Bacterial Toxins: Friends or Foes?

Clare K. Schmitt, Karen C. Meysick, and Alison D. O'Brien

Uniformed Services University of the Health Sciences, Bethesda, Maryland, USA

 

ジフテリア毒素がRoux とYersinによって1888年に分離されて以来、微生物毒素は一種の病理学的バクテリアの初期毒性要因だと認識され続けてきた。バクテリア毒素は宿主細胞への有害な効果により宿主細胞の代謝作用を変える物質だと定義されていた。実際、Corynebacterium diphtheriae (ジフテリア), Bordetella pertussis (百日咳), Vibrio cholerae (コレラ), Bacillus anthracis (炭疽熱), Clostridium botulinum (ボツリヌス), Clostridium tetani (破傷風), そして enterohemorrhagic Escherichia coli (赤痢、溶血性尿毒症)によって起きる病気から連想される主な症状はすべてこれらの微生物によって産出された毒素の影響に関係するものばかりである。これらやその他の疾患における毒素の中心となる役割の認識により、ワクチンとして不活性な毒素(toxoids)が応用されてきた。

この観点から、活動様式(細胞膜への損傷、蛋白質合成の抑制、セカンドメッセンジャーの通路の活性化、神経伝達物質放出の抑制、宿主細胞の抗体反応の活性化)によって分類した一種のバクテリア毒素の概要を作成した。我々はまた、7つの毒素について説明することにする。それは、Staphylococcus aureus -toxin, Shiga toxin (Stx), cytotoxic necrotizing factor type 1 (CNF1), E. coli heat-stable toxin (ST), botulinum and tetanus neurotoxins, そして S. aureus によって作られたtoxic-shock syndrome toxin (TSST)である。 我々はそれらが病原菌の発生(Stx of enterohemorrhagic E. coli)や再発(alpha.gif (53 bytes)-toxin of multidrug-resistant S. aureus)を招くこと、異なる構造や活動様式を描く(ST, CNF1, neurotoxins, and TSST).ことなどからこれらの毒素を強調したい。

 表:バクテリア毒素の特徴

病原体/毒素

活動様式

標的

病名

Toxin implicated
in diseaseb

 

Damage membranes

 

 

 

 

Aeromonas
   hydrophila
/aerolysin

Pore-former

Glycophorin

Diarrhea

(yes)

Clostridium
   perfringens/

Pore-former

Cholesterol

Gas gangrenec

?

perfringolysin O

 

 

 

 

Escherichia coli/
   hemolysind

Pore-former

Plasma membrane

UTIs

(yes)

Listeria monocytogenes/

Pore-former

Cholesterol

Foodborne systemic

(yes)

listeriolysin O

 

 

illness meningitis

 

Staphyloccocus aureus/
   alpha.gif (53 bytes)-toxin

Pore-former

Plasma membrane

Abcessesc

(yes)

Streptococcus  
   pneumoniae/

Pore-former

Cholesterol

Pneumoniac

(yes)

pneumolysin

 

 

 

 

Streptococcus pyogenes/

Pore-former

Cholesterol

Strep throat Sfc

?

streptolysin O

 

 

 

 

Inhibit protein synthesis

 

 

 

 

Corynebacterium
   diphtheriae
/

ADP-
ribosyltransferase

Elongation factor 2

Diphtheria

yes

diphtheria toxin

 

 

 

 

E. coli/Shigella
   dysenteriae/

N-glycosidase

28S rRNA

HC and HUS

yes

Shiga toxins

 

 

 

 

Pseudomonas
   aeruginosa
/

ADP-
ribosyltransferase

Elongation factor 2

Pneumoniac

(yes)

exotoxin A

 

 

 

 

Activate second messenger pathways

 

 

 

E.coli

 

 

 

 

CNF

Deamidase

Rho G-proteins

UTIs

?

LT

ADP-
ribosyltransferase

G-proteins

Diarrhea

yes

STd

Stimulates guanylate
cyclase

guanylate cyclase
receptor

Diarrhea

yes

CLDTd

G2 block

Unknown

Diarrhea

(yes)

EAST

ST-like?

Unknown

Diarrhea

?

