6.同調培養 synchronous culture

細胞周期や分裂と関係した生理学的研究のためには分裂の時期が同じになるような同調培養を行わなければならない。細胞の発育周期を同調させるには2つの方法がある。

  1. 一定のage または一定の大きさの細菌を集める。
  2. この方法では自然に増殖中の細胞を集めることができるが、回収率が悪いので多量の培養が必要になる。細胞の周期と大きさが比例する場合、つまり分裂直後には大きさが最小になり、分裂直前には最大になるときには、適当なろ紙を使ってろ過すると、ろ紙の上には大きな細菌が、ろ液には小さな細菌が集まる。またショ糖密度勾配やFicol 濃度勾配を作成して、その上に菌液をのせて遠心すると、小さい細胞ほど遅く沈降するので分画することができる。最近よく利用されているのは図で示されてあるメンブランフィルター法で、分裂直前の細胞を集める方法である。

    対数期の菌液をメンブランフィルターでろ過して菌を集め、次にフィルターを裏返して、培地を流し、はじめ膜に結合していない菌を洗い流してしまい、結合した細菌について保温しながら培地を流すと、分裂したばかりの菌だけが溶出してくるので、それを集めて研究に使用する。

  3. 倍地条件たとえば温度、栄養源、代謝阻害剤などを利用して、培養中のすべての細菌を一定の細胞周期にあわせる。

ところがこのやり方は発育途中で無理に止めることになり、自然に発生している菌とは生理的状態が異なる可能性がある。枯草菌の芽胞の発芽を同調的に行わせて、以後のDNA複製を同調させたり、アミノ酸飢餓や、クロラムフェニコールでタンパク合成を止めて、DNA複製の開始を阻止しておいて、次のDNA複製開始を同調させる方法がある。DNA合成開始が温度感受性の変異菌を使用したり、フェネチルアルコールでDNA合成の開始を止めておいた後、薬剤を洗い流して同調させる方法もある。

いずれにしても細胞周期の同調はだんだんと失われていくので、実験に利用できるのはせいぜい3回分裂までである。