ウイルス性胃腸炎

下痢、腹痛、悪心、嘔吐、発熱、全身けんたいなどの症状を呈する感染性胃腸炎は、従来多くはサルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌などの原因によると思われていたが、いまはウイルス性のものがむしろ主であるとすら考えられるようになった。特に抗生剤の使用によって細菌性のものが減じたのでウイルス性のものが浮かび上がってきた。

ウイルス学的特徴

ロタウイルス(Rotavirus)

ウイルス粒子は直径65〜75nmの球状でエンベロープを有せず、40nmのcoreの内外二重のカプシド構造をもち、形態学的にはレオウイルス科に属している。ネガティブ染色したウイルスの電顕像が車輪状を呈するところからロタ(車輪の意)ウイルスの名が由来した。2本鎖RNAをゲノムとするウイルスで、そのRNAは11個の分節からなる。ヒトロタウイルスには6種の血清型が知られている。


ロタウイルス

 

SRSV(small round-structured viruses)

SRSVは近年の分子生物学的研究によりカリシウイルス科に分類され、粒径2832nm突起状構造物を有する球形のウイルス。SRSVNorwalk virusに代表される一群のウイルスの総称であり、1968年米国で発生した集団胃腸炎患者から検出され、人から初めて発見された胃腸炎ウイルスである。その後、このNorwalk virusSRSVを研究するうえでの基準(標準ウイルス)として位置づけられてきた。SRSVが食品媒介ウイルス性胃腸炎の主役を演じている理由として、少量(食品中に数個から100個程度)で感染し、発症率が高く、感染人口が多いことがあげられる。また、SRSVは、感染しても数ヶ月程度しか免疫が持続しないため長期免疫が獲得できなかったり、抗原性の異なったウイルスが存在するために、感染・発症を繰り返されることが知られている。SRSVは、一般に約2448時間の潜伏時間で発症する。SRSVは遺伝子解析の結果からノーウオーク様(GenogroupT)とスノーマウンテン様(GenogroupU)の2つに大きく分類されている。

SRSV(Norwalkvirus-like)

SRSV(Calicivirus-like)

 

ウイルス名

形態学的特徴

ウイルスの大きさ

ウイルスの分類

ウイルスの分類

SRSV

表面構造あり、不斉な辺縁

粒径2838nm

一本鎖RNA

Caliciviridae

ロタウイルス

二重の殻(車軸状)

粒径70nm

二本鎖RNA

Reoviridae