Enteroaggregative Escherichia coli について

グル−プ 12

                  98074 三根 大悟  98077 宮原 貢一

                  98075 三宅 修輔  98078 村石 懐

                  98076 宮田 恵里  98079 村上 郁

 

GIO 発展途上国、先進国のどちらでも流行し急性かつ症状の重い下痢を引き起こす

凝集付着性大腸菌についてグル−プ学習を用いて理解を深める。

 

SBO 1.凝集付着性大腸菌の研究の歴史について学ぶ。

2.凝集付着性大腸菌を組織病理学の観点から学ぶ。

3.凝集付着性大腸菌性の下痢の臨床的特徴について学ぶ。

4.凝集付着性大腸菌性の下痢の診断方法について学ぶ。

5.凝集付着性大腸菌と下痢の結びつきについて伝染病学的研究により学ぶ。

6.凝集付着性大腸菌と栄養失調の関連性について学ぶ。

 

凝集付着性大腸菌

1987年に初めて発見されて以来、発展途上国や、最近では先進国でも、凝集付着性大腸菌(EAEC)は、ますます下痢の媒介物と考えられるようになってきた。

私達は、EAECの病原性を裏付けるデータを研究して、臨床や免疫的特徴を議論し、EAECの最近の状況を要約する。

 

歴史

1920年以来、大腸菌は下痢の媒介物として関与していると思われていた。1979年にCravio et alが大半の腸管病原性大腸菌(EPEC)は、培養すると

HEp−2細胞に付着すると発表した。ひきつづいて、EPECでない、多くの大腸菌もHEp−2細胞に付着することが分かった。しかし。粘着表現型は、EPECによって引き起こされるものと明らかに違った。EPECの粘着表現が局所的であるのに対して、非EPEC型は拡散していた。拡張する粘着性菌株は、最近2つの表現型に分類する事が出来る。集合体になるものと、本当に拡散するものの2つである。サンディエゴやチリでは、集合体になる方だけが、小児下痢と結びつけられて考えられている。研究員は2つの独立した分類を提唱している。EAECと均一付着性大腸菌(DAEC)である。同時にメキシコでは、EPECでない菌と、HEp−2粘着性菌株は、子供と旅行者の下痢に関係していると考えられている。これらの腸粘着性菌株は最近、EAECまたは拡散性粘着大腸菌に分類されるようになった。こうしてEAECは、今は、熱不安定性な、もしくは熱に安定な腸毒素を分泌せず、集合体でHEp−2細胞に付着する大腸菌だと定義さらている。

この定義は、共通の表現型を示す因子を含む病原性もしくは、非病原性のコロニーの両方を含むかもしれない。

1   HEp−2細胞で細菌を3時間培養した後のHEp−2の粘着パターン集合体の分析。HEp−2細胞の表面の特徴はガラス基層であるということです。

 

発病学

 組織病理学

EAEC株菌は、この動物の下痢を引き起こすか、引き起こさないかに関係なく、純粋隔離群の粘着上層に付着する。これらの研究により、腸管上皮には粘液分泌を刺激する杯細胞の穴があることが分かった。EAEC菌株は試験管内の環境では子供の腸粘膜に付着する。また、細菌はバイオフィルムを含む粘液によって包まれている。2つの更に詳しい観察により、病原性EAECにおける粘液の役割が判明した。EAECは試験管内のモデルでウサギの粘液に付着し、自発的に生成したEAEC菌株はムコイドを排泄する。

粘液バイオフィルムの形成は、もしかするとEAECの下痢をつかさどる遺伝子や、継続的コロニー形成や下痢に寄与しているかもしれない。

2 集合バクテリアや 粘液を含むバイオフィルムは、 凝縮付着性大腸菌株 042 になりそして3日後には、死滅する。. この株は下痢を引き起こさない。.