Bacillus anthracis/
   edema factor

Adenylate cyclase

ATP

Anthrax

yes

Bordetella pertussis/

 

 

 

 

dermonecrotic toxin

Deamidase

Rho G-proteins

Rhinitis

(yes)

pertussis toxin

ADP-
ribosyltransferase

G-protein(s)

Pertussis

yes

Clostridium botulinum/
   C2 toxin

ADP-
ribosyltransferase

Monomeric G-actin

Botulism

?

C. botulinum/C3 toxin

ADP-
ribosyltransferase

Rho G-protein

Botulism

?

Clostridium difficile/

 

 

 

 

toxin A

Glucosyltransferase

Rho G-protein(s)

Diarrhea/PC

(yes)

toxin B

Glucosyltransferase

Rho G-protein(s)

Diarrhea/PC

?

Vibrio cholerae/cholera
   toxin

ADP-
ribosyltransferase

G-protein(s)

Cholera

yes

Activate immune response

 

 

 

S. aureus/

 

 

 

 

enterotoxins

Superantigen

TCR and MHC II

Food poisoningc

yes

exfoliative toxins

Superantigen (and
serine protease?)

TCR and MHC II

SSSc

yes

toxic-shock toxin

Superantigen

TCR and MHC II

TSSc

yes

S. pyogenes/pyrogenic
   exotoxins

Superantigens

TCR and MHC II

SF/TSSc

yes

Protease

 

 

 

 

B. anthracis/lethal factor

Metalloprotease

MAPKK1/MAPKK2

Anthrax

yes

C. botulinum/neurotoxins      A-G

Zinc-metalloprotease

VAMP/synaptobrevin
  SNAP-25 syntaxin

Botulism

yes

Clostridium tetani/  
   tetanus toxin

Zinc-metalloprotease

VAMP/synaptobrevin

Tetanus

yes

表注:

CNF, cytotoxic necrotizing factor; 細胞障害性ネクローシス?要因

LT, heat-labile toxin;  易熱性腸管毒

ST, heat-stable toxin;  耐熱性腸管毒

CLDT, cytolethal distending toxin; ?

EAST, enteroaggregative E. coli heat-stable toxin; 腸管病原性大腸菌

TCR, T-cell receptor; T細胞受容器

MHC II, major histocompatibility complex class II; 自己主要組織適合性抗原U

MAPKK, mitogen-activated protein kinase kinase; 微小管関連蛋白質キナーゼキナーゼ

VAMP, vesicle-associated membrane protein; ?

SNAP-25, synaptosomal-associated protein; ?

UTI, urinary tract infection; 尿路感染症

HC, hemorrhagic colitis; C型肝炎

HUS, hemolytic uremic syndrome; 溶血性尿毒症症候群

PC, antibiotic-associated pseudomembranous colitis; ?

SSS, scalded skin syndrome; 皮膚炎

SF, scarlet fever; 猩紅熱

TSS, toxic-shock syndrome. 毒素性ショック症候群
bYes, 毒素と疾患の間に強い原因関係がある。

(yes), 病理学的役割が動物モデルでも見られ、細胞培養に適している。

?, 未知。
cOther 疾患が病原菌から連想される。
dToxin 他属のバクテリアから産出されている。

 

When It Rains, It Pores」

 

多くのバクテリア外毒素は真核生物の細胞外マトリックスや細胞膜にダメージを与える能力を持っている。そのダメージは直接細胞を溶解するだけでなく、組織にバクテリアを広めるのを促進させる。この毒素は、酵素で加水分解するか、または孔を形成することによって細胞にダメージを与える。バクテリアのヒアルロニダーゼやホスフォリパーゼは細胞膜やマトリックスを破壊する能力を持っている。このタイプの毒素の例では、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)のα毒素が挙げられる。この毒素は、ホスフォリパーゼC活性をもっている。Streptococcus pyogenesのストレプトキナーゼはプラスミノーゲンをプラスミンに加水分解し、凝固している物質を溶解する。クロストリジアルコラーゲナーゼも例として挙げられる。Pore-forming毒素は、この名前からも推測されるように、細胞膜を貫通する孔を形成して、細胞膜の選択的イオン透過性を阻害する。これらの毒素のグループには、グラム陰性菌のRTX (repeats in toxin)毒素、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)の生成するストレプトリジンO、黄色ブドウ球菌(S. aureus)のα毒素が含まれる。(以下に述べる)

