2.動向
STD
患者報告総数はサーベイランスが開始された1987年には44,470であった。その後増減があるものの1992年までは4万人台が維持されていたが、淋病様疾患の急激な減少により、1993年にはおよそ33,000となった。減少傾向はその後1995年まで続いたが、1996〜97年は再び増加傾向にある。
STD
のなかで、とくに増加しているのがクラミジアと淋病で、クラミジアは女性の患者が増加しているのが特徴。淋病は昔から変わらず男性に多い病気で須賀、先進国ではすでに過去の病気となりつつあるなか、日本だけが近年になって患者が増加しているのが目立ちます。
また、
HIV感染症を除くSTDの患者数は、女性のほうが多く、男性の1.4倍です。罹患率を見ると、女性は
10代後半からぐっと増えて、20代前半がピーク。男性が20代後半をピークに緩やかなカーブを描いているのに対し、女性は10代後半から20代前半の若い世代が群を抜いて多いのが特徴です。
STDとエイズ
エイズは
STDの中で最も新しい病気です。1997年現在の世界の生存中のHIV感染者は、3060万人と推測され、13才以上の感染者の40%以上は女性で、新たな感染者の大部分は25才未満の若者です。日本の感染者は、3〜4万人と推測され、年々増加しています。さらに、性器クラミジアなどの他の性感染症にかかっていると、性器や泌尿器などの粘膜に炎症が生じて、HIVに感染しやすくなることがあります。
エイズの原因であるHIVは、本来感染力の強いウイルスではありませんが、このウイルスが世界中に広まった一因として性感染症のまん延があるのです。
いまどきのセックス事情
今、日本で
STDが増加しつつある背景には、若い世代の性行動が関わっているといわれています。セックスの開始年齢がより低くなっていて、より多くの相手と交渉を持つという傾向が、その特徴です。開始年齢で見ると、
1999年の東京都の調査では、高校3年生でセックスを経験したと答えた生徒は、男子も女子も約4割。その割合は年々多くなり、しかも早まる傾向にあります。
また、厚生省の調査では、これまでに
5人以上の相手とセックスしたと答えた割合は、女性の場合18〜24歳が一番多く、約4割いました。以上の結果から浮かび上がる、
若い女性のセックス事情は、早い時期にセックスを経験し、24歳までに5人以上の相手と関係を持つ人が増えているということです。こうした活発で広範囲な性行動が、STDの流行に関わっているといわれています。
若い人の性行動のもう一つの特徴が、セックスはするけど、避妊に無関心であるか、もしくは避妊法を知っていても行動に移さないという傾向です。厚生省が行った調査では、過去
1年間のセックスでコンドームを全く、あるいは、あまり使わなかったと答えた人が、若い世代の男性で4割半、女性では3割強いました。STD
はコンドームで予防できるので、コンドームを使用しないでセックスするということは、避妊しないだけでなく、STDの予防もしていないということになります。活発にセックスしているのに、コンドームを使用しない
。と、いう傾向が若い世代にSTDが広がっている理由の一つといえるでしょう。
余談ですが、性感染症の感染力は一般的に強いです。種類や病期によっても異なりますが、
1回のセックスで感染する確立は淋病の場合、男性から女性へ80〜90%、女性から男性へ20〜25%と言われています。
佐賀県の高校生の「STD」意識
今年7月、佐賀市などの高校18校の1年生、
4457人を対象に「性」調査が実施されました。調査によると、性行経験者は
10.9%。男子が11.3%、女子は10.4%だった。性感染症にかかる可能性が「全くない」「低いと思う」との回答は全体の
68.3%。「中くらい」「高いと思う」は7.7%にとどまった。性行経験者でも「全くない」「低いと思う」が計67.5%にのぼった。佐賀中部保健所は「性感染症は他人事」、という意識の表われと見る。性感染症のうち、エイズについては
96.9%が知っていた。だが、その他の疾病については、クラミジア感染症が23.5%、毛じらみ症が19.1%、淋病が16.1%と、知識が浸透していないことがうかがえる。
参考:
http://idsc.nih.go.jp/iasr/19/223/tpc223-j.html http://www.kimec.ne.jp/AIDS/p1-02.html http://www.tokyo-eiken.go.jp/kansen/sti/index-j.html
STD
性感染症「もしも」「まさか」と思ったら…しっかり予防・治療・避妊/対馬ルリ子
/池田書店平成12年10月17日朝日新聞