ハマダラカ亜科Anophelinae

世界で約400種知られているが、このうち90種がマラリアの媒介蚊として報告されている。また、これは一種の糸状虫も媒介する。

次のような形態的特徴が見られる。成虫の小腮鬚は吻の長さにほぼ等しい。小楯板の後縁は一様に円く、一部の種を除いて翅には特有の斑紋を有する。腹部各節の腹板は鱗毛を欠く。静止時には尾部が静止面から斜めにあがる。蛹(さなぎ)の呼吸角は先端がラッパ状に広がる。幼虫は腹部第8節背面に呼吸角を欠き、水面直下に平行して静止する。腹部背面には、掌状毛palmate hairを有する。卵は、ボート型で、両側に浮嚢を持ち、巣紙面にバラバラに産み落とされる。

産下された卵は、1~3日で孵化する。幼虫は4歳になると4回目の脱皮を起こして蛹になる。幼虫は頭部にある口刷毛で水面および水中の微少なバクテリアなどを摂取する。蛹は餌は取らないが、腹部末端の鰭を使い、遊泳できる。2,3日で羽化する。

雌成虫は先に羽化していた雄成虫と交尾した後、吸血源を探す。主に脊椎動物から吸血する。我が国にも分布するシナハマダラカは牛や馬などの大型の動物を好んで吸血するが、沖縄南部から東南アジアに広く分布するマラリア媒介者の一種コガタハマダラカAn.minimusは人や鶏から吸血する。吸血は主に薄暮または夜中である。マラリア媒介蚊の多くは家屋内に進入し、吸血後家の内壁面で休息するが、直接外へと飛び去る種も報告されている。吸血後3~7日で卵が成熟し産下される。一匹の雌の一回の産卵数は150~300個で、生涯で大体3回以上産卵する。卵の発育には、その都度吸血が必要である。

主な発生源は池や沼などであるが、コハマダラカは山麓部の小渓流や湧水のよどみに生息する。