クリプトコッカス・ネオフォルマンスの形態と特徴
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・ネオフォルマンスは不完全菌に属し、担子菌に属するフィロバジディエラ・ネオフォルマンスの無性世代に当たる。この菌は通常の培養条件下で比較的速やかに発育する。常に円形または卵円形の単細胞{直径4〜8μm}として発育する酵母であり、出芽によって増殖する。最近Wickesなどによって、・ネオフォルマンスのα交配種は窒素源や水分なしで固体の媒体による単相の菌糸を作り出すことができると言う報告がされた。単相の菌糸はかすがいでつながったものと担子胞子の短い鎖を持つ担子器を含み、有性世代の複相の菌糸における核の数を除いたものと同様である。
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・ネオフォルマンスの最大の特徴は厚い莢膜をもつことであり、これは墨汁染色法で容易に観察される。寒天培地上での発育コロニーが表面平滑でムコイド状の外観を呈するのもC・ネオフォルマンスが莢膜を保有するからに他ならない。この莢膜はグルクロノキシロマンナン(GXM)を主成分とする。このGXMの分枝構造に基づく抗原性の違いによって本菌はA,B,C,D、の4つの血清型に型別される。血清型の違いによって病原性も異なるようであり、一般にB,C型菌株群はA,D型菌株群よりも毒力が強いと言われている。莢膜のほかに病原因子として特徴的なものにメラニンおよびメラニン合成経路上の
key enzymeであるフェノールオキシダーゼ(およびジフェモールオキシダーゼ)があると考えられている。莢膜やメラニンは食細胞の貪食殺菌作用に抵抗性を与え、フェノールオキシダーゼは貪食殺菌能を抑制すると考えられている。【メラニン合成について】
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・ネオフォルマンスの病原性の分離体を、非病原性の分離体や他のクリプトコッカス種から区別する一つの特徴は、ジフェノール系合成物を含む媒介物にこげ茶の色素を形成する能力である。この色素はフェノールオキシダーゼ活性を持つC・ネオフォルマンス分離体が作ったメラニン様合成物である。1980年初頭に、然に起こるメラニンを欠いた突然変異株はメラニン合成株より毒性が少ないことから、C・ネオフォルマンスの毒性に関わるメラニン生産の重要性が発表された。生化学的な仮定によると、C・ネオフォルマンスのメラニン合成は、
3.4−ジフェノールオキシンフェニルアラニンなどのジヒドロキシフェノールをドーパクイノン転換することでおこなわれるという。この転換は、フェノールオキシダーゼによって触媒作用を及ぼされる。C・ネオフォルマンスはジヒドロキシフェノールの内栄養性の生産物のために必要とされるあるチロシナーゼ酵素を欠いている。そのため、メラニンを生成するには、C・ネオフォルマンス分離体は自分の成長環境からジフェノール系の物質を取り入れることができ、これらの物質をメラニン中間生成物に転換するのを触媒するフェノールオキシダーゼ酵素も持っていなければならない。
フェノールオキシダーゼ活性を欠いた突然変異体は生存数が減少したことに裏付けられるように、
試験管内でのエピネフリン酸化系から受けるダメージにとても敏感であり、一方、メラニン生成分離体はエピネフリン酸化系に抵抗を持っている。さらに、メラニンはC・ネオフォルマンスを過酸化水素からは防がないが、その
100倍のハイポクロライトと過マンガン酸塩のダメージから防ぐ。メラニン化されたクリプトコッカスは同じ株のメラニン化されていないものよりずっと、窒素と強酸化製物質由来の酸素の両方からダメージを受けるのを免れている。他にも、メラニンの生成はC・ネオフォルマンスが宿主の中で生き残るのを別の方法で助ける。メラニン化されたイースト細胞は、メラニン化されていないイースト細胞より
amphotericinBを感じにくく、これは免疫寛容された宿主では、効果的に感染を処理することが不可能ということになる。その上、細胞壁へのメラニンの堆積が特異的な抗体によって白血球の食作用を促進するのを妨げる。