すべての生物、そしてそれを構成するすべての細胞は、共通の祖先細胞から自然選択により進化してきたと考えられている。進化には2つの必須過程がある。
である。
分子から最初の細胞へ
細胞は、約35億年前の地球の、科学的平衡からは程遠い環境の中で行われた分子間の自然な反応により生じたと思われる。現存の細胞にとってタンパク質、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)などが最も重要な構成成分である。タンパク質は20種類のアミノ酸からできており、RNAとDNAはそれぞれ4種類のヌクレオチドからできている。これらの多量体は様々な反応によって生成したと思われるがその中でも生命体にとって重要な機構は自己触媒系の発達である。原始生命が生まれるには、様々な分子の組み合わせでたとえわずかでも触媒分子が直接間接に触媒分子を作るようでなくてはならない。自己を増やす性質を持った触媒の出現は有利だから、最も効率よく自己再生産をする分子は他の物質を作る素材もとりあげてしまい、有機物質の複雑なシステムが発展したのだ。
RNA分子集団の進化
RNA分子は自分の複製の鋳型となるだけでなく、色々な触媒活性をもつことができる。なによりも、適当な塩基配列をもったRNA分子は、別の配列をもったRNA分子の複製の触媒として働くことができる。RNA分子がこのような特別な能力に恵まれていたおかげで、この分子は生命の起源において中心的な役割を果たしたのだ。RNA分子には特別な性質が2つある。複製して伝えることのできる塩基配列の情報、ポリヌクレオチドをもっていること、特異的な折りたたみ構造をとって他分子と選択的に相互作用し、周囲の条件にどのように対応するかを決めることである。
タンパク質合成機構の進化
今から35ないしは40億年前に、RNA分子の自己複製糸が簡単なポリペプチドなどの有機分子と混合して進化を始めた。ポリヌクレオチドの構造は情報の貯蔵と複製には適しているが、触媒能はポリペプチドに比べると限られており、現在の細胞のポリヌクレオチドの複製は完全にタンパク質に依存している。生命の起源において、その環境内で有用なポリヌクレオチドの合成を指令できるポリヌクレオチドは、生存競争の中で非常な優位を占めたのだ。こうして新たなタンパク触媒が蓄積してより効果的で複雑な細胞が発達すると、そのような細胞に必要な多量の遺伝情報を蓄えるために、二重らせん構造のDNAが、いっそう安定な分子としてRNAにとってかわった。