発病機構入門グループワーク
Cryptococcus neoformans
についてGroup13
98084
山地 康大郎, 98085 山下 善功
G.I.O
クリプトコッカスネオフォルマンスを中心に、その特徴、病原性、感染経路、診断と治療などを学び、この菌由来の病気に対して対応できるようにする。また、その他の真菌についても大まかに学ぶ。
S.B.O
2.
クリプトコッカスネオフォルマンスの形態・特徴 (元村)3.
クリプトコッカスネオフォルマンスの病原性 (諸岡)4.
クリプトコッカスネオフォルマンスの感染 (矢野志津枝)5.
クリプトコッカスネオフォルマンスの診断と治療 (山地)6.
その他の真菌について(カンジダ、アスペルギルス) (矢野紘子)
<参考文献>
戸田新細菌学(南山堂)
What Makes Cryptococcus neoformans a Pathogen?
Kent L. Buchanan and Juneann W. Murphy University of Oklahoma Health
Sciences Center, Oklahoma City, Oklahoma, USA
http://www.cdc.gov/ncidod/eid/vol4no1/buchanan.htm
菌類の範囲
最近まで、みずからは無機物から有機物を合成せず、他の生物を食べたり分解したりして栄養をえる真核の微生物で、一生細胞壁をもつ
カビ、キノコ、酵母の仲間と、胞子をつくるときに被膜し、キノコのような形の構造をつくるムラサキホコリカビなどの粘菌類をひとまとめにして菌類とよんでいた。ところが、最近になって菌類としてひとまとめにされていた生物群の研究がすすみ、菌類が起源のことなる生物群の寄せ集めであることがしだいに明らかになってきた。現在の分類では粘菌類や
卵菌類などが他の界(→ 分類の「5界分類」)にうつされ、菌界はカビ、キノコ、酵母の仲間だけで構成されているので、真菌類は菌界と同じ意味であるといえる。
菌類(真菌類)の分類
教科書では複雑な分類法がつかわれることもあるが、今日研究者が共通してつかっているのは、使いやすさを考えてつくられた単純な方法である。この分類法では、まず卵胞子、接合胞子、子嚢胞子、担子胞子を生成するものをそれぞれ鞭毛菌門、接合菌門、子嚢菌門、担子菌門の
4つの大きな門にわける。その他多数の種をまとめて第5の門である不完全菌門に分類するが、これらの種は核の結合によって胞子をつくることが確認されておらず、分類が困難なためである。ただし不完全菌類の多くは子嚢菌に関連があるものと考えられている。そのほかにも放線菌、変形菌、ネコブカビ、ラビリンチュラ菌、細胞粘菌などの門がある。放線菌はひじょうに細い菌糸をもち、無性胞子である分裂子または分生子によって増殖するもので、バクテリアと菌類の中間に位置づけられている。変形菌は菌類の一部とみなされたり、動物に近い原生生物としてあつかわれたり、意見がわかれている。この仲間は、変形体とよばれる細胞壁のないアメーバ状の原形質の塊として栄養物を摂取している。生殖過程では長さのことなる
2本の鞭毛によってうごきまわる遊走細胞が生じる(→ 粘菌)。ネコブカビも遊走細胞をもち、変形体段階がある点で粘菌と似ている。ラビリンチュラ菌と細胞粘菌は変形菌の特徴をいくつかそなえているが、栄養物を摂取する過程(偽変形体)はことなっている。
「鞭毛菌門」
鞭毛菌門は藻類に似た菌類で構成されており、単細胞のものから隔壁によって区切られていない菌糸の複雑なかたまりまで、さまざまな種類がある。卵胞子のほかに
遊走子をつくり、遊走子は2本の鞭毛によってうごきまわる。この門にはいるものに、ミズカビ、白カビ、べと病菌などがある。ほとんどのミズカビは死んだ動物の表面にすむが、寄生性ミズカビ属は生きた魚の体内に侵入する。白カビとべと病菌はツユカビ目に属し、植物に寄生する。エキビョウ菌とツユカビをふくむべと病菌の一部では、遊走子をふくんだ胞子の外被が担嚢子に似た働きをするように変形する。
「ツボカビ門」
ツボカビは鞭毛菌門と密接に関連があると考えられている。分類法によっては、ツボカビを真菌類ではなく原生生物とする。
「接合菌門」
接合菌門の特徴は、有性で厚い壁におおわれた接合胞子と無性で遊泳性をもたない胞子嚢胞子を生成することである。この門の代表的な菌である
クモノスカビはケカビ目に属し、古くなったパンや果物、そのほかの食べ物の表面に菌糸のかたまりをつくる。ハエカビ目に属する菌類は、ハエやその他の昆虫に寄生する。こうした菌類は胞子嚢の中に1つの胞子しかもたず、それぞれの胞子嚢が変形して本体からはなれ、分生子として機能する。トリモチカビ目の菌類にはアメーバやセンチュウ、節足動物などに寄生する菌類がふくまれる。
「子嚢菌門」
子嚢菌類は、子嚢とよばれる袋の中に子嚢胞子をもっている。酵母の何種かとそのほかのいくつかの種をのぞいて、子嚢菌の菌糸はよく発達している。ふつう菌糸には
