1. サルモネラsalmonellaについて

 

サルモネラは、腸に病気をおこす細菌の1属で、大腸菌や赤痢菌と同じ仲間に属し、ウシ、ブタ、鶏などの家畜やペット動物の腸管内容物や糞便中からしばしば分離される病原細菌である。古くからこの菌によって汚染された食品が原因で、食中毒がしばしば発生してきた。サルモネラという名前は1885年、はじめてこの菌を発見したアメリカの獣医ダニエル・エルマ−・サルモンの名前にちなんで名づけられた。

サルモネラ属の細菌は、腸炎菌、腸チフス・パラチフス菌、ブタコレラ菌などに分けられる。現在サルモネラは2500以上の血清型が知られているが、ヒトに感染するもので多いのは、腸炎菌(サルモネラ・エンテリティディス)や血清型のネズミチフス菌で、食中毒をおこす。腹痛や下痢などの症状があらわれ、軽い場合は下痢止めで治療するが、重症の場合は、体内での菌の増殖を抑えたり殺菌するため、抗生物質などの抗菌薬による治療が一般的に行われている。

しかし、S.typhimuriumDT104は、ペニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、サルファ剤などの各種の抗菌薬に耐性を獲得していることが多く、また、最近では、ナリジクス酸などのキノロン薬に耐性を獲得したものも、オランダでは見つかっている。