学籍番号
99525 坂本明子 99526 坂本陽子 99527 佐藤寛美

99528 副島ゆかり 99529 立藤綾香 99530 田中麻美

 

S.B.O 1.ブドウ球菌の細菌学的特徴

2.黄色ブドウ球菌の細菌学的特徴

3.黄色ブドウ球菌による病気を説明できる

4.感染の予防と診断と治療について説明できる

5.多剤耐性ブドウ球菌について説明できる

6.多剤耐性黄色ブドウ球菌の治療法を説明できる

7.抗生剤の副作用について説明できる

G.I.O

現在では、抗生物質の普及によって、高度多剤耐性ブドウ球菌が増加し、病院内にもブドウ球菌感染症が流行するおそれも指摘されている。そこで、ブドウ球菌のなかでも黄色ブドウ球菌についての病気、診断、治療などを学び、それらの感染症をなくすために社会に協力できる看護婦となることを目標とする。

 

 

1. ぶどう球菌の細菌学的特徴について

 

この属は自然界に広く分布しており、生体外では空気、土、酪農品などから分離

される。ヒトや動物では皮膚、鼻咽腔の粘膜、腸管内に常在している。化膿を起こす

代表的な菌であるが、病原性を示さないものもある。 形態は、直径0.51.5μmの

ほぼ球形の菌で、菌の集塊は不規則なブドウの房状の配列を示す。培養は通性嫌気

性、有機栄養菌、至適発育温度は3540℃であるが、20℃近くでも発育可能である。

多くの菌は、耐塩性で、10%食塩の入った培地上で発育できる。

 

 

2. 黄色ブドウ球菌の細菌学的特徴について

 

この細菌は、化膿したところ、おでき、水虫、にきび、のどや鼻の中動物など私た

ちの身近にあり、この菌が付着した手指などから食品を汚染する機会が多いため、こ

の細菌による食中毒が多発する。この菌は、食べ物の中で増殖するときにエンテロト

キシンという毒素をつくり、人に害をおよぼす。この毒素は10030分の加熱でも分

解されない(ただし、菌そのものは熱に弱い)。

 

黄色ブドウ球菌による病気

 

  1. 膿皮症

単純性毛包炎・よう・せつ: 皮膚の汗腺・皮脂腺・毛孔などから侵入する

伝染性膿痂疹: exofoliative toxin産生する菌の感染によるファージ型別の

U群の菌が多い

アトピー性皮膚炎: ブドウ球菌感染を併発していることが多い

A 術後感染症 術後の傷に感染する

B 創傷感染 傷の化膿の原因である

C ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS;staphylococcal scalded skin syndrome

新生児剥脱性皮膚炎・ブドウ球菌性中毒性表皮壊死解離症

D 食中毒entrotoxin産生株により汚染され、食品中で毒素産生があった場合に

その食品を摂取することによりおこる

感染源は、調理人の手指に付着したブドウ球菌

手に怪我をしている場合に多い

E 毒性ショック症候群

toxic shock syndrome toxinを産生する菌による

女性の月経時に発生する高熱・発疹・血圧低下・頭痛・腎不全・肝

 

 

 

3. 多剤耐性ブドウ球菌について

 

MRSAについての説明】

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のことである。現在では、βラクタム環構造を有するペニシリン系の多種類の抗菌薬およびメチシリンを含めた半合成抗菌薬のみならず、セフェム剤、半合成抗菌薬に対しても広く耐性を持った多剤耐性の黄色ブドウ球菌をさしている。ブドウ球菌は土壌をはじめ環境中に広く存在し、人間の皮膚や鼻腔の粘膜にも住み着いている。病原性の強い黄色ブドウ球菌もただ寄生しているぶんには害がない。しかし、皮膚に傷があればそうはいかない(とびひ等)。傷口に侵入すると、菌体外毒素を出し、生体に悪さをする。まず、コアグラーゼが血漿を凝固させ白血球の食菌作用を拒み、ついでに溶血毒とロイコシジンが赤血球や白血球を傷害する。ヒアルロニダーゼは結合織を、スタヒロキナーゼは線維素を分解し菌の増殖を促進する。これによって、膿皮症、髄膜炎、リンパ節炎、敗血症が起こる。更に菌によっては、エンテロトキシン、エンドトキシンを産生し、これが体内に吸収されると発熱、下痢、嘔吐といった中毒症状や 毒素性ショックを引き起こす(タンポンショック)。これら、ブドウ球菌はペニシリン系の抗生剤がよく効く。

 

MRSA の治療法】

MRSA感染症も治療は一般の感染症と同様に、抗生物質による治療が主体となるが、時として死亡例も経験されるため的確な診断と迅速な治療の開始が要求される。

 

A.全身状態の改善

全身状態の悪い患者に発生することが多いので、全身状態の改善に努めなければならない。特に糖尿病患者では、糖尿病の治療をMRSAの治療と並行して行う必要がある。

B.早期治療

MRSAによる感染症が起これば、有効な抗生物質で治療を行うことになるが、早期治療を開始すればするほど治療効果も高くなる。通常の黄色ブドウ球菌の治療中に抗生物質が効かなくなってきた場合は、MRSAが選択されたものとして、MRSAと判断される前に有効な抗生物質に変更する必要がある。

