べん毛とは何か
担当者 武島
細菌の運動器官。現在見つかっている細菌の80パーセントは鞭毛をもって遊泳運動をする。微細構造および回転運動を行う点で、真核生物の鞭毛と異なる。鞭毛の数やその生え方は種によって異なり、周毛(大腸菌、サルモネラ)極性単毛(コーロバクター,caulobacter)側性単毛(根粒細菌)極性群毛(光合成細菌)体内群毛(スピロヘータ)鞘付き極性単毛(ビブリオ)などがある。鞭毛は必ずしも常時発現しているとは限らない。遊泳細胞と有柄細胞の二つの細胞形態に分化するコーロバクターでは柄の発現によって極性単毛が消失する。根粒細菌では毛根細胞内に侵入すると鞭毛発現が抑制される。海洋性ビブリオでは、環境の粘性によって極性単毛と周群毛の2種類の異なる鞭毛を発現する。また発見以来、非運動性細菌として知られてきた赤痢菌でも培養条件によっては鞭毛発現して運動性をしめす。環境条件による鞭毛発現の制御は今後の課題である。鞭毛は鞭毛繊維(flagellar filament)フック(hook)鞭毛モーターの三つの部分からなる機能上の類似から、それぞれスクリュー、自在継ぎ手、モーターエンジンに例えられる。鞭毛繊維は、フラジェリンとよばれるタンパク質が重合してできるらせん型の管状繊維である。長さは数十μmにも達する。環境の変化に伴い、らせんの巻き方を不連続的に変化する(多型変換)フックはフックタンパク質から構成され、ほぼ直角にカーブした60μmほどの管状繊維である。鞭毛モーターの本体は基部体とよばれ、十数種類のタンパク質からなる。鞭毛の大半は細胞外で構築されている。ところが、ほとんどのタンパク質がシグナル配列をもたないので、鞭毛タンパク質専用の輸送装置があると考えられている。鞭毛の構造形成には40以上の鞭毛遺伝子が関与している。これらの遺伝子は三つの群に分けられ、それらの間に制御の階層性がある。
真核細胞の運動器官。これには鞭毛と繊毛があるが、鞭毛は細胞あたり1から2本と数が少なく長いもの(数十μm)をさす。両者に微細構造の差はない。細菌の鞭毛とは名称は同じであるが、構成タンパク質および構造が異なる別のものである。
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