古く1920〜21年にクロイツフェルトとヤコブが独立に報告した疾患で、物忘れ、視覚異常、 小脳症状(歩行障害、言語障害など)気分変調などが初発症状で痴呆症状が急速に進行し、 錘体路(体の麻痺)、錘体外路症状(不随意運動)、ミオクローヌス(骨格