Workshop Vol.2
“肝炎ウィルス”
Member
97061 藤健太郎 97066 中村秀裕97062 戸田真理子 97067 新名徒子
97064 富山裕介 97068 西原正志
97065 中尾祐子 97069 林田桃子
GIO
肝炎ウィルスを総合的に理解し、将来医療人として臨床で応用できるような知識を獲得する。
SBO
・肝炎ウィルスの種類を説明できる。
・肝炎ウィルスの形態・機能を説明できる。
・肝炎ウィルスの増殖方法を説明できる。
・感染経路と発病について説明できる。
・治療法を説明できる。
・インターフェロン療法について説明できる。
・肝炎治療薬
BDDについて構造を理解し説明できる。
肝臓を主な増殖の場として、その結果宿主(ヒト)に肝炎を起こさせるウィルスを肝炎ウィルスと呼ぶ。
肝炎ウィルスにはこれまでA型肝炎ウィルス(HAV)、B型肝炎ウィルス(HBV)、さらにHBVに関連したデルタ肝炎ウィルス:D型肝炎ウィルス(HDV)が明らかにされていた。輸血後に高頻度でみられた非A非B型肝炎(NANB肝炎)は臨床的にウィルスの存在が推測されていたが、ウィルス粒子の発見やウィルスの同定はされていなかった。しかし、遺伝子工学の著しい進歩に伴い、NANB肝炎ウィルスの遺伝子構造がまず解明され、続いてウィルス学的診断方法が開発された。したがってこれまでNANB肝炎ウィルスといわれていたものが新たにC型肝炎ウィルス(HCV)と命名されるに至った。さらに、感染経路はHAVと類似しているがウィルス学的にはまったく異なったウィルスも発見されE型肝炎ウィルス(HEV)と呼ばれるようになった。
最近になって第6番目のウィルスとしてG型肝炎ウィルス(HGV)が同様に遺伝子学的に発見された。これはHBV、HCVと同様に血液を介して感染する。少なくともヒトの肝炎にはこれらの6種類のウィルスが同定され、分類されている。(表参照)
(1)
A型肝炎ウィルス直径27nmの球形のRNA型ウィルスである。(図1参照)
(2)B型肝炎ウィルス
直径42nmの球形の粒子である。その粒子は二重構造になっていて、表面の部分をHs抗原と呼ぶ。その中にはHBc抗原とよばれる蛋白があり、さらにそのHBc抗原の中に、HBe抗原とよばれる蛋白がある。このHBe蛋白の中にウィルス本体であると考えられるデオキシリボ核酸(HBV−DNA)、さらにウィルスの増殖に必要なDNAポリメラーゼがある。(図2参照)
(3)
C型肝炎ウィルスRNA
型のウィルスである。(4)
D型肝炎ウィルス小型のRNA型ウィルスでB型肝炎のHBs抗原がないと生きられない。
(5)
E型肝炎ウィルスRNA
型のウィルスである。(図1)A型肝炎ウィルス(免疫電子顕微鏡法)
(図
2)B型肝炎ウィルス
肝炎ウィルスの増殖様式はウィルスの種類によって異なる。A型肝炎ウィルス(HAV)、E型肝炎ウィルス(HEV)、C型肝炎ウィルス(HCV)はウィルス由来のRNAポリメラーゼの働きにより、一鎖RNAを介してゲノムRNAを合成している。B型肝炎ウィルス(HBV)は、唯一のDNA型の肝炎ウィルスであるが、これは、通常のDNAウィルスとは異なった複製様式を有する。DNA鎖からいったんプレゲノム(pregenome)とよばれる3.5kbのmRNAを合成し、それをウィルス自体の逆転写酵素活性により、DNA鎖に変換したのち、DNAポリメラーゼ活性により+鎖DNAを合成し、最終的に2本鎖環状のDNAを複製するという複雑な過程を介して増殖している。
これらの肝炎ウィルスは宿主の肝細胞内で増殖し、胆汁中に排泄され、腸管を通って糞便中に排泄される。
A型肝炎
HAV
に汚染された水、食物により経口感染し発症する。具体例では、生ガキあるいは不十分に加熱料理されたカキなどの貝類の摂取から発症する場合が多く、親から子への感染経路をとる。生ガキは汚染された水の中のHAVを濃縮する働きがあると考えられ、カキの体内でHAVの増殖はないと考えられている。日本産のカキにのみならず、最近では輸入汚染ガキがHAVの感染源として問題となっている。乳幼児の特殊な状況、心神障害者施設内などでは、糞口感染から小流行として生じる場合が多い。親子間などでの接触感染は急性期に唾液中に排出されるHAVからの可能性が高い。B型肝炎