 

 

 

 

 

特徴的粘液バイオフィルムの形成に加えて、多くのEAEC菌株は、腸管粘膜において細胞障害を引き起こす。ウサギやラットの回腸のループでのEAEC菌株の感染は、破壊的病変がおこることが、光学顕微鏡によりはっきり分かる。EAECは、絨毛の短縮化や絨毛の先端の出血性壊死、また浮腫による穏やかな炎症反応などを引き起こす。透過型電子顕微鏡は、正常な微絨毛の構造や腸cytesの浸潤が起きてない事を示す。

光学、電子顕微鏡の両方とも、EPECの特徴である、付着したり、病変をけすことのない粘着性細菌をうつした。粘膜のダメージは、メキシコ市病院の栄養不足病棟で急増しているEAECによる持続性下痢により死んだ患者の回腸の標本を見れば分かります。この効果はIVOCモデルでも見ることが出来ます。

確かにEAEC菌株は、試験管内でT84細胞(人の腸のガン)に細胞障害を引き起こす。

試験管内モデルで、EAECは、微絨毛膜に小胞化を引き起こしたりする。この現象は、空砲形成の増加や周りの細胞質からの核の分離などに、付随しておこる。

ダメージはEAECが付着した細胞した細胞の付近が最も顕著である

 

定着

EAECの腸の粘膜への定着については非常によく研究されている。aggregative adherence fimbriae I (AAF/I)と呼ばれる柔軟に変形できる束状の直径2〜3nmEAECの線毛構造は、HEp-2の侵入とヒトの赤血球の凝縮をEAECの菌株の中で成立させる。AAF/Iの遺伝子は9kbの介在DNAによって分離される60MDaのプラスミドの上に存在する2つの遺伝子のかたまりによって組織される。Region 1の遺伝子は線毛の構造そのものを符号化し、Region 1のかたまりのヌクレオチドの配列分析はAAF/Iは定着因子(adhesin)のDr 種に関係していることを示唆している。Region 2の遺伝子はDNAを束ねる働きをするタンパクのAraC 種に属するAAF/Iの記号の転写触媒(AggR)を符号化している。AAF/I 線毛は束状の線毛であるがtypeclassと呼ばれる線毛との相同関係は示さない。

 

 

図3 培養中のT84細胞におけるEAEC菌株042の影響

分極したT841つの層を洗い、042106CFUを植え付け37℃で6時間培養した。透過型電顕での画像にはバクテリアが内在することなくT84細胞の先端部の表面に付着するのが確認できる。頂点の刷子縁は消滅し、細胞は膨らんで最終的にはその層から押し出される。

Bar, 1 mm.

AAF/IIと呼ばれる2つめの線毛構造も確認されている。それはAAF/Iとは異なったものであるが互いに関係している。AAF/II遺伝子の挿入性突然変異体はIVOCではそれ以上結腸粘膜に付着しない。DNA分析調査ではAAF/IAAF/IIはそれぞれ少数のEAEC菌株にしか存在しないことが示されており、従ってEAECの腸への定着は毒素原生大腸菌(ETEC)と同様に複数の異なった線毛抗原のうちの一つかそれ以上によって成立する。

 

幾つかのEAEC菌株では、AAAAF線毛抗原以外の要因でも起こりうる。線毛外粘膜タンパクや38kDa外粘膜タンパクはその例である。

 

耐熱性毒素(ST

Savarino et al.EAST1と呼ばれる耐熱性毒素の4,100Daの同族体を符号化するORFを確認した。それは38のアミノ酸からなるタンパクで4つのシステイン残基を特徴づける(E. coli STでは6つ)。ヒトの病気におけるEAST1の役割はまだ立証されていない。しかしながらウサギの粘膜のUssing chamberモデルを用いた実験ではEAST1のクローンはショートサーキットの増加をもたらした。ボランティアに与えられた4つの菌株のうち下痢をもたらしたものももたらさなかったものもEAST1を分泌していた。

 

EAST1はおおよそ40%のEAECの菌株に存在し、またほぼ同じ割合で非病原性大腸菌の菌株にも存在する。他の大腸菌の種類、特にEHECではEAECより複雑なEAST1が高い頻度で存在する。

 

侵入

幾つかのEAEC菌株は生体外で腸の上皮細胞に侵入する。しかしながらヒトの腸の移植片はEAECを内在しない。人体への侵入での役割に関する臨床的な証拠は不足している。

 

その他の毒素

EAECによる下痢がメキシコで発生した際、Eslava et al.が発病した患者の血清内からおよそ108kDaのタンパクを確認し、それはラットの回腸のループモデルで腸の細胞の剥離を引き起こした。このタンパクを符号化しているプラスミドで運ばれる遺伝子のDNA分析調査はこの毒素がautotransportersと呼ばれるタンパクの一種であると示している。なぜなら、それらのバクテリアの外膜を通しての分泌作用はその分子のカルボキシル基によって成立しているからである。Petplasmid-encoded toxin)と呼ばれるこの108kDaの毒素はUssing chamberに貼り付けたラットの腸の組織に腸管毒による活動を誘発する。120kDaEAECの上澄みタンパクはHEp-2細胞の細胞内カルシウムの上昇を引き出すといわれている。このタンパクはEslava et al.によって確認されたタンパクとの関係の有無に関わらずさらに明らかにされるべきである。

