<ポリオの感染予防法及び治療法について>
ポリオ患者
1960年以降のポリオ届出患者数と1962年から開始されたポリオサーベイランスによる典型的ポリオ届出数そ下の図に示す。
届出患者、典型的なかん者は急速に減少し、最近
ポリオウィルス
生ワクチンが開始されて数年後から、患者からは野生強毒株ポリオウィルスは分離されなくなった。
1971
年の1例を最後に野生株ウィルスは見られなくなり、最近分離されるポリオウィルスは、すべてワクチン由来株のみであって、野生強毒株は我が国から根絶できたと考えられる状況にある。
ポリオウイルスワクチン
ポリオ(急性灰白髄炎、小児麻痺)の予防には、不活化ウイルスワクチンと弱毒生ポリオワクチンの二種類がある。ワクチンを用いることで、先進国ではポリオウイルスは制圧されたが、発展途上国での制圧が今後の課題として残っている。
inactivated virus vaccine, Salk vaccine
ソークによりサル腎臓組織培養法を用いて開発されたもので、ホルマリンによりウイルスを不活化している。ポリオウイルスの3つの型(T,U,V型)のものを、注射する。最初に作られたワクチンで北欧で使われている。ウイルスを不活化しているという点では、安全といえる。
live attenuated virus vaccine, Sabin vaccine
ウイルスを継代することで弱毒化株が作られた。セービンにより作られたものが、我が国を含め広く用いられている。消化管で増殖することから、
IgA抗体産生と消化管への分泌を引き起こすので、消化管抵抗性を生じ、消化管を介しての野生型ウイルスの広がりを防ぐ。つまり地域での野生型ウイルスの排除を起こす。ワクチン株の変異による毒力獲得の可能性が欠点として存在する。より安全なワクチン株の作製が、遺伝子操作の手法を利用して試みられている。日本では野性株は消滅した状態であり、ときどき報告されるポリオ患者は、ワクチンとの関連が推定される場合がある。生ワクチン接種後の医原性ポリオはU型とV型が多い。ポリオの病原体は抗原の異なる3種のウイルス(T,U,V型)であるため、各型のウイルス感染に対し予防できるように、ワクチンは各型の弱毒性生ポリオウイルスを混合した三価生ワクチン(液状製剤)である。
抗体保有状況
下図はワクチンのみによって得られた免疫の保有状況を示すものである。これを見ると、T型の中和抗体保有率は
100%に近いが、U型,V型は低い傾向にある。このために、ワクチン投与回数を増やし、小学校入学前後の頃に、3回目の投与を行ったほうがよいのではないかといわれるようになった。しかし、その後、ワクチン投与がドロッパーにより1適注入する方式に変わったためもあって、各型の抗体獲得率は良好となっている。
接種方法
我が国でははじめ希釈したワクチンを
1.0mlずつスプーンで飲ませる方法が取られていたが、1980(昭和55)年1月から、経口投与器機(小ピペット)により1回0.005mlずつ口腔内に注入する方法に改正された。
免疫効果
投与されたワクチンウィルスは腸管内で増殖し、腸管に強い局所免疫を与えるのと同時に、血中の中和抗体価の上昇をみる。血中抗体は約
4週間でピークに達し、長年月にわたって免疫は持続する。一回だけの投与では、免疫、特にT型とV型に対する免疫が不十分のことがあるので、必ず2回投与を行うように留意する。(2回の投与による免疫獲得率は、T型とU型で90%以上、V型で80%以上である。副反応
ポリオ生ワクチン経口投与による副反応はほとんどなく、安心して投与しうる。ごくまれに麻痺症例が見られることがある。接種後
4日から30日の間に臨床的にポリオの症状を示す例では、ワクチン投与後であるため、腸管内からワクチンウィルスが検出され、血中抗体価の上昇も見られるので、ワクチンとの因果関係が否定できない麻痺例として取り扱わざるを得ない。
禁忌および注意
生ワクチンであるので、生ワクチンに関する一般的な禁忌であるところの免疫生産機能に異常ありと想定される場合は、投与を行わない。その他、下痢患者にも治癒してから投与する。これも下痢の中には腸管内系ウィルスなどによるものがあり、その場合はワクチンの効果が期待できない可能性があるためである。なおこのワクチンには副反応もなく注射もないので、生ワクチン服用当日の入浴はさしつかえない。