 


黄色ブドウ球菌(S. aureus)のα毒素は、オリゴ化して孔を形成する細胞毒素の原型と考えられる。α毒素の遺伝子は、もっとも病原性のある黄色ブドウ球菌(S. aureus)類の染色体上に一対ある。その表現型は、環境により、スタフィロコッカス補調節遺伝子(agr)座によって転写レベルで調節される。α毒素は26アミノ酸のN末端シグナル配列を含む319個のアミノ酸前駆分子によって合成されている。分泌された成熟毒素またはプロトマーは、システイン残基を欠き、約33kDaの分子の固まりをもつ、親水性の分子である。最近、完全結合しているα毒素の結晶構造が解明された。7つの毒素プロトマーは、細胞膜上に、3つの異なる領域からなる232kDaのマッシュルーム状8量体から形成されている(図1A)。α毒素8量体のキャップ領域(帽子の部分)とリム領域(縁の部分)は細胞膜の表面にある。一方、ステム領域(柄の部分)は膜の輸送チャネルとして働く。

(表1)いくつかのバクテリア毒素の作用機序を図で描写したもの。

A.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のα毒素で細胞膜がダメージを受けている。結合とオリゴ化の後、マッシュルーム状のα毒素8量体のステム領域は標的細胞の中に挿入され、上図の赤と緑の矢印のようにイオンの流入、流出が起こり、膜の透過性が壊れる。

B.志賀毒素による蛋白合成の阻害。ホロ毒素は酵素活性をもつAサブユニットと5つ結合したBサブユニットでできている。これが、グロボトリアシルセラミド(Gb3)レセプターを通して細胞内に入る。その時、AサブユニットのN-グリコシダーゼ活性が、28SリボソームRNAからアデノシン残基を遊離させ、その結果、蛋白合成が停止する。

C.二次メッセンジャーが働くバクテリア毒素の例。グアニレートサイクラーゼに耐熱性腸管毒(ST)が結合すると、サイクリックGMP(cGMP)の増加を引き起こす。cGMPは電解質の流入に影響する。それぞれのADPリボシル化、グルコシル化によって、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum) のC3外酵素とクロストリジウム・デフィシル(Clostridium difficile)毒素 A と毒素B (CdA & CdB)は小さなRHO―GTP結合蛋白を不活性化する。大腸菌のもつ壊死の要因となる細胞毒素(CNF)とボルデテラ(Bordetella)属の皮膚壊死毒素(DNT)は脱アミノ化によってRHOを活性化する。

 

α毒素はヒトの白血球、リンパ球、赤血球、血小板、血管内皮細胞を含むさまざまなタイプの細胞を溶解する。α毒素が、細胞膜を傷つけるとき、3つの事象が連続して要求される。最初に、毒素プロトマーは、正体不明の高親和性レセプターによって、またはリン脂質二重層のホスファチジルコリンやコレステロールのような物質への非特異的吸着を通して標的膜に結合する。次に、膜内のプロトマーはリシンのない孔8量体の前段階構造にオリゴ化しなければならない。最後に、8量体はステム領域を作る構造変化の連続を受けなければならない。それは膜の中に差し込まれる。α毒素の作る孔は、環境により有核細胞の増殖や死、赤血球のリシン浸透をもたらす、小さな分子やイオンの流入や流出を許す。孔の形成は、病理学的進展の連続を促進することができる二次的事象の引き金を証明した。この事象はエンドヌクレアーゼの活性を起こし、血小板のエクソサイトーシスを増加させ、サイトキニンや炎症を伴う仲介物を放出し、エイコサノイドの産生を引き起こす。いくつかの動物モデルにより、これらのシステムの中でα毒素が黄色ブドウ球菌(S. aureus)の発病力をもたらしているということが証明された。しかし、ブドウ球菌による感染症の中でのα毒素の厳密な役割はまだ分からない。

 

Stop, in the Name of Toxin(もはや毒素ではない)

 