 

腸内の炎症

ブラジルのFortalezaで進んでいる幼児の下痢についての研究は、EAECの感染が認められる子供には腸内で炎症が起こっていることを便の中の炎症に伴うマーカーによって判定できることを示した。これらのマーカーは好中球が産生し、便の好中球の高感度なマーカーとなるlactoferrinを含むインターロイキン‐8(IL-8)とインターロイキン−1b(IL-1b)である。IL-8とIL-1bはコントロールされていないEAECによる持続性の下痢を伴う子供たち(同じ集団の子供たちが病原性の便ではなく、便のサンプルをとる前後3週間下痢がない)に確認された。また、便のlactoferrinIL-1bEAECに感染しているが3週間下痢のない子供たちにも確認された。これらの炎症を起こす原因は未だ明らかではないが、おそらくそれらは上皮から分泌されるサイトカインの直接的な刺激の結果であると考えられる。

 

Steiner et al.は生体外でのサイトカインの研究をしている際にIL-8EAEC菌株042 or

17-2の濾過液にさらされているCaco-2腸上皮細胞から分泌されていることに気づいた。この分泌はおそらく耐熱性の高分子量の染色体で符号化されたタンパクによって成立していると考えられる。親油性糖類はこの結果について主な原因とは考えにくい、というのはそれがpolymyxin Bによってブロックされておらず、また通常の大腸菌からは検出されないからである。

 

IL-8の分泌とEAEC感染の症状の関係についてはまだ知られていない、特に組織病理学的な試料からは好中球の激しい浸潤は報告されていない。しかしながら仮説上のEAECによる下痢におけるIL-8分泌の役割については想像することができる。EAECへの反応として上皮細胞から分泌されるIL-8は好中球を集めることによって分泌物のカスケードの最初のステップとなり得る。なぜなら腸の上皮の好中球は腸の細胞の先端部の表面の5'-ヌクレオチダーゼによって塩化物分泌作用の作用薬となるアデノシンに変質する5'-アデノシン1リン酸を分泌するからである。好中球の走化性とサイトカインの分泌の同じようなメカニズムはたとえばClostridium difficile toxin Aのように他の病原菌の産物による下痢にも関係している。

 

 

 

菌株の異種混交性

EAEC菌株は注目に値するほどの異種混交性を示す。Maryland大学での研究では少量の炭酸水素塩を含む1010 CFU5人の成人しているボランティアのうち4人について便から菌株042AAF/II線毛、EAST1108 kDa Pet毒素を持つもの)が分離された。他のAAF/I の確認できる3つの菌株とEAST1を分泌する1つの菌株では何も腸に症状は見られなかった。これらのデータは毒性の異質のものであり、Petが重要な役割を果たしていることを示している。

 

EAEC発病学のモデル

上記にのべたことから推論すると、3段階EAEC発病学を提案することができる。1段階は腸粘膜と粘液層への最初の定着である。この最初の定着はどうやらAAFの線毛によって仲介されるようだ。2段階は粘液産生の増進からなり、どうやらEAECのバイオフィルムに覆われた厚い粘液の堆積物をつくるようだ。この覆いは、永続する増殖と栄養物の吸収不良をおこす。3段階は病理学や分子等の根拠から、粘液と腸分泌の傷害のため起こった毒素や炎症を化学変化させる作用をもつ。栄養不良である固体は粘液の修復はできないであろうし、それゆえ下痢症状がつづくことになるであろう。

 

ヒトの腸にあるEAECの感染部位はまだ明確には証明されていない。IVOCの研究は、EAEC菌種は、小腸粘液,大腸粘液のどちらにも定着することができることを証明した。この研究の組織標本は、小児科の患者からのもので、EAEC菌種とのインキュベ−トの前にはフォルマリン固定をしていない。この特徴は他の研究者によってえられた結果の矛盾を説明できるだろう。ヒトに見られる042菌種(8時間のインキュベ−ト)の観察からは、短いインキュベ−ション期間は小腸性の下痢の関係もかかわることが分かる。

 