・・・・・・輸血、母子間性行為C型肝炎
・・・・・・輸血、母子間性行為D型肝炎
・・・・・・輸血、性行為E型肝炎
・・・・・・経口(A型肝炎と同様)G型肝炎
・・・・・・輸血
〈急性肝炎〉
症状
:急に食欲不振、全身倦怠感、発熱、嘔吐、尿の濃染、粘膜・皮膚の黄疸。治療法
:効果のあることが確立している治療法はない。入院して安静につとめるとともに、食欲がない場合は点滴を行なって体力の維持に努める。劇症化しないかぎり、積極的な治療はしないことの方が大半である。予後
:急性肝炎は、ほとんどの場合数カ月で症状はおさまる。問題は、1.
肝炎が劇症化した場合に死亡することがあること2.
急性肝炎から慢性肝炎に移行する場合があること です。〈劇症肝炎〉
症状
:急性肝炎や慢性肝炎の経過中に重症化し肝不全兆候を示したもの。2大症状は、肝の合成能の低下を反映する血液凝固能の障害とその結果としての 出血性傾向、肝の解毒代謝能の低下を反映する昏睡。
治療法
:血漿交換療法、GI療法、ステロイド療法、抗ウイルス療法。血漿交換療法:アルブミンや新鮮凍結血漿(FFP)を投与する。昏睡起因物質やその他の毒性物質の除去、肝合成能の代償として働く。
ステロイド療法:ステロイドは種々のサイトカインの合成・分泌抑制作用や接着因子の発現抑制作用を持っている。劇症肝炎の発症初期には、サイトカインが病態に関与していることが分かっているので、ステロイド投与は、発症初期で、高サイトカイン血症の時期で、肝細胞死がいまだに進行している場合に限って行われる。
全身管理:
2経口摂取:原則として絶食絶飲
3栄養管理:中心静脈栄養(ブドウ糖、水分、電解質、ビタミン、微量元素、分枝差アミノ酸)
4呼吸管理:必要の時気管内挿管、気管切開、人工呼吸器装着
5循環管理:心電図、血圧のモニタリング、アルブミン、時にドパミン製剤、ノルアドレナリン製剤
〈慢性肝炎〉
治療法:最近インターフェロンが使われるようになり、症状の軽いほど効果的です。インターフェロン療法を行えない場合はや、効果が見られない場合は、従来の治療法、いわゆる維持的療法を行います。ウイルスを排除することはできないが、肝細胞の破壊を防ぐことで、病気の進行を抑える。維持的療法で用いられる主な薬は、グリチルリチン製剤、ウルソデスオキシコール酸(肝臓に作用して、胆汁の分泌を促す)、小柴胡湯で、これらの薬を組み合わせて治療する。しかし、これらの薬は一生服用し続けなければならない。
(1)インターフェロンとは
もともとインターフェロンは、人がウイルスに感染したときに、体内で作られる物質で、体内に侵入してきたウイルスの増殖を抑える働きをもっている。
現在、治療用の薬として用いられるインターフェロンは、生物学的製剤(ワクチン)で人工的に作られたもので、開発当初は"夢の特効薬"といわれ、がんも治るのではないかと期待された。しかし、残念ながらがんは治せず、C型肝炎にしてもすべてが治るわけではないということがわかった。さらに、副作用があることも判明した。
しかし、インターフェロンがC型肝炎の治療に大きな実績を挙げているのは確かである。インターフェロン療法を行った患者の約30%は、ウイルスが消失して病気が完治している。完治しなくても、ウイルスが減少し、肝機能が正常化した患者の数を合わせると、約40%の人に効果があったことになる。
この効果は、肝臓がんの発生率にも反映されている。インターフェロンがなかった時代に比べると、肝臓がんの発症率は大幅に下がっている。
つまり、インターフェロンには肝炎の治療だけでなく、肝硬変や肝臓がんへの進行を防ぐというたいへん重要な効果がある。
(2)インターフェロン療法
まず血液検査で、GOT・GPTなどを調べて、肝機能をチェックし、さらに肝生検(細い針を肝臓に刺して、組織の一部を採取する)を行って、肝臓の状態を確定診断してから行われる。インターフェロンの投与方法と副作用は次の通りである。
1.
