治療と予防

 

単純性ヘルペスウイルス感染症の治療

前項で述べたように、単純ヘルペスウイルスには1型と2型がある。1型単純ヘルペスウイルス(HSV1)により引き起こされる角膜ヘルペスには、IUDR(イドクスウリジン)TFT(トリフルリジン)ACV(アシクロビル)Ara-A(ビダラビン) IFN(インターフェロン)等の点眼が有効であるが、同ウイルスによる皮膚・粘膜のヘルペスには効果がなく、全身投与は副作用が強い。また、副腎皮質ホルモンは一般に禁忌である。

皮膚や2型単純ヘルペスウイルス(HSV2)による生殖器のヘルペスに対してはACV(アシクロビル)の内服(錠剤またはカプセル)、静注、外用(軟膏、クリーム)が有効である。

また、HSVの脳炎、新生児ヘルペスに対しては、ACVAra-Aが用いられ、救命が期待できる。

Znイオンには抗HSV作用があるので、亜鉛華澱粉、チンク油などZnOを主成分とする既存の外用剤も安全で、患部の乾燥効果も兼ねていて有効である。

 

種類

主な病気

病気の特徴

生物学的性質

アルファヘルペスウイルス亜型

HSV

主に上半身

口唇ヘルペス

顔面ヘルペス

しばしば再発

増殖が早く神経細胞()に潜伏感染している。

HSV2

主に下半身

性器ヘルペス

腎部ヘルペス

しばしば再発

水痘・帯状疱疹ウイルス

全身

帯状疱疹

特別な場合以外再発しない

 

 

水痘・帯状疱疹の治療

水痘は伝染性がきわめて強いため(しぶき感染、接触感染)、感受性が高い免疫不全児(免疫抑制剤や制癌剤の投与中の患児を含む)が患者や感染源に接触した場合には予防の目的で直ちに、発病した場合には治療の目的で早期に、ヒトの高力価抗体(zoster immune globlin ,ZIG)を与えればよいが(受動免疫)ZIGは一般に入手し難い。また、モルモット腎細胞で継代することにより弱毒化し、ヒト胎児肺細胞で増殖させた弱毒生ウイルスワクチンが健康児および基礎疾患をもつハイリスク児にも有効であり、任意接種が行われている(能動免疫)。その他、ACVAra-Cが有効で、主に重症例や帯状ヘルペスによる神経痛の軽減に用いられている。

 

サイトメガロウイルス(CMV)による感染症の治療

抗ウイルス剤としては易感染性宿主におけるCMV感染症を対象にガンシクロビルが認可されている。臓器移植後に、CMV抗体が高力価の免疫グロブリンやインターフェロンを投与することにより、CMV肺炎を防止できる。

抗ウイルス剤には塗布薬、経口剤、点滴剤がある。また麻酔科では神経ブロックを行うこともある。

 

予防方法

多くの人は免疫を持っているが、ヘルペスは伝染病であるため、人に感染させないよう注意することも必要である。乳幼児は空気感染が多いが、成人は接触感染が多く、口唇に水疱ができている時は、タオルを共用したりキスしたりといったこと、また性器ヘルペスが性病だということを認識し、HSV2に感染している時は性交をしないなど、感染しないための最低限の知識を持っていることも必要である。また。新生児は母体が感染していると出産時に産道感染することもあり、帝王切開で出産する。

また、ヘルペスウイルスは1度感染すると一生とれずに体内の細胞に潜んでいるため、治療に加えて再発防止のために、日常の生活習慣を向上させ、体の抵抗力を高く保つよう留意する必要がある。

 

<参考文献>

戸田新細菌学

http://www.bekkoame.or.jp/~ms-7/meniere.html ヘルペスウイルス感染説

http://www.aids-chushi.or.jp/c4/nif/113.htm 単純性ヘルペスウイルス感染症の治療

http://www.nms.co.jp/child/child13.html ヘルペス性口内炎

http://www.nara.med.or.jp/kansenmokuji2/hosshin/index.html 突発性発しん