狂犬病
Rabies
●狂犬病とは
狂犬病とは、狂犬病ウイルスによって中枢神経がおかされる、急性の感染症。狂犬病ウイルスは、イヌ、ネコ、キツネ、コウモリなど多くの恒温動物に存在する。ヒトが感染するのは、主にイヌにかまれたことによる。潜伏期間は、
3週間~3ヶ月とさまざまだが、普通は4~6週間である。ワクチンを接種しないと、命を失う病気である。日本では、1957年以降イヌの予防注射の徹底で発生していない。
●病原体
ラブドウイルス科に属する狂犬病ウイルス。媒介動物の脳、唾液腺からウイルス抗原が確認できる。
●症状
かまれた部位の位置などが潜伏期に影響を与える。
症状は
2~10日間の前駆症状から始まる。咬傷部位の知覚異常や疼痛で始まり、全身倦怠感、悪寒、発熱、頭痛等を覚える。次いで神経系の障害が現れる。不安、興奮、麻痺、せん妄等の症状である。この時期、舌の麻痺による、水を飲もうとしても飲めない『恐水病』の症状が現れる。
そして、全身痙攣、呼吸麻痺を起こし、呼吸停止、ほぼ
100%死亡する。
●歴史・予防・感染経路
狂犬病については、すでに前
300年に病気として記録されている。しかしどのようにして伝染するのかが分かったのは、1804年のことであった。84年には、フランスの細菌学者パスツールが、予防ワクチンを開発したことによって、狂犬病の死亡率は大きく低下した。パスツールが考えた予防の方法は、すこし形を変えて現在でも治療に使われている。感染が疑われる動物に噛まれた場合、最も最初に行うことは、石鹸などを使い、ただちに傷口を十分水で洗い流すことである。これにより、ウイルスの体内への侵入を出来る限り阻止するのである。
次にヒト抗狂犬病免疫グロブリンを傷口周辺と肩にわけて注射する。しかし、現在日本ではこの薬剤は製造も輸入もしていない。
さらに組織培養型狂犬病不活化ワクチンを、初回投与日を
0日として0,3,7,14,30,90日の6回投与する。とにかく発病するまでが勝負である。
海外渡航時および職業上必要な場合にワクチン予防をする。
またイヌへの狂犬病ワクチン接種、野犬の排除も対策の一つである。ヒトからヒトへの感染は知られていない。
吸血コウモリの棲息する洞窟に入っただけで感染した中南米での例もある。海外での狂犬病の流行と感染動物の種類をよく調べておく必要がある。
イヌやネコでは発症前から死亡するまでの全期間に感染力を持っている。
●現状
日本では、
1950年狂犬病予防法が施行され、飼い主の登録と予防注射が義務づけられた。そのほかにも予防のための努力がなされ、57年以降、狂犬病は国内では発生していない。日本以外でも法律で家畜のワクチン接種を義務づけている国は多く、イヌやネコなどのペットはほとんど免疫が出来ている。しかし野生動物からの感染は今でも世界各地に見られ、野生動物にワクチンを接種する方法がいろいろ考えられている。
※狂犬病を発症したら?
予後は不良で、発病すればほぼ
100%死亡する。特異的治療はなく、対症療法を行うしかない。
<参考文献>
http://www.pref.kyoto.jp/hokanken/k-center/wann.htm“狂犬病“
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