投与方法一般的には、最初の2−4週間、インターフェロンを毎日注射し、それが終わると週3回の注射を16週間続けるという方法がとられている。虎ノ門病院では、インターフェロンを毎日8週間注射し、その後週2回ずつ16週間続ける方法を行い、効果を上げている。
2.
副作用インターフェロン療法の初期には、発熱や悪寒など、風邪によく似た症状が現れる場合がある。後期にはうつ状態になる、視力が悪くなる、タンパク尿がでる、皮膚に発疹が出るなどの症状が出ることがある。しかし、治療が終われば、ほとんどの症状は治る。
(3)インターフェロンの効果の予測
インターフェロン療法を行っても、効果がある人とない人がいる。この理由を探ろうと研究を重ねるうちに、HCVウイルスにもさまざまなタイプがあることがわかり、そのタイプを調べることに事で、インターフェロン療法の治療効果の予測がつくようになった。そこで、現在ではHCVウイルスのタイプや量を調べ、さらに患者の年齢や肝機能の状態も参考にして、治療方針を立てる。
1.HCV
ウイルスとタイプ現在わかっているHCVウイルスのタイプは、6グループ28種類ある。このうち、日本で見られるのは、主に1b・2a・2bというタイプである。日本人に最も多いタイプは1bだが、インターフェロンの効果はあまり高くない。インターフェロンが最も効果的なのは、2a・2bのタイプである。
さらに、これらのタイプの中でも、ウイルス量が多い人と少ない人がおり、少ない方が、インターフェロンの効果が高くなる。同じタイプでも、ウイルス量でインターフェロンの治療効果は大きく変わる。
1b
で高ウイルス量の場合、治癒率が非常に低いことがわかる。ただし、この場合でも8%の患者は治癒している。この点に着目して、さらに研究を重ねたところ、ウイルスも変異することがわかった。ウイルスは、「野生株」から「変異株」へと変異度が大きくなるにつれて、だんだん弱くなった。つまり、1bで高ウイルス量でも、ウイルスの量が極端に多いのでなければ、ウイルスの変異度が大きいほど、ウイルスは弱く、治療効果が高くなるというわけである。したがって、ウイルスの変異度が大きい場合は、インターフェロン療法を選択する。ウイルスのタイプや量、変異度は血液検査で調べることができる。
2.
患者の年齢C型肝炎の進行は非常に緩やかである。たとえば、65歳で軽い慢性肝炎の人であれば、肝硬変になるのは100歳くらいになったときである。そう考えると、副作用や肝臓の予備能力の問題もあるので、無理にインターフェロンを使う必要はないといえる。そのため65歳以上の高年齢者にはあまりインターフェロン療法は用いられない。
3.
