1.腸炎ビブリオの特徴について

〈食中毒の分類〉

細菌性食中毒

感染型

サルモネラ

腸炎ビブリオ

病原性大腸菌

カンピロバクタ−

毒素型

黄色ブドウ球菌

ボツリヌス菌

中間型

ウェルシュ菌

セレウス菌

ウィルス性食中毒 SRSV(小型球形ウィルス)

 

 

自然毒食中毒

 

 

植物性

 

毒きのこ

植物毒

カビ毒

動物性

フグ毒

化学性食中毒

その他の食中毒(アレルギ−様食中毒)

 

〈腸炎ビブリオ食中毒〉

しらす干しによる食中毒が1950年大阪で発生した際、藤野らはその原因菌としてPasteurella parahaemolytica を分離命名した。国立横浜病院の食中毒の原因菌として滝川は1956年3%食塩添加によりよく発育する菌を分離し、Pseudomonas enteritis と名付けた。その後この両者の分離菌は一致していることが判明し、食塩がないと発育しないので一時期『病原性好塩菌』と呼ばれたが、1963年その学名はVibrio parahaemolytics ,和名は腸炎ビブリオと決定された。従来病因物質不明とされていた食中毒の大多数がこの菌を原因菌とすることが明らかになり、我が国の食品衛生上この菌の発見は大きく貢献した。

腸炎ビブリオ





〈腸炎ビブリオ〉 菌体の一端に単毛性べん毛をもち、運動する。最近、低温(20℃)で固形培地に培養した多数の菌株で、この極毛のほかにより細く脱落しやすい周毛性べん毛が観察され、この菌の分類学的所属が問題となっている。サルモネラとともに日本で最も発生頻度の高い食中毒原因菌で、7〜8月に発生が集中する。腸炎ビブリオは、真水や熱(60℃10分間で死滅)には弱く、海洋性細菌であるため3〜5%の塩濃度でまた水温が20℃を超えるとよく発育し、また汚染魚介類が原因の場合がよくある。この菌は1950年大阪府南部で初めて分離された病原菌であるが、この時の原因もゆでたシラスだった。アメリカ等でもシ−フ−ドレストラン等で起こっているケ−スがあることも、この菌が魚介類を介して起こることをしめしている。しかし、二次汚染による他の食品でおこる場合もある。最近では旅行者が海外で感染する場合も多くある。潜伏時間4〜28時間で、下痢(水様性下痢時に粘血便)、腹痛、発熱、嘔吐、悪心急性等の胃腸炎症状が主症状で、3日以内に排菌は止まる。症状が強い初期には抗生剤投与が効果があるが、通常2〜5日で治癒する。