 

C.抗生物質による治療

  1. 抗生物質の種類

経口薬でMRSAに有功とされるものは、ニューキノロン系抗菌剤の

ノルフロキサシン、オフロキサシン等であり、第一選択とされることも

あるが、近年これらに耐性のMRSAが増加している。その他、

キノサイクロン、リフャンピシン、アルベカシン、バンコマイン等があり、

これらはいずれもMRSAによる腸炎に効果が期待できる。特にバンコマイシンが最も有効で耐性の報告はなく、副作用に注意して投与すると効果が

認められる場合が多い。一般的には、経口薬に比べ注射薬が効果を発揮する場合が多い。

2.抗生物質の選択

各々の患者に対する有効性と当該病院で発生している MRSAの抗生物質

感受性で決定するべきである。例えば、イミペネム/シラスタチンナトリウ

ムは、当初ほぼ100%有効であったが、最近は耐性株の増加が顕著である。

このようなことから考えても、有効な抗生物質を選択するためには、各病院におけるMRSA の感受性動向を十分把握しておく必要がある。

  1. 投与方法

これらの薬剤は単独で使用されるのみならず、ホスホマイシンと併用される事も多い。これは、ホスホマイシンとの相乗作用を期待した治療法として

広く行われており、多くの患者を救命したと報告されている。又、

ニューキノロン系抗菌剤との併用でも相乗効果があるとされている。

さらにセフォチアムとイミペネム/シラストチンナトリウムの併用法も効果がすぐれている。

抗生物質をどの程度の時間投与するべきかはもちろん症例ごとに異なるが

耐性菌をつくらないように無用の抗生物質の長期使用を避けなければ

ならない。又、保菌者をつくらないため、治療終了時に鼻咽喉のMRSA

有無を検索する必要がある。

 

MRSA抗生剤の副作用】

 

バンコマイシンについては、ショック、腎障害、聴力障害、また急速に静射するとレッドネックシンドロームやレッドマンシンドロームといって全身が発赤するといった症状がある。MRSA MICを越える濃度を長時間保つことができれば、血中peak levelをむやみに高くする必要はない。患者の年齢、体重、腎機能を考慮して、状態を見ながら細心の注意を払って使用することが必要。

 

 

(感染の診断について)

  1. グラム染色
  2. ある種の細菌の表面にはRNAのマグネシウム塩(グラム陽性物質)があって、ク

    リスタル紫で染め、ルゴール液を作用させると、レーキが形成される。またある種の

    細菌ではグラム陽性物質が欠けているために、レーキが形成されない。アセトンによ

    る脱色・分別操作を行うと、前者は脱色されず(グラム陽性菌)、後者は脱色されて

    しまう(グラム陰性菌)。 ブドウ球菌はグラム陽性菌である。

  3. コアグラーゼ試験
  4. コアグラーゼ: 黄色ブドウ球菌が球体外に産生するタンパク質で、血漿中のプロト

    ロンビンに作用し、これをプロトロンビンにかえて血漿を凝固させる

    作用をもつ。 コアグラーゼが作用するためには血清中の因子

    (コアグラーゼ反応因子)を必要とするコアグラーゼは、

    ブドウ球菌の表面にフィブリンを沈着させ、貧食細胞による食菌に

    抵抗する助けをしている。したがって、組織侵襲性と関係があると

    考えられている。

    コアグラーゼ試験の方法

    のせかえガラス法microcoagulase test

    のせガラス上に白金耳で生理食塩水をとって一滴のせる。それに接して血

    漿を一滴のせる。ブドウ球菌のコロニーよりきんをとって食塩水とまぜ、さ

    らに隣の血漿と混ぜ合わせる。コアグラーゼが陽性の場合は一分以内に菌の

    凝集が起こる。

    試験管内法

    クエン酸ナトリウムで凝固を防いだウサギ血漿の希釈と菌液を混ぜて、37

    度で水浴中反応させる。0.5,1,2,3…18時間まで血漿が凝固するか

    観察する。通常は、3時間で打ち切っても実用上の問題はない。

  5. マンニット分解性試験
  6. 黄色ブドウ球菌は、35度、48時間培養すると、卵黄カロマンニット食塩寒天培

    地で直径2,3mmの正円集落で、マンニット分解性陽性、卵黄反応陽性の古典的な

    集落を形成する。マンニット分解性は、フェノールレッドの変色により確認できる。

    集落および集落周囲の培地色が、黄色に変化すればマンニット分解性陽性、変化が

    なければ、マンニット分解性陰性である。

    ちなみに、卵黄反応はコアグラーゼ産性能と相関性が高いことから、黄色ブドウ球

    菌の選択分離培地に利用されている。

    【選択分離培地】

     

    (マンニット食塩寒天)

     