1個ずつの核があるが、胞子嚢をつくる直前に2個の核をもつことがある。できたばかりの子嚢では核融合が発生する。その結果、ふつう8つの核が生まれて、新しくできる子嚢胞子の中心となる。子嚢菌の中には1つの子嚢胞子しかもたないものもあるが、数百もの子嚢胞子をもつものもある。子嚢菌門はおもに、原生子嚢菌、真正子嚢菌、小房子嚢菌の
3群にわけられる。原生子嚢菌には、土台となる菌糸のかたまりの内側または表面に子嚢をもたない酵母やそれに似た菌類がある。醸造酵母は子嚢胞子をつくるだけでなく、親細胞からでた植物の芽のような突起が分離することによっても増殖する。分裂酵母属の細胞は分裂によって増殖する。真正子嚢菌のもっとも単純な形は、コウジカビ目と同様、閉鎖胞子嚢果とよばれる菌糸の玉の内側に子嚢がちらばっている。ふつうに
アオカビとコウジカビといわれるものは、真正子嚢菌類に属する菌類の栄養生殖型である。子嚢菌のうち核菌類に属するもののいくつかでは、子嚢殻(被子器)とよばれるフラスコのような形をした器官の中で子嚢がつくられる。子嚢果という菌糸のかたまりを土台として、その表面に多くの子嚢殻ができる。アミガサダケやトリュフ、チャワンタケなどが代表的な子嚢果で、その上側の表面には子嚢がついている。同じく核菌類のひとつであるアカパンカビは、遺伝子研究の分野でひろくつかわれてきた。小房子嚢菌は、菌糸のかたまりの内側にできた穴の中でつくられる子嚢が
2重の壁でおおわれている点で、これまで説明した子嚢菌とはことなっている。その代表的な種としてクロイボタケやタテガタキンがある。
「担子菌門」
担子菌門には多数の、さまざまなタイプの菌類がふくまれる。担子器とよばれる細胞から担子胞子を生じる。担子器は菌糸の先端に位置し、茎のような突起物の上にふつう
4個の担子胞子をもっている。担子器は棍棒のような形や円筒形、卵形をしている場合もある。担子菌門のおもな種類として異型担子菌と同型担子菌がある。異型担子菌の担子器はふつう4個の細胞にわかれるが、同型担子菌の担子器には隔壁が生じない。担子菌には
サビ菌や黒穂菌などいくつかの重要な植物の寄生菌がふくまれる。これらの仲間の担子器は深い割れ目ができたり、複数の細胞(ふつう4個)にわかれたりして、それぞれから胞子がつくられる。小麦やそのほかの穀物の茎枯れ病をおこす菌をはじめとする多くのサビ菌は、複雑なライフサイクルを特徴としている。さまざまな形の胞子をつくるために、寄生する相手を一度かえなければならないからである。雄精器として知られるフラスコ型をした小さな器官は、メギの葉の表面に不動精子とよばれるたくさんの微小な胞子のような本体をもつ。葉の裏側にはサビ胞子器とよばれる碗状の突起がつくられ、そこからサビ胞子の列が発生する。サビ胞子はメギを再感染させることはないが、胞子のはいった夏胞子器とよばれる赤色の小隆起の房をつくり、植物の茎や葉をサビ色に変色させる。
冬になると、厚い壁におおわれた冬胞子とよばれる黒い別の種類の胞子が、小麦の茎の表面につくられる。翌春には冬胞子は円筒形の突起をつくり、それが担子胞子をふくんだ
4個の細胞にわかれる。一生のうちに寄生先をかえるサビ菌は異種寄生とよばれる。それに対して、1つの寄生先であらゆる成長段階をすごすものは同種寄生とよばれる。黒穂菌では冬胞子のことを厚膜胞子とよぶ。この胞子はすぐ寄生先の植物に害をあたえるが、ふつう翌春には土中で発芽し、
4個の細胞からなる短繊維をつくる。それぞれの細胞には小生子とよばれる担子胞子がはいっている。異型担子菌類にはキクラゲ、ベニキクラゲ、シロキクラゲなどもふくまれる。同型担子菌は、子実体の外面である子実層がむきだしになっている帽菌類と、担子器が子実体の内側につくられる腹菌類の
2つに大別される。こうしたグループは同型担子菌の下位分類とみなされている。これらの多くは死物寄生性であり、生物の遺物や腐朽体に生じる。帽菌類には、子実体すなわち担子器果の形によって、マッシュルーム、
ホウキタケ、サルノコシカケなどの仲間がある。マツタケでは、子実層はキノコのかさの裏側にのびるひだの両脇につくられる。ホウキタケは複数に分枝した担子器果をもち、なめらかな表面に子実層がつくられる。くちた樹幹によくみられるサルノコシカケは、たくさんの管の中に子実層がならんでいる。ハリタケの子実層は歯や針の形の突起の上につくられる。腹菌類には
ホコリタケやスッポンタケのような種類がふくまれている。ホコリタケの担子器果は大きく、球形で無数の胞子をふくんでいる。スッポンタケの子実体は円筒形で、胞子のついた先端部分からは異臭がはなたれている。腐肉を食べる昆虫がこのにおいにひきつけられてあつまるため、胞子を確実に拡散させることができる。
「不完全菌門」
不完全菌
はおもに子嚢菌の栄養生殖型のものだが、まれに接合菌や担子菌の分生子である場合もある。コウジカビ、アオカビ、フザリウムなどに代表される叢生不完全菌目は、ふつう菌糸がゆるくからまった産毛状のかたまりの表面につくられる。分生子床不完全菌目の菌は、微細な受け皿状の子実構造(分生子堆)をもっている。粉胞子器不完全菌目の菌では、分生子はフラスコ形の器官(粉子器)の中につくられる。