外毒素の作用機序

近年、種種の毒素が酵素活性を持っていることが次第に明らかになっているが外毒素の作用は多様であり、まだ不明の点も多い。このため1つの基準で分類することは困難である。戸田新細菌学では、作用機序、標的となる臓器・細胞・分子・、毒性の違いなどから以下のように分類して解説してある。

 

  1.  細胞膜に作用する毒素
  2.  @膜を貫く孔を形成する毒素pore-forming toxin

     Aリパーゼ活性を持つ毒素

     B膜の酵素に作用(活性化)する毒素

  3.  タンパク合成を阻害する毒素
  4.  @28S rRNA N-glycosidase活性

     AADPリボシル化

  5.  腸管毒enterotoxinまたは下痢毒
  6.  @cytotonicな作用を持つ毒素

     Acytotoxicな作用を持つ腸管毒

    B黄色ブドウ球菌が産生する腸管毒staphylococcal enterotoxin(SE)

  7.  神経毒neurotoxin
  8.  心臓毒
  9.  皮膚毒

  1. 加水分解酵素
  2. スーパー抗原superantigenとなる細菌毒素

 

 

1. 細胞膜に作用する毒素

 @膜を貫く孔を形成する毒素poreforming toxin

毒素分子が重合して細胞膜を貫通する管を形成し細胞を破壊する。

 

 Aリパーゼ活性を持つ毒素

 

 B膜の酵素に作用(活性化)する毒素

 

  1. タンパク合成を阻害する毒素

 @28S rRNA N-glycosidase活性

 

 AADPリボシル化

 

3. 腸管毒または下痢毒

 @cytotonicな作用を持つ毒素

 

 Acytotoxicな作用を持つ腸管毒

 

 B黄色ブドウ球菌が産生する腸管毒staphylococcal enterotoxin(SE)

腸管から吸収された後に中枢神経に達し、嘔吐や水の吸収阻害による下痢を引き起こす。その作用機序の詳細は不明であるが、スーパー抗原としての作用を有する。

 

4. 神経毒

 

5. 心臓毒

 

6. 皮膚毒

 

  1. 加水分解酵素
  2. タンパク分解酵素(細胞外マトリックスを分解する)やヒアルロニダーゼ、DnaseDNAを分解する)は、細胞膜を破壊するリパーゼ活性をもつ毒素とともに組織破壊を起こすので侵襲因子として重要である。黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、クロストリジウム属など組織侵襲性の強い病原菌が産生する。またこれらの酵素は細菌の増殖に必要な栄養源やエネルギー源を宿主内で獲得するのに欠かせないもので増殖因子でもある。

     

  3. スーパー抗原superantigenとなる細菌毒素

 

 

外毒素の作用機序の例〔論文より抜粋〕

 

A.膜を貫く孔を形成する毒素poreforming toxinの例

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のα毒素…結合とオリゴ化の後、マッシュルーム状のα毒素8量体のステム領域は標的細胞の中に挿入され、下図の赤と緑の矢印のようにイオンの流入、流出が起こり、膜の透過性が壊れる。

 

B.タンパク合成を阻害する毒素の例

志賀毒素…ホロ毒素は酵素活性をもつAサブユニットと5つ結合したBサブユニットでできている。これが、グロボトリアシルセラミド(Gb3)レセプターを通して細胞内に入る。その時、AサブユニットのN-グリコシダーゼ活性が、28SリボソームRNAからアデノシン残基を遊離させる。その結果、蛋白合成が停止する。

 

C.二次メッセンジャーが働く毒素の例

耐熱性腸管毒(ST)…グアニレートサイクラーゼに耐熱性腸管毒(ST)が結合すると、サイクリックGMP(cGMP)の増加を引き起こす。cGMPは電解質の流入に影響する。

 

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum) のC3外酵素クロストリジウム・デフィシル(Clostridium difficile)毒素 A と毒素B (CdA & CdB)…それぞれのADPリボシル化、グリコシル化によって、RHO‐GTP結合蛋白を不活性化する。

 

大腸菌のもつ壊死の要因となる細胞毒素(CNF)ボルデテラ(Bordetella)属の皮膚壊死毒素(DNT)…脱アミノ化によってRhoを活性化する。

 

 

 

 

(図1)