 毒素の次の段階として、タンパク質合成を抑制することによって標的細胞を麻痺させることが挙げられる。ここで毒素によって反応を受けるものは伸長因子とリボゾームRNAである。ジフテリア毒素とPseudomonas外毒素AはADP-ribosylating伸長因子2(EF2)によって働く。調節されたEF2はもはやタンパク質合成において作用できない。Verotoxinとも呼ばれるStxsは赤痢菌A亜群血清タイプ1とSTECに指定された発育段階の病原菌によって作られる。Stxsは冒されたリボゾームがもはや伸長因子と相互に作用できないようにリボゾームRNAを不活性化させる。この毒素のグループによるタンパク質合成の抑制はついに標的細胞の死という結末に至る。Stxsは50%〜60%の相応関係を持つ、反遺伝子的にまったく異なる2つのグループ:Stx/Stxs1とStxs2に分けられる細胞毒素に効能がある。StxとStxs1は赤痢菌の血清タイプ1と大腸菌、またそれぞれに異なるただ1つのアミノ酸から丹念に作られる。Stxs2タイプの毒素は大腸菌でだけ認められ、単独で全く区別される。Stxs2はこのグループの原型と考えられているため、反遺伝子的に異なる異型は特殊な受容体においてか、腸の粘液によって活発になる物質において認められる。これらの特性の中には、毒素の遺伝子に含まれる1、2個のヌクレオチドによる結果であるものもある。S.dysenteriae(赤痢菌A亜群)のstxはいつも一定に染色体に位置している。Stxs1とStxs2を記号化する遺伝子は染色体的に、また溶原化するバクテリオファージによって運ばれる。StxsのA、Bのサブユニット:stxAとstxBの遺伝暗号を指定する遺伝子はオペロンに組み込まれる。Stx/Stx1のオペレーターの領域はStxsとStxs1の生産の鉄の規則に原因を持つfur boxの一致を含む。鉄も他の検査された環境因子もStx2の発現の影響を及ぼす。しかしながら、腸の粘液はStx2のいくつかの異型の活動を促進する。典型的なN-terminal leader sequenceを運ぶStxsは細菌細胞から活発に逃げるのではなく、細胞の溶解の間、環境に解き放たれると考えられる。StxsはAB毒素の構造を示す。酵素的に活発なAサブユニットは非共有結合で結合を、またBは成分を結びつかせる。Stxs1 B pentamerとthe Stx holotoxinの透き通った構造は図2を証明する。このABの構造を持つ他の毒素は大腸菌熱変性毒素、コレラ毒素、百日咳毒素である。(図2)ホロトキシンは5つのBサブユニット分子を含むが、発達したStx AとBの単量体サブユニットの分子的な大部分はおおよそそれぞれ35kDaと7.5kDaである。5量体のBサブユニットは特異的な糖脂質の受容体を経て敏感な真核生物細胞にホロトキシンの結合を指示する。いったん自己化され、Aポリペプチドは酵素学的に活動的なA1部分とA2部分とにわけられる。これらの部分はジスルフィド結合によって結合した状態になる。A2部分はA1部分とB5量体に連結するのに役立つ。酵素のAサブユニットは28sリボゾームRNAから1つのアデニン残基を切断するための特異的N-グルコシダーゼとして働く。この脱プリンは最終的に中毒性細胞へのタンパク質合成の抑制という結果におわる。(図1B)原核生物のリボゾームは真核生物のリボゾーム同様StxのN-グルコシダーゼ活性に敏感である。STECは発育段階の病原菌とされている。それは1983年のハンバーガーの料理下による出血性大腸炎の激増の際にこの病原菌が見出された20年前以降に初めて記されている。STEC O157:H7は合衆国で毎年約20000件の出血性大腸炎を引き起こしている。さらに約1000件の生活を脅かす続発性溶血性尿毒症症候群と約100件の死が合衆国で大腸菌O157:H7に帰しているのである。           ↓ 図2

Figure 2. Ribbon crystal structures of Shigella dysenteriae Shiga toxin (20), Escherichia coli heat-labile toxin I (LT-I) (21), and pertussis toxin (22). The Shiga toxin figure was contributed by Marie Frasier. The LT-I and pertussis figures were contributed by Ethan Merritt. The figures were drawn in MOLSCRIPT (75).

