平成15年度 微生物学(感染と看護)試験問題
1. 生後9か月の男児。ある冬の朝から頻回の嘔吐と下痢とがみられたため、翌朝に受診した。患児はうとうとしているが時折不機嫌に泣き、眼はくぼみ、皮膚の緊張は低下し、便は白色水様で吐物は胃液様であった。乳児白色便性下痢症に伴う脱水症と診断され直ちに入院となり、輸液が開始された。
問1.原因菌として考えられるのはどれか。
(番号に◯を付けよ。)
1. クラミジア
2. ロタウイルス
3. 病原性大腸菌
4. 赤痢菌
問2. 細菌性胃腸炎(食中毒)感染型と毒素型の定義とそれぞれの起炎菌についてのべよ
問3 ウイルス性下痢症の病原体を二つ上げよ
2. 抗菌薬耐性細菌について、誤っているのはどれか (番号に◯を付けよ。)
1. 薬剤耐性の機序のひとつにβラクタマーゼ産生がある。
2. 薬剤感受性検査のひとつに最小発育阻止濃度(MIC)測定がある
3. 多剤耐性結核菌のひとつに非定型抗酸菌がある。
4. MRSAの院内感染経路のひとつに医療従事者の介在がある
3. AIDS (後天性免疫不全症候群).患者への指導で適切なものはどれか。
(番号に◯を付けよ。)
a. 服薬のコンプライアンスの向上が重要である
b. 経口避妊薬を用いて避妊する
c. HIVはドラッグのまわし注射で感染する
d. 性交では感染しない
1.a,b 2.a,c 3.a,d 4 b,c 5.
b,d 6. c,d
4. ウイルスの一般的特徴について正しいのはどれか
(番号に◯を付けよ。)
1. 大きさは1〜10μmである。
2. 人工培地では増殖できず、生きた細胞が必要である
3. アルコール消毒は無効である
4. 抗菌薬によって不活化される
5. HIV感染症の薬物療法で正しいのはどれか。
(番号に◯を付けよ。)
1. CD4陽性細胞の増加で効果が判定できる
2. 薬剤は単剤で開始する
3. AIDS が発症してから開始する
4. 妊娠中は禁忌である
6. 結核について正しいのはどれか。
(番号に◯を付けよ。)
1. 塗抹検査には抗酸菌染色を用いる。
2. 結核菌の遺伝子検査は、培養検査より時間を要する
3. 感染後1週間後からツベルクリン反応が陽性となる
4. 感染数年後に粟粒結核に進行する
7. 腸管出血性大腸菌O-157感染症に見られる症状はどれか。
(番号に◯を付けよ。)
1.腸穿孔
2.蛋白漏出性胃腸炎
3.過敏性腸症候群
4.溶血性尿毒症症候群
8. 免疫について誤っているのはどれか。
(番号に◯を付けよ。一つとは限らない。)
1. T細胞は主に細胞性免疫を担う
2. B細胞は抗体産生を担う
3. IgGは粘膜免疫に重要な役割をしている
4. 分泌型IgAはウイルス血症に重要な役割をしている
9. 正しい組み合わせはどれか。
(番号に◯を付けよ。)
a. 胃潰瘍 ----------------------------- ヘリコバクターピロリ
b. 伝染性単核症 ----------------------- 単純ヘルペスウイルス
c. 成人T細胞白血病(ATL)-------------- サイトメガロウイルス
d. 重症急性呼吸器症候群(SARS)---------- 新型コロナウイルス
1.a,b 2.a,c 3.a,d 4 b,c 5.
b,d 6. c,d
10.
インフルエンザウイルスについて以下の問に答えよ
問1
インフルエンザウイルス感染を予防するためのワクチンについて
問2
治療薬をあげよ
A型インフルエンザ治療薬
A,B型両方に有効なインフルエンザ治療薬
問3.
高齢者がインフルエンザウイルス感染症にかかると細菌性の二次感染により肺炎が重症化することが多い。そのためインフルエンザワクチンのほかに細菌性肺炎の予防としてワクチン接種が薦められているが、なにか。
問4.
今年のインフルエンザ流行時期に、SARSが流行するかもしれないと恐れられている。
1)
SARSとはなにか
2)
SARSの病原体はなにか
3)
SARSの潜伏期は
4)
SARS患者が突然外来に来たときにはどのようなことに注意しないといけないか
解答
1.
問1 2.
問2 感染型 サルモネラ菌
腸炎ビブリオ菌
カンピロバクター
病原大腸菌
セレウス菌
ウエルシュ菌
毒素型 ブドウ球菌
ボツリヌス菌
問3
ノーウォーク様ウイルス(ノロウイルス)、ロタウイルス、アストロウイルス
2.
3.
3.
2.
4.
2.
5.
1.
6.
1.
7.
4.
8.
3,4
9.
3.
10.
問1 現在我が国を含め多くの国で用いられているインフルエンザワクチンは、エーテルでウイルスを処理して発熱物質などとなる脂質成分を除き、免疫に必要なウイルス粒子表面の赤血球凝集素(HA)を密度勾配遠沈法によりHAを回収して主成分とした、HAワクチンといわれる不活化ワクチンである。WHOでは、世界から収集したインフルエンザの流行情報から次のシーズンの流行株を予測し、ワクチン株として適切なものを毎年世界各国にむけて推奨している。現在はA型のH3N2とH1N1およびB型の3種のインフルエンザウイルスが、世界中で共通した流行株となっているので、原則としてインフルエンザワクチンはこの3種類の混合ワクチンとなっている。HA抗原含有量はワクチン0.5ml中に各株のHA蛋白が15µgづつ含まれている。
問2
抗A型インフルエンザウイルス薬 アマンタジン・リマンタジン
抗A・抗Bインフルエンザウイルス薬 インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼの作用を阻害することによって、細胞内で感染増殖したウイルスが細胞外に放出されることを抑制し、抗ウイルス作用を発揮するザナミビル(Zanamivir)、同様にノイラミニダーゼ阻害作用を持つプロドラッグであるオセルタミビル(Oseltamivir)は経口薬
問3
インフルエンザウイルス流行期には高齢者は肺炎連鎖球菌感染症をはじめグラム陰性桿菌感染症による肺炎によって死亡することがある。現在利用できる肺炎連鎖球菌ワクチン(23種類の多糖体)を使用することが薦められている。
問4
1)SARS sever acute respiratory syndrome 重症急性呼吸器症候群
2)新型コロナウイルス
3)10日から14日
4)もともとの感染源は動物と考えられている。
SARS患者から人への感染は飛沫感染(マスク)と接触感染(手洗い)
患者にマスクをさせることと、患者と接触する人もマスク、手袋をし、患者を直ちに他の患者から隔離するとともに、部屋の消毒とともに、周囲の患者さんにはSARSに関する感染予防の説明をする。通常、県のガイドラインにしたがって、指定の病院に行くように指示する。