【
ポリオに関する社会の動向 】
WHOのポリオ根絶計画
世界保健機関(WHO)は、10月下旬に京都で開かれる会議において、日本を含む西太平洋地域での野生株ポリオ根絶宣言を出す予定です。根絶宣言は1994年の南北アメリカ地域についで2ヵ所目です。
WHOは以下のような目標を掲げています。
2002年:野生株由来ポリオ患者発生をゼロにする |
流行の状況
日本では1960年にポリオの大流行があり、患者数は5千人を超えました。それを契機に集団予防接種が行われるようになり、1980年を最後に、自然感染(野生株ウイルスへの感染)による患者は発生していません。
しかし、南東アジア地域、中東地域、アフリカ地域などにおいては、依然として多くの患者が発生しています。例えば、南東アジア地域(インド・バングラデシュなど)においては、1999年に1,160名の患者が発生しています。
海外で感染した人が、気付かないまま日本に入国する可能性もあります。症状が出ていなくても、感染者の便にはウイルスが排泄されます。
従って、国内では根絶されていても、予防接種を引き続き行うことには意義があります。
不活化ワクチンへの移行
2000年4月に福岡県で、ポリオの生ワクチンを接種した後に3歳女児が死亡した例と、1歳男児の右足が麻痺した例が発生、さらに6月には宮崎県で、接種後の乳児の便から父親が感染するという例が発生し、全国でポリオの予防接種が一時見合わせられました。
3歳女児と1歳男児の件は予防接種との関係が否定され、生ワクチンの接種は再開されました。
しかし、ワクチン関連麻痺については、被接種者と接触者の両方を合わせて、過去約30年間で36例が発生しています。宮崎のケースのような、接触感染によるワクチン関連麻痺を防ぐために、不活化ワクチンへの移行を検討する必要があります。
厚生省によると、ワクチン関連麻痺の発生頻度は以下のようになっています。
被接種者:440万回の接種に1例 接触者:580万回の接種に1例 |
参考:厚生省ポリオ予防接種検討小委員会報告書
-----------------------------------------------------------------------------
セルフ・ヘルプ
ポリオに関しては、患者自身によるセルフ・ヘルプ・グループが全国各地にあります。
これらの多くは1990年代以降に結成されました。二次後遺症であるポスト・ポリオ症候群の存在が知られるようになり、その情報交換と交流の場が求められるようになったためです。
小児期にポリオに罹患し、いったんは回復して通常の社会生活を送ってきた人々にとって、長い年月を経て再び後遺症に苦しめられるということは、精神的にも大変な衝撃です。
また、ポスト・ポリオ症候群に対して正しい認識を持つ医療従事者が、日本ではまだ少ないため、適切な治療を受けられないでいる患者も少なくないのが現状です。
そこで、各地の「ポリオの会」においては、支え合い、情報発信をする場として、交流会を開催したり、生活情報の交換を行ったりすることと同時に、患者ではない人々も対象とした講演会や、行政や医療機関への提言などにも取り組んでいます。
全国ポリオ会連絡会のページ
http://member.nifty.ne.jp/shibatatae/