神経毒

 

  C. botulinum(クロストリジウム属ボツリヌス菌)の神経毒(BoNTs:ボツリヌス毒素, 血清型 A-G)とC. tetani(クリストリジウム属破傷風菌)の神経毒(TeNT:破傷風毒素)は、その構造、酵素活性の同一性、標的とする神経組織の細胞の類似性に基づいた細菌毒素の分類では、別々のカテゴリーに入る。ボツリヌス毒素は、幼児性ボツリヌス中毒と食事性ボツリヌス中毒にもっとも深く関連しており、大部分を占める神経毒と消化管内で毒素分子に保護と安定性を与えると考えられる少量のタンパク質で構成される巨大な複合体として自然界に存在する。創傷内の植物性破傷風菌から産生される破傷風毒素が、ほかの蛋白成分の複合体を形成することは明らかにされていない。

  ボツリヌス毒素と破傷風毒素は、TeNT,BoNTs/A,GまたはBをコードされたプラスミドかBoNTs/C,D,E,Fをコードされたバクテリオファージで、神経毒は150kDaの不活性ポリペプチドとして合成される。ボツリヌス毒素と破傷風毒素は、lysed bacterial cells から放出され、その後神経毒ポリペプチド内の露出したループのproteolytic 分裂によって活性化される。活性化したそれぞれの神経毒分子は、一本のinterchainによる S−S結合で結ばれた100kDaの重鎖と50kDaの軽鎖によって構成される。ボツリヌス毒素と破傷風毒素のどちらの重鎖も、分子量が半分のN末端に位置する毒素translocationに必要な領域と、重鎖のC末端内に存在する細胞結合ドメインという2つのドメインを含む。また、ボツリヌス毒素と破傷風毒素のどちらの軽鎖も、亜鉛依存性プロテアーゼ活性を必要とする亜鉛結合モチーフ(motifs)を含む。

  ボツリヌス毒素と破傷風毒素の標的細胞は、シナプス小胞から前シナプス血漿膜の結合と融合を必要とする蛋白質の一つのグループであり、それゆえ神経伝達物質の放出が不可欠である。ボツリヌス毒素は、末梢神経である運動ニューロンの前シナプス膜上のレセプターに結合する。これらニューロンの標的タンパクのProteolysisが、アセチルコリンの放出を阻害し、それによって筋収縮を妨げる。BoNTs/B、C、FとGは、シナプス小胞付随膜タンパクであるSNAP-25を、hydrolyzesする。破傷風毒素は、ニューロンの二つのタイプに入ることで、中枢神経系に作用する。破傷風毒素は、はじめに運動ニューロンの前シナプス膜上のレセプターに結合するが、その後に、逆行性小胞輸送によって脊髄内に輸送され、そこから神経毒が抑制性神経ニューロンにはいることができる。このニューロン内での、小胞付随膜タンパクとシナプトブレビン(synaptobrevin)の分裂は、次々に筋収縮を引き起こすグリシンとGABA(gamma-amino-butyric acid)の放出を阻害する。

 ボツリヌス毒素と破傷風毒素の作用による臨床症状(それぞれ弛緩と痙性麻痺)の比較結果は、作用した特定のニューロンとブロックされた神経伝達物質の型に直接関与する。

 

 細菌のスーパー抗原:多くの長所

  いくつかの細菌毒素は、直接免疫系のT細胞と抗原提示細胞(APC)作用することが可能である。毒素によるこれらの細胞の免疫学的機能の障害は、ヒトの病気を引き起こす。このカテゴリーの一つの大きなファミリーは、pyrogenic毒素スーパー抗原(PTSAgs)で、免疫細胞系の強力な刺激, pyrogenicityとエンドトキシンショックの増幅を含む生物学的特徴の優れた特徴を持つ。これらの安定な状態で分泌された22kDaから30kDaの毒素は、下に述べるようなブドウ球菌腸管毒、血清型A−E,G,H,グループAレンサ状球菌pyrogenic外毒素血清型A−C,F、グループAレンサ状球菌スーパー抗原、ブドウ球菌TSST-1を含む。

  すべてのPTSAgsは、共通の生物学的活動を共にするが、TSST-1は30%以下のアミノ酸が、ほかのファミリーの毒素と相同性を持っていることから、毒素ファミリーの中でもっとも多岐にわたるものである。TSST-1は、染色体にコードされており、tst gene(遺伝子)は黄色ブドウ球菌の可変性遺伝因子に存在している。その毒素は、成熟した22kDaの毒素を産生ために分裂するシグナル配列として作用するはじめの40のアミノ酸とともに234個の残留物の前駆物質分子として合成される。TSST-1の発現は酸素、温度、ph,グルコースレベルに依存し、黄色ブドウ球菌のagr座位によって制御されている。