臨床的特徴

EAEC性の下痢の臨床的な特徴は、発生や散在性の例、自発的なモデルにおいて次第に分かってきている。典型的な病気は、微熱や少量の嘔吐を伴う水性のM型菌分泌性下痢によって明らかにされる。しかしながらEAEC性下痢の患者の1/3はひどい血便である。この特性は菌種による。EAEC菌種042に感染したものでは下痢はM型菌性で量は少ない。このような患者では、病気の潜伏期間は8から18時間である。

 

EAEC性下痢の持続期間はそれ自身の印象的な特徴である。北インドのCommmunity surveillanceAnapur-Pallaの研究では、3歳以下の子供のEAECによる下痢の持続期間は17日であるとしている。この41の下痢の症例についての研究から発熱は12%、悪心は12%、嘔吐は7%、そしてこれらの持続期間14日以上が44%であった。

 

多くのEAEC性下痢患者からは便から異常なレベルのIL-8が見つけ出される。この観察はEAEC感染は粘液性炎症を伴うと考えられるが、多くの患者には明白な臨床的な炎症の証拠がない。

 

診断

EAECの定着は便のサンプルからのE.coilの単離とHEp-2のAAパタ−ンアッセイの証明から発見できる。小腸の吸引分析では産出は増加していないことがわかる。EAECのためにひきおこされたであろうとされる患者の病状は、多くのヒトでみると定着の兆候と高い率で関係があることがわかる。また、患者の病気とかかりあいになる有機体がなく、EAECがすぐに単離できたら、患者の病気の原因であろうとかんがえられる。

 

Hp2アッセイをする多くの方法にもかかわらず、Craviotoらが最初にやった技術は(3時間の細胞内でのバクテリアのインキュベ−ションで、アッセイの間は何の変化もない。)は3つの定着パタ−ンを区別するよい方法だと比較研究により分かった。AAFの定着が静止の37CLbrothの培養で表現されるので、われわれはすべてのHEp2アッセイをこのような手法によってインキュベ−トした。

 

DNAフラグメントのプロ−ブはそのかなりの特徴性からEAEC菌株を見つけ出せる。このプロ−ブは17-2042菌種のプラスミドから経験的に出ているフラグメントをテストしたBaudryにより明らかになった。1.0kbのSau3aのプラスミドについてのフラグメントは63EAEC菌種のうち5689%)とハイブリット形成をし、正常なfloraでは376菌種に相当し、他の下痢を引き起こすものではプロ−ブと2しかハイブリットしなかった。EAECポジティブプロ−ブとAAの相関関係は位置の違いによる。いくつかの研究では、相互関係Baudryなどによって89%の感受性が得られており、また別の研究では、感受性は非常に低い。ポジティブプロ−ブとネガティブプロ−ブの菌種の流行性の意義は、。まだ定義されていない。AAプロ−ブのヌクレオチド配列は、プラスミドレプリコンの近隣のまだ分かっていないフレ−ムの解明をあらわす。AAプロ−ブ配列から引き出されたプライマ−を使ったポリメラ−ゼアッセイは同様の感受性と特性をしめす。

 

伝染病学

自発的な研究と、発生の調査により、最低でもいくつかのEAECの菌種は人間の病原体であるとされている。たくさんの研究によって発展途上国においてEAECと下痢が結びついていることが支えられている。

増加している、そのようなレポートや上昇する下痢の割合によってEAECが重大な小児下痢の要因として関係していることが示されている。

 

EAECと点在する下痢

最古の伝染病学レポートはEAECがしつこい小児下痢(14日以上続く)ともっとも目立った関係を示している。(図1)これらの研究のいくつかでは、下痢の最初の数日で大便の中で培養されたEAECにより長い病気になることを予見していた。

下痢のような疾患のなかでEAECの重要性は様々な地域で発生していることにある。インド亜大陸において六つの研究(それらが含むのはしつこい下痢の入院患者{50}、診療所に訪れる外来患者{51}、家族の監視下で見つけられた点在した下痢のケース{37})が、小児下痢におけるEAECの重大な関連性を示している{37,38,48,50,51,53}。

EAECとしつこい下痢の症候群は一貫して関係してきている{28,29,30,40}。ブラジルではEAECは、68%以上もの割合でしつこい下痢のケースと関係している{40}。それは下痢による死の占める割合の異常を示している。EAECは加えてメキシコやチリ、バングラデシュ、イランにおいての点在する下痢の原因としても関連している。

 

図1 EAECと下痢の結びつき伝染病学的研究 (p<0.05)

ケース

症状

場所

EAEC対コントロール

備考

下痢

サンチアゴ

―チリ

a

(33%)(15%)

