サルモネラの非食上皮細胞への侵入は病原島 (SPI1:Salmonella pathogenicity island 1)に
集まる遺伝染色体を必要としている。EPECの様にSPI1はタイプ3分泌システムや分泌物の毒
性要素をコードする。タイプ3分泌システムは宿主細胞のバクテリアの取りこみに影響する部
位に接触し、宿主細胞に直接毒素を注入する役目をしている。近年、SPI1でコードされるバク
テリアタンパクSptPはチロシンフォスファターゼの作用でアクチンを調節する宿主細胞の骨格
宿主上皮細胞に配置されることが知られてきた。触媒領域にあるSptPシスの残存の分裂は
フォスファターゼの作用を失わせる結果となる。そこで、SptPは宿主のアクチン繊維の分裂に
作用し膜輸送やそれに伴って起こるバクテリアの取りこみを促進すると仮説された。
バクテリオファージはサルモネラ菌の染色体内に見られる。最近、毒性の因子がこのゲノム
内にコード化され、この毒性因子SopEは細菌が効率的に宿主細胞へ侵入するのに必要であ
るということが証明された。SopEはタイプ3の分泌機構を必要とする。それは、宿主細胞へ入
り込むためであり、宿主細胞において、SopEは直接アクチン細胞骨格の配列変換を起こさせ
る。それは小さなGTPaseのRho亜科のひとつであるグアニジン交換因子として作用する。
SopE突然変異は野生型よりも上皮細胞への侵入におけるアクチン細胞骨格の配列変換をす
ることができない。この発見は病原体がどのように細胞内で宿主細胞の蛋白に似たものを使
って宿主自身の信号機構を破壊するのかを明らかにする。
宿主の因子はサルモネラの侵入に深く関わっている
サルモネラの侵入中に、宿主の大きな細胞骨格構成改変はたくさんの宿主の因子を必要と
する。Rho亜科のひとつ、Cdc42は膜をなみだたせることによって細菌の吸着を伝える必要が
ある。SopEのグアニジン交換活性は宿主におけるCdc42の刺激を司ると思われている。病原
体は、また細菌の接触において宿主PLC(Phospholipase C)を活性化し、さらに信号を送る2
次メッセンジャーの産生を引き起こす。結果として宿主細胞のCa2+濃度が変化する。これは
サルモネラの侵入において細胞骨格の配列変換のきっかけとなる。EPECとサルモネラはいく
つかの同じ信号構造(PLC,Ca2+、Fluxes)を使うけれども、それぞれの病原菌による細胞骨
格変換はそれぞれの病原菌の宿主細胞が全く異なることを誘発する。侵入に深くかかわるい
くつかの細胞骨格構造は同一であると認められている。これらはα―actinin、トロポミオシン、
ezrin、そしてtalinを含む。サルモネラの侵入におけるこれらの蛋白の特別な役割は明らかで
はない。
図 サルモネラ菌
図A 膜を波立たせるサルモネラ菌の電顕写真
図B 宿主上皮細胞へのサルモネラ菌の侵入
サルモネラ菌はV型の分泌機構によってSopEとSptPを含む毒性の蛋白を宿主細胞へ分泌
する。SopEは小さなGTP接合蛋白のためにグアニジン交換因子として機能し、おそらくRho亜
科のCDC42においてGDPとGTPの交換を仲介する。SptPは侵入(細胞骨格を分裂させる)の
ために必要なチロシンホスファターゼである。侵入はまた、ホスホリパーゼCを活性化させ、イ
ノシトール三リン酸塩とCa2+溶解を引き起こす。そこでは、次に細胞骨格の並べ替えがおこ
り、膜の波立ちが起こり、サルモネラ菌が内側に侵入する。