  結晶解析の基礎で、TSST-1は二つの異なったドメインによって構成される毒素内のいくつかのPTSAgsと類似した構造であることがあきらかになった。しかし、ほかのファミリーのメンバーには類似しておらず、TSST-1は、亜鉛補助因子を必要としない。

  TSST-1の領域(アミノ酸残留物)はgrasp motif,として存在し、領域bは5つの螺旋状のbarrel motifを構成する、これは、オリゴ糖とオリゴヌクレオチドの結合を折りたたんで作られたものである。

  通常、PTSAgsの強力な免疫刺激(抗原提示細胞の表面に発現する)主要組織適合性クラスU分子のペプチド結合間隙外の別の領域との毒素の結合と、T細胞受容体の特異的Vエレメントとの毒素の結合の結果に直接関係する。特に、TSST-1のb領域は、第一にヒト白血球抗原−dr1分子のa鎖と結合し、一方、a領域は特異的にヒトのT細胞受容体Vエレメントに結合する。TSST-1と T細胞受容体エレメントの結合は末梢性T細胞の20%を超える大幅な増殖、つまり、T細胞Vレパートリーが劇的にゆがむことを引き起こす。この増殖を経験するT細胞は不応答やアポトーシスの起こる状態でも引き続いて存在することができる。

  T細胞増殖の随伴性は、(インターロイキン[il]−2,腫瘍壊死因子γインターフェロン)に由来するリンパ球と(il−1,il−6,腫瘍壊死因子a)に由来するサイトカイネースの単球両方の大量遊離である。これらのサイトカイネースは、エンドトキシンショック症候群に特徴的な低血圧、高熱、拡散する紅斑性発疹の仲介者となる。

  ブドウ球菌性エンドトキシンショック症候群を引き起こすキー物質として長い間確立されていたTSST-1は、最近、アメリカ合衆国の子供に後天的な心疾患を引き起こす川崎症候群と何らかの関係があると考えられている。

 

Dr. Jekyll or Mr. Hyde?  (ジキル博士かハイド氏か?)

 

 これらの毒素による強い病気のいくつかは、細胞生物学の基礎知識を深めるためや、医学的な目的に利用されてきた。例えば、百日咳毒素と同様、コレラ毒素や同類の大腸菌の不安定な(変化しやすい)毒素は真核生物におけるアデニル酸シクラーゼの活性化メカニズムやcAMPのセカンドメッセンジャーとしての役割を理解する生物学的な手段として用いられてきた。これらの毒素、コレラ毒素や不安定な毒素のいくつかの派生物はまたこれらの分子のアジュバント特性のため、人間のワクチンに組み入れられてきた。

 同様に、いくつかの強力なサイトトキシンの働きはあるガンの有力な治療に利用されてきた。それらの毒素は、治療に直接使ったり、免疫毒素の構成要素として使われることもできる。例えば、細胞表面のグリコリピド CD77へ結合しているStxは、ある特定のBリンパ球のB細胞によって発現する。この発見は Stxはネズミの(そして潜在的の人間の)悪性のCD77+を持つB細胞の骨髄を骨髄移植の前に浄化するすることができることを示す研究を導いた。タンパクの合成を抑制するジフテリア毒素やPseudomonas外毒素A,もしくは植物の毒素のリチン、のような他の毒素はしばしば、免疫毒素の細胞を殺す構成要素として設計されている。これらの「魔法の弾」、つまり毒素分子の酵素活性部分とmonoclonal抗体(もしくはレセプター)の掛け合わせは、B細胞lymphomasや、白血病、そして脊髄移植患者の治療のために臨床試験中である。