市町村と病院でが基本。EAECに関する初めての記述。

37

しつこい下痢

アナプール〜パラ

−インド

(b)

(30%)(10%)

家族の監視下における3歳以下の田舎の子供。初めてのEAECとしつこい下痢の関連。

50

しつこい下痢

ニューデリー

―インド

(b)

(20%)(7%)

ケースコントロールされた、2歳以下のひどくないしつこい下痢患者。

28

しつこい下痢

フォルタレッツア

−ブラジル

(b)

(20%)(5%)

家族の監視下にある5歳以下の子供。

39

下痢と

しつこい下痢

モラリス

−メキシコ

(a)、(b)

(12%)(51%)(5%)

家族の監視下にある2歳以下の子供。

43

しつこい下痢

ミルザプール

―バングラデシュ

(c)

(27%)(18%)

家族の監視下にある6歳以下の子供。下痢の当初2日から分離されたEAECが永続性を予見している。

29

しつこい下痢

フォルタレッツア

−ブラジル

(b)

(20%)(5%)

29ヶ月以内にしつこい下痢に悩まされている患者

 

ケース

症状

場所

EAEC対コントロール

備考

51

下痢

ニューデリー

−インド

(b)

(21%)(4%)

入院している4歳以下の子供。

38

ひどい下痢

カルカッタ

−インド

(d)

(11%)(2%)

EAECが入院幼児患者のひどい便の下痢

と関連。

42

下痢

テヘラン

−イラン

(a)

(32%)(17%)

幼児外来患者。EAECは高確率で抗生物質に抵抗性を持つ。

39

しつこい下痢

フォルタレッツア

−ブラジル

(b)

(68%)(31%)

3歳以下の外来患者。EAECは他のすべての要因よりもしつこい下痢と関連がある。

48

ひどい下痢

ベロア

−インド

(a)

(8%)(4%)

3歳以下で3年以内の下痢外来患者

52

下痢

ウルヴエルグ

―ドイツ

(a)

(2%)(0%)

入院している16歳以下の子供。EAECの疾病が工業国で出た初の記述。

41

ひどい下痢

カラカス

−ベネズエラ

(a)

(27%)(15%)

入院患者と外来患者(2歳以下)3日以内下痢。EAECは2ヶ月以下の幼児の下痢とのみ関連。

Jalla

Luddin

Et al

1997

Pers

comm

下痢

ルイロー

−ザイール

(a)

(25)(8)

5歳以下の外来患者。アフリカでのEAEC初の記述。

(a) 下痢vs asymptomatic

(b)しつこい下痢vs asymptomatic

(c)しつこい下痢vsひどい下痢

(d)分泌性vs侵入下痢

 

EAECの伝染病学的特徴は(たとえば、適当な原因、感染源、伝染経路、季節、そして年齢分布)大部分が知られていない。EAECについてのほとんどの研究は、下痢の原因として、幼児や小さな子供から有機体を分離すること。さらに、自発研究と発生の調査により、学生や大人にも感染しやすいことが分かっている。{54,56}感染源に関して、EAECの菌種はブラジルで哺乳瓶の乳性分から検出されている。{57}

最近の研究では工業国の患者の便から、しばしばEAECが検出され、重要な下痢の要因となっている。EAECはドイツの下痢幼児患者の2%から検出されている。病原菌は下痢と関連している。{58}患者はEAECのと特徴上疾病が長引いている。そして、しばしば幼児の激しい腹痛に似た腹部痛がおこる。

腸管付着性大腸菌(EAEC)の発生

 EAECによる下痢の症状は、これまでに何例か報告されている(Table2)EAECの症状に関する最初の詳しい報告は、1995年の9日間、セルビアにあるNisの病院内託児所の19人の乳児におけるものである。(5219人のうち、12人の乳児では、血清中に、多種薬剤耐性の同じEAEC菌株が発見されたが、他の5人の乳児では発見されなかった。16人の乳児は、症状が39日続いたが、3人の乳児は、下痢がひどく、1820日続いた。下痢の症状のある乳児は、決まって液状の緑の便であった。3人の乳児は、鼻水が顕著であった。血便はどの乳児にも見られなかった。3人の乳児以外は全員、点滴をうけたが、命には別状なかった。感染源ははっきりしない。

 

 2番目の発生は、メキシコ市の病院で起きたものであり、栄養失調を伴った、致死的なひどい下痢であった。(12) 乳児がひどい下痢になり、積極的な治療にもかかわらず、5人が死亡した。これらの発生によって死亡した乳児の検死結果から、腸粘膜のひどい病変死が見つかった。