肝臓病の進行度インターフェロン療法は、慢性肝炎の患者だけに行われ、症状の軽いほど効果的である。肝硬変の患者にインターフェロンを使用すると、全身から出血する危険性がある。
・BDDとは
BDD
は(Biphenyl Dimethyl Dicarboxylate の頭文字をとり略称とした)は、1977年北京にある中国医学科学院薬物研究所「Institue of Materia Medica, ChineseAcademy of Medical Sciences」(現在の名称は北京協和薬廠「Beijing UnionPharmaceutical Factory」)によって、B型肝炎等のウイルス性慢性肝炎治療薬として開発され、強い抗炎症作用とウイルス抑制作用の両面があると云われている。このBDD 開発は、チョウセンゴミシの実を乾燥させた喘息などの生薬「五味子」が肝炎にも効果があると云うことからスタートした。エチルアルコールを使用して抽出した七種類の物質を動物実験し、特に有効な物質Biphenyl Dimethyl Dicarboxylateを発見し、この化学合成に成功、それを使用して臨床試験が中国各地の病院で行われ好成績を挙げまた特別の副作用もないことが実証されている。中国ではこれ迄に慢性遷延性肝炎、慢性活動性肝炎そして慢性ウイルス性肝炎及びこれら肝炎による肝硬変等の病例に広く投与され、その副作用も認められず、又その治療効果は甚だ良好であった報じられた。現在中国北京で販売されいる
BDDの丸薬は黄色に赤色が混じった色になっている)。BDD錠剤もあるが、薬学的研究では錠剤に比べて丸薬の方が人体への吸収率が3倍もあり、その効き目の差がはっきり証明されているらしい。中国ではこの丸薬を滴丸(Pilules)と呼んでいる。
・BDDの入手方法について
この
BDDは日本では未承認の薬であり、日本では国内販売が禁止されている。従って、この服用を希望する人は法律である薬事法を遵守し、自己使用目的のためにのみ中国より直接購入することができる。しかし、これを服用する人は、あくまで自己の責任とリスクで服用する必要がある。服用するかどうかの判断基準の一つである安全性などに関する資料やデータは、現在ではかなり蓄積されて来ている。尚、このBDDは非常に安い薬で、一容器(小さなプラスチック製で500粒入)当りで日本円に換算しても200円程度のものである。500粒で一ヶ月の服用には十分と考えられる。
・BDDによる治癒経緯の概要(1985年に心臓外科病院で手術をした人の例)
<服用前の状態>
手術10日後には輸血による肝機能障害があらわれ、当時は非A非B型肝炎(この時の診断名。その後C型肝炎抗体検査方が確立されC型肝炎抗体が確認された。従って以下"C型肝炎"と呼ぶ)と診断された。
退院後GOT/GPT値が急上昇したため、再入院しその治療を受けた。
3カ月後退院し、グリチルリチン療法を継続した。
しかしGOT/GPTは150〜200を上下するなど不安定な状態であった。
<服用後の状態>
BDD服用1ヵ月後の検査でGOT/GPTは劇的に下がり60〜70の数値となった。それから2ヵ月月後のGOT/GPTは正常値まで下る結果となった。この後もグリチルリチン療法とBDDの服用を3ヵ月間継続し、勿論この間のGOT/GPTも正常値であった。
このように長期間
GOT/GPTが正常値の状態を維持することが出来たため、グリチルリチン療法は中止し、BDDだけの服用をその後も継続した。ただBDDの服用量をこれまでの量から少し減らして3ヵ月間服用を継続してみた。この間毎月の検査でもGOT/GPTは正常値を維持することが出来た。そしてこの3ヵ月経過後にはBDDの服用も完全に中止した。BDDの副作用は、服用間もない頃は多少胃がむかむかする程度の症状があったが、BDDの量的調整でこの症状もなくなった。またこれ以外の自覚症状は全くなく、血液検査上でも異常な検査数値を示す項目もなかった。現在も継続して2ヵ月毎の血液検査を行なっているが、GOT/GPTは正常値を維持している。
おわり
(参考)
http://www.cty-net.ne.jp/~shige/main/index.html;肝炎全般 http://www.nagano-eikouken.or.jp/jyoho/h10/h10_9_2.html;A型肝炎 http://www.ahs.kitasato-u.ac.jp:8080/docs/ts/html/note/di00006.html;インターフェロン