 幾つかの臨床治療薬は強力なボツリヌス菌の神経毒素A(BoNT/A)が有効であると分かってきた。BoTN/Aへの応答の異常は筋肉の過剰な活動を巻き込む。最小の精製された毒素は麻痺した目的の筋肉の特定部位や筋肉発作の除去の場所へ送り込まれる。治療は毒素の効果が通常数ヶ月以内であるため断続的であるべきだ。BoNT/Aによって治療された最初の病気は動眼の異常であった。しかしながら、BoNT/Aの治療効果は頚部や咽頭部の異常、writer's cramp(けいれん)、半顔けいれん、けいれん(振動)やチックなど多くの他の異常への価値も証明されてきた。BoNT/Aほまた表情筋の収縮による深いしわを減らすために化粧品にも使われている。

 

 もう一つの中毒性細菌の医学的応用の利く生産物は、ストレプトキナーゼで、いくつかの病原性の連鎖球菌系によって産生される強力なプラスミノーゲンである。そのストレプトキナーゼのproteolyticな活動性は心臓発作をもつ患者の動脈の塞がりを取り除くのに使われる。

 

Vaccinate, Don't Procrastinate  (天然痘の予防接種をするのを引き延ばすな)

 細菌の病原菌毒素の構成要素に向けたワクチンはある種の病気を防ぐのに非常に有効であることが判明している。最も認可された変性毒素のワクチンは、比較的粗野であるが、効果的な下準備である。これらのワクチンはC. diphtheriae, C. tetani, や B. anthracisのsupernatants培養で得られた部分的に浄化された毒素preparationsから成っている。ホルムアルデヒドの処理はジフテリアや破傷風の毒素をワクチンを作るために解毒するのに使われる。炭疽症のワクチンは保護する抗原と少量の致命的な要素と、浮腫の因子の毒素を含んでいる。現在のボツリヌス菌のワクチンは五つのボツリヌス菌の変性毒素の粗雑なpreparationsから成る研究された薬であり、毒素や有機体について研究している研究者の病気の制御と予防センターが配る。百日咳の毒素を含むAcellular百日咳のワクチンはそれだけで、もしくは幾つかの構成要素の一つとして、死んだ細胞全体のワクチンと同じ位効果があり、そのようなワクチンは最近は年長の子供だけでなく幼児にも認可されるようになってきた。

 毒素を標的とした新しいワクチンは発達の様々な段階にある。研究や開発、臨床前、phase I, phaseU, または phaseVである。変性毒素のワクチンの新しい世代は概して3つのカテゴリーに入る。化学薬品を用いるか遺伝子的な方法で不活性化された浄化された変性毒素、遺伝的に作られる変性毒素を産生させる主体のを弱めた生きた毒素、もしくはV. cholerae や Salmonellaのように標的毒素を産生するのとは無関係な細菌ベクターを弱めた生きた変性毒素である。特定の毒素のワクチン開発におけるそれぞれのこれらの接近や進歩の例は、年に一度Jordan Reportに書かれる。

 ジフテリア、破傷風、ボツリヌス変性毒素に対して挙げられる抗毒素もまた長年重症の患者を治療するのに使われてきた。大腸菌O-157:H7によって産生されるStx毒素とその他のSTECに特異的な抗血清はhemolytic uremic症候群、これらの伝染病の後遺症の治療や予防のために開発の段階にある。

 

概要

 

 微生物の毒素が真核生物の細胞における必須機能や一連の酵素反応を遮ったり過剰に刺激したりすると言うことはキャリア細菌によって導き出される。宿主と細菌間の相互作用状態やその細菌にとっていくつかの環境的に適切な場所に出会ったとき、おそらくこれらの毒素は細菌に対していくぶんかの利益をもたらしていると考えられる。ある細菌毒素は標的細胞の表面で回復不能な障害をその細胞膜に与えたり正常な細胞のシグナル伝達を変化させたりする。分子が感受性細胞の原形質へエンドサイトーシスによって取り込まれると他の毒素は酵素的な活性を示す。しかし他の表面性の毒素は正常な宿主の細胞機能を働かせたり失活させたりすることによって働く。

 しかし感染期における感受性宿主に対する毒素の中のいくつかは、真核生物の細胞の酵素反応を実験的に活性もしくは阻害するための薬学的応用物として利用されている。このように成熟した、もしくは発育段階の、または再現性の病原体の疾病におけるそれらの毒素の役割や、毒素によって破壊される宿主細胞の性質と言った新しい情報を得ることによって微生物毒素の研究は生み出された。