ウィルス学的症状

パラミクソウィルス亜科の他のウィルスとの違いとして、2つの点が指摘されている。1つは赤血球凝集能をもつまたは可能な赤血球がサル血球に限られていることである。最近EBウィルスでトランスフォームしたマーモセット由来のBリンパ球が麻疹ウィルスに高感受性で、これを分離用宿主として使えば、分離直後から非常によく増殖することが明らかになった。しかしこの細胞で分離された麻疹ウィルスは、ノイラニターゼ活性のみならず赤血球凝集能をもかくということである。Vero細胞などで継代を続けると初めて赤血球凝集能を示すようになる。したがって野生の麻疹ウィルスは、赤血球凝集能とノイラニターゼの双方を欠く可能性があるといえる。麻疹ウィルスはノイラニターゼ処理細胞にも吸着できるので、同ウィルスのレセプターはパラミクソウィルス属やルプラウィルス属のものとは異なると指摘されていたが最近その実態が明らかにされた。ヒトの組織に広く分布し補体系の調節因子としての働きを持つCD46が、麻疹ウィルスのレセプターとして働くことが示されたのである。麻疹ウィルス感染細胞内には、細胞質に加えて核内にも好酸性の封入体が形成される。これは本科の他の属のウィルスには見られない特徴である。

抗原性

HFに対する抗体のいずれにも感染防御効果が認められる。両タンパクの抗原性は変化しにくいので、いまのところ、麻疹の予防対策上抗原変異が問題になることはない。最近の分離株のHの抗原性に、ワクチン株からのずれが見出されている。今後の監視が必要である。