    直径12o、不透明で中心がやや隆起したS型集落を形成する。この培地には、黄色ブドウ球菌、その他のブドウ球菌ほか一部のミクロコッカスやバシラス属の細菌も発育する。黄色ブドウ球菌はマンニットを分解して酸を産生するため、培地を黄変する。マンニット非分解性集落の周囲は変化しない。ブドウ球菌の色素産生は糖類の添加により促進されるので、この培地上での黄色ブドウ球菌は黄色〜黄金色の色素を産生し、特徴ある集落を形成する。 上:弱拡大 下:強拡大

    (卵黄加マンニット食塩寒天)

    この培地ではマンニット食塩寒天で観察される性状の他に、卵黄反応が確認できる。黄色ブドウ球菌は集落周囲にきわめて明瞭な混濁帯を形成する。

     

     

     

    (食塩卵寒天)

    コアグラーゼ陽性ブドウ球菌は鮮明な黄色またはレモン黄色の集落を呈し、集落の周囲が輪状に不透明化し、光沢をもつ真珠色の輪を形成する。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の集落は、真珠色の輪の形成および培地の不透明化は起こさない。

     

     

    (ブドウ球菌no.110寒天)

    直径12oの不透明、中心がやや隆起したS型集落を形成する。マンニットと乳糖が入っているので、色素産生が一層顕著

@型別法

コアグラーゼ型別:

黄色ブドウ球菌のつくるコアグラーゼの抗原性の違いによっ

てっ菌を区別する。

ファージ型別:

黄色ブドウ球菌に対して、感染しうるファージを多数集め、ファ

ージに対する感受性の違いから区別する。

黄色ブドウ球菌は20種類以上のファージにより溶菌されるが、

これらのファージは宿主域が決まっているので、特定のファージに

感受性のある菌株を群としてまとめると、T−W群に型別される。

エンテロトロキシン型別:

黄色ブドウ球菌のつくるエンテロトロキシン(腸管毒)

のく抗原性の違いから、どの型の毒素をつくっているか

で判定する。

腸管毒 enterotoxin

腸管毒は黄色ブドウ球菌の一部の菌株(ファージ型別V,W群)によって産

生されるに過ぎないが、この毒素を含んだ食品を食べると嘔吐、下痢などの

食中毒症状を起こす。抗原性によりA,B,C,D,Eの5種類の毒素に分

けられているが、いずれも、100度、3分の加熱に耐えるので、汚染され

た食品の調理によって毒性の失われることが少ない。

染色体のDNAの分子構造による型別:

黄色ブドウ球菌の染色体DNAを

とり適当な制限酵素で切断し、そのDNA

断片の大きさの違いから判定する。

 

 

(感染の予防)

院内感染の防止

病室、病院内各施設を清潔に保つ 感染の治療

元来ブドウ球菌はすべての抗生物質に感受性であったが、近年、それらに耐性の

菌が増加した。特に、ペニシリン耐性菌は、ペニシリナ−ゼというペニシリン分解

酵素を菌体外に産出してペニシリンを破壊する。

ペニシリン耐性菌は、黄色ブドウ球菌の7080%に達している。メチシリンに

対する耐性菌にはバンコマイシンが有効であるが、今やバンコマイシンの耐性菌も

出現、増加し、すでにメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)もバンコマイシン耐性

を獲得し、バンコマイシン耐性菌(VRE)も出現している。

 


(現状と対策)

近年では、新しい抗生物質が開発されても使用され始めてから耐性菌が出現するまでの期間がどんどん短くなっていて、多くの製薬会社は、ばくだいな開発費用が必要な抗生物質開発から撤退しようとしている。事実、過去10年程の間に新しい抗生物質は世界でも殆どみつかっていない。

 

(基本的な対策)

  1. 新薬の乱用を避ける
  2. 耐性菌が増加した原因の一つに、医療機関が新薬ばかり使ってきたことが指摘されるが、我が国の場合、「新しい薬ほど価格が高い」という薬事政策が新薬乱用に拍車をかけており、現在見直しが検討されている。

  3. 院内感染を起こした医療機関には、その正確な情報を早急に公表することをもっ
  4. と厳しく義務づける

    我が国では、公表を嫌がる医療機関が多く、検査・診療体制の整備も欧米に比べ

    て立ち遅れているといわれている。情報公開を法律で義務づけ、罰則も設ける必

    要があると思われる。

  5. 抗生物質の使用量を減らす

我が国の医療機関における抗生物質の使用量は、欧米の数倍に上るといわれている。適正使用の徹底が必要である。また、畜産、養鶏、魚介類の養殖現場で使用される抗菌剤の使用も厳密に管理する必要がある。欧米では家畜の50%からバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が検出され、しかもこれらのVREは人間のVREと同一のDNA型を持つことが分かっている。家畜で発生した抗生物質耐性菌が人間に驚異となる事実はもはや疑う余地も無い。

 

医療器具の滅菌の徹底

医療従事者の教育

病院内感染における感染源は医療従事者および患者であり、特に危険な区域は新生

児室と手術室といわれる。化膿創をもつ者だけでなく、保菌者(特に鼻前庭部にお

ける)が重要である。さらに病院内は抗生物質が常用される関係で、耐性菌が多い

ので一層厄介である。対策は保菌者や化膿創を有する人の配置換え、菌の除去、手

洗い、マスクの着用などである。