細胞が産生

IFN-γ……主にTリンパ球が産生

〈作用〉

      1. 抗ウィルス作用
      2. 免疫調整作用
      3. 細胞増殖作用

肝炎の治療には、主に(1)(2)の作用により効果があると思われる。

   〈目標〉HBe抗原を陰性化し感染力を弱め、肝炎を抑えて、肝硬変への進行を止める。

   〈副作用〉効果がある反面、かなりの副作用がある。

      1. 全身倦怠感
      2. 発熱
      3. 頭痛
      4. 関節痛
      5. 食欲不振
      6. 吐き気、嘔吐
      7. 精神不安定(鬱状態)
      8. 脱毛
      9. 白血球、血小板の減少

   〈投与方法〉

(1) 4週間連日投与

(2) 週2〜3回の間欠投与

 

Aアデニン・アラビノシド(Ara-A)――DNAウィルスに対してのみ有効

アデシンと拮坑的細胞内に取り込まれ、ウィルスDNAの合成を阻害する。

 

 

 

 

 

 

     治 療 と 予 後 (型分類別)   

 

A型肝炎

A型は慢性化しないので、安静な姿勢をとり、食事に気を付ける。場合によって、補液を受ける。

 

B型肝炎

初期は、原則入院である。 安静な姿勢をとり、食事に気を付けた生活を心掛けるが、急性期は、食欲不振、嘔吐の症状があるので、食事の投与は無理をせず、補液を行う。

〈治療目標〉

HBe抗原の陰性化

HBe抗体へのセロコンバージョンseroconversion

〈治療方針・生活〉

    慢性の場合は、激しいスポーツを避ければ、普段通りの生活で良い。

近年の食糧事情は良いので、牛乳1本、豆腐半丁程度副食に加える程度で良い。但、酒は禁止である。

 

C型肝炎

C型は、感染後、慢性化、劇症率が高く、その後、肝硬変、肝癌になる確率も高い。従って、劇症肝炎への移行、および慢性化防止が重要となる。

安静臥床のスケジュール、食事治療、補液、一般的薬物治療メニューは、A型、B型と同様である。その他に、C型の場合、急性であっても、インターフェロン治療を行う。(慢性化防止)

 

〈治療方針・生活〉

  中等度以下の労働は可能であり、GPTの値によっては、テニス等のスポーツも可能である。

  食事は、バランス良い食事を心掛け、飲酒は原則的禁止である。

 

〈薬剤治療〉

・一般肝作用薬

・免疫調整薬(漢方を含む)

・抗ウィルス薬――強力ネオミノファーゲンCSNMC

      副腎皮質ステロイド

         インターフェロン

   C型肝炎の場合、インターフェロンの治療が一般的に有名である。

 

参考文献:ウィルス肝炎・渡辺明治・永井書店(1993

参考URL http://www.cty-net.ne.jp/~shige/