1.定義

・細菌感染による腎実質および腎盂・腎杯の炎症

・感染経路:多くは上行性感染(外尿道口周囲の細菌が膀胱および尿管を経由する感染)、その他に血行性感染、リンパ行性感染、侵

潤性感染

・分類:基礎疾患の有無、発症の様式により急性単純性腎盂腎炎、慢性単純性腎盂腎炎、慢性複雑性腎盂腎炎(急性憎悪)に分類。

※急性憎悪:複雑性腎盂炎で発熱、腰痛などの急性症状を呈する症状。

<尿路の基礎疾患>

尿路の停滞、尿路腫瘍、尿路結石、尿路異物、膀胱尿管逆流、尿路留置カテーテル、その他

※尿路の停滞:尿路奇形(狭窄、弁、重複、過剰、位置異常など)、尿路腫瘍、尿路結石(尿路外腫瘍、妊娠など)、機能的停滞(神

経因性膀胱など)、人為的停滞(麻酔、鎮痛薬投与など)

 

2.男女比・発症年齢等

<男女比・発症年齢>

比:女性に多い。

発症年齢:20−30歳代に多い。

<頻 度>

剖検材料のうち慢性腎盂腎炎の頻度は3−15%。

<疫 学>

本症の正確な疫学はいまだ不明確。

 

3.病因

急性単純性腎盂腎炎:大腸菌(約7割)、ブドウ球菌、プロテウス属、陽球菌等

慢性複雑性腎盂腎炎:大腸菌、緑膿菌、陽球菌、ブドウ球菌等

 

4.症状

  1. 臨床所見:高熱、頻脈、末梢血の好中球増加、赤沈の亢進。尿中に多数の白血球と起炎菌。
  2. 急性期:高熱、悪寒、戦慄、悪心・嘔吐を伴い、全身倦怠感など全身の症状が強く、腎部痛・腰部痛などもある。
  3. 慢性期:無症状のことが多く、軽度の腰痛、微熱などを伴うことがある。膀胱炎を合併した場合、膀胱症状も呈する。
  4. 慢性複雑性腎盂腎炎は、一般に症状は軽く、急性単純性腎盂腎炎は発熱(弛張熱)、腰背部痛、患側腎部付近に叩打痛、頻尿・

排尿痛が先行する事も多い。

 

5.治療

治療と管理の最終目標:腎機能障害の予防

<一般療法>

安静と保温および利尿を図る

<抗菌療法>

注射剤:

第2世代セフェム系(セファチアム、セフメタソールなど)、第3世代セフェム系(セフチゾキゾシム、セフォペラゾン、セフォジジム

など)、ペニシリン系(ピペラシリン)

経口剤:

ニュ−キノリン(フレロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンなど)、第2世代セフェム系(セフテラムピボキシル、セ

フォチアムヘキセチル、セフポドキシムプロキセチルなど)

 

6.看護

アセスメント

1. 症状の有無と程度

2. 症状による苦痛の有無と程度

3. 症状による全身状態への悪影響

4. 検査・治療の内容とその反応とその反応および苦痛の有無

5. 日常生活の状況

6. 疾患に対する患者・家族の反応

看護目標

1. 心身の安静と保温が保たれる

2. 症状が軽減・除去される

3. 全身状態への悪影響を最小限にすることができる。

4. 水分・電解質のバランスが維持される

5. 正しい薬の使用ができ、副作用をおこさない配慮ができる

6. 患者・家族の不安が軽減される

7. セルフケアを達成できる

8 再発の予防ができる

看護活動

1.観察:

バイタルサイン、発熱、悪寒・戦慄、頭痛、悪心・嘔吐、全身倦怠感、腰痛、尿混濁、下腹部不快感、残尿感など

2.心身の安静・保温:

心身の安静をはかり、室温・湿度、採光を調整して睡眠が十分とれるように配慮する

3.症状の軽減・消失:

・発熱・頭痛:氷枕・氷嚢の貼用、解熱薬・抗生物質の使用

・悪寒:保温と室温調整

・発汗:清拭、寝衣・シーツの交換、口腔の清潔

・腰痛・全身倦怠感:体位のくふう、あてものの使用

4.水分・電解質のバランスの維持:

・水分摂取(1日2〜3リットルを保つ)

・補液の管理

・水分出納の管理

5.薬の正しい使用と副作用の予防:

・薬の使用量、必要期間の継続、服用時間の適正をまもる

・薬物使用後の状態の変化、とくに副作用の出現の有無を観察する

6.不安の軽減:

炎症の原因を知り、心配のないことを説明する

7.セルフケアの達成:

・食事の指導:高エネルギー・高タンパク食とし、ビタミンを補給する。刺激性の食品は避ける。

・日常生活の指導:陰部の清潔、水分摂取の励行、体力の増進。

8.再発の予防:

・指示された薬は完治するまで服用する。

・水分摂取の励行

・からだを冷やさない。

・排尿をがまんしない。

・過労を避ける。