 

 19961月にインドの南方の村で起こった下痢の流行の間、下痢の症状に関係するものが発生したと考えられる20人のうち、11人の便からEAECが検出された。同じ村の人の便と比べて、症状のある11人のうち、1人の便でEAECが検出された。(59)井戸の水を飲むことによって、下痢が広まったが、この水からはEAECは検出されず、汚染された水が下痢の流行の原因であると断定はできなかった。

 

 EAECは先進国でも発生した。1993年、日本の岐阜県で起こったEAECによる下痢の発生では、16の学校で2697人の子供が学校の給食を食べたあと、症状を訴えた。(54) 素の症状は、腹痛、吐き気、ひどい下痢によって特徴付けられ、少なくとも30例において、長引くものとなった。この症状が出始めるまでの、潜伏期間は平均4050時間であった。血清型はO:H10の、単一のEAEC菌株は関連があるが、それらは給食に関係するどの食品からも検出されなかった。

 

 下痢を引き起こすEAEC4つ目の発生は、1994年、イギリスで起こった。(56) このとき、19人、10人、51人、53人の人が発症し、それぞれ、ほとんどが成人であった。最後の2回の発生においてだけ、単一のEAECの菌株が関係していた。これらの発生はそれぞれ食事をとったことに関係していたが、媒体は関係していない。症状は、嘔吐と下痢に特徴付けられ、時に、発熱もあった。症状の持続時間は、1回の発生で、68時間であった。イギリスでの発生に関係した大腸菌O44:H18の菌株は、実はEAECであった。(55) この報告により、3種のEAECが発生し、2種は子供に、1種は成人に感染したということがわかる。

Table2. EAECによる下痢の発生

参照個所

背景

患者

症状

52

1995年、セルビアNisの託児所

乳児19

下痢

56

1994年、イギリスの会議施設

成人51

37日間の下痢

56

1994年、イギリスのホテル

成人53

持続期間68時間の下痢

59

1996年、インド南方の村

子供と大人20

持続期間11日の下痢

12

メキシコ市の託児所

報告なし

ひどい下痢、5人死亡

54

日本の岐阜県にある16の学校

小学生2697

下痢、数例で長期化

 

EAECと栄養失調

 おそらく、EAECと下痢との関連よりもさらに重要なことは、ブラジルのFortalezaから報告された最近のデータである。それは、EAECに関係して起こる乳児の発育遅延である。(31)この研究によると、乳児の便から分離されたEAECは、下痢の症状の有無に関わらず、身長と体重のz-scoreに関係する。そのような関連は、Cryptosporidiumを連想させる。(60) オーストラリアのアボリジニー族における研究で、下痢の症状がなくてもEAECが発育遅延に関係することがわかった。多くの地域で症状が出るEAECの排出が広く流行しており、もしこの観察がさらに先の研究を支えるなら、EAECの人の病気に対する寄与は一般に考えられているよりもずっと大きいものとなるだろう。

 

 結論

 EAECは、発展途上国、先進国のどちらでも流行し、急性かつ症状の重い下痢を引き起こす病原菌で、現在明らかにされつつある。散在性のものと、流行性のもの(おそらく菌に感染した食べ物によって広まったもの)のどちらについての下痢の症状もこれまでに報告されている。病原性のメカニズムは解明されつつある。;おそらくEAECの全ての菌株が病原性を持つのではないだろう。もっともらしい病原性のモデルは提案されてはいるが、EAECと栄養失調との関連のメカニズムは、まだ明らかになっていない。栄養失調により、ひどい下痢にかかりやすくなる。(6162)これが主な免疫を低下させる(病原菌を殺すのを妨げる)のか、腸の生理機能を変化させる(さらに感染しやすくなる)のか、わかっていない。しかし、次のこともまた妥当なように思える。症状を引き起こす、EAECによる殖民状態は、栄養失調に関係している可能性もあり、これは細胞毒によるひどい腸の炎症、粘膜の炎症や、細菌の生体膜による栄養の吸収の阻害などによって新陳代謝の必要性が高まることによって引き起こされる、というものである。悪循環は、栄養失調と感染が起こっているところに作用し、それらを長引かせる。(図4)この輪を通して、子供たちを推進する病理生理学的組織は多く、この重要で世界的な問題に対する介入への道をいくつか開いている。

 

4下痢と栄養失調の関係(3160-62)