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診断〜「おなかがひどく痛い」「下痢になった」「吐き気がする」
病原性大腸菌は潜伏期間が長く、初期症状は「だるい」「元気がでない」といった不定愁訴がほとんど。にもかかわらず、2〜3日後には、鋭い腹痛を感じる、吐き気や嘔吐がある、1時間ごとにトイレに行く、など症状が急激に悪化する。発熱は認めるが高熱は少ない。中には、病原性大腸菌の出すベロ毒素によって腎障害が生じ、顔がむくむ患者もいる。血液の検査所見では、合併症が始まるまでは特徴的なものはなく、軽度の炎症所見が見られるのみである。出血性大腸炎の場合は、腹部超音波検査で、結腸壁の著しい肥厚が見られることが特徴的である。
「血便がでる」
感染で血便が出るのは、サルモネラ菌、カンピロバクタ−菌、腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌。だが、病原性大腸菌に感染していても、血便が出るのは1割程度。かならずしも血便が病原性大腸菌の感染の証拠とはいえない。さらに、病原性大腸菌の出すベロ毒素によって、引き起こされる溶血性尿毒症でも、下痢や血便がでないことも多い。
〜治療〜
経口的水分補給では、間に合わず不足しがちになる。
細菌性腸炎の場合、便の排出を止めてしまうと、体内で菌が増殖し、症状が悪化する。
一般的な抗菌薬でも病原性大腸菌にはよく効く。小児にはホスホマイシンなど、成人 はニュ−キノロン剤など。
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また、頻回の水様便、激しい腹痛や血便を示す典型的な出血性大腸炎の症例では、約10%に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重症合併症を発症する可能性があり、その予測・予防が重要である。
・溶血性尿毒症症候群(HUS)
〜診断〜
通常のパターンは、出血性大腸炎の症状がでてから3,4日で腎症状が出現し、さら に3日程度で無尿となる。神経症状はこの腎症状に少し遅れるが無尿になると溢水状態となり、全身状態の悪化を招くので速やかに透析すべきである。血小板数の減少は問題とな るが、5万程度であれば血液透析、腹膜透析いずれとも可能である。症状で重要なのは神経症状であり、意識状態の低下、けいれん、興奮状態などはもっとも重視すべき所見である。ついで高血圧も重要である。下痢の回数、血便、腹痛の程度、血小板の減少度、貧血の度合いは予後判断の参考とはならない。また、検査値のうちでもっとも注意すべきことは、
〜治療〜
透析、点滴、輸血、γグロブリンの使用、brain protection、血小板凝集抑制剤、プロスタグランジン製剤、FOY、フサン、ウリナスタチン、抗生物質、血漿交換
・脳症
脳症はHUSと相前後して発症することが多い。その予兆は頭痛、傾眠、不穏、多弁、幻覚などで、これらが見られた場合には数時間から12時間位の間に痙攣、昏睡などの重症脳神経系合併症が起こる可能性を考え、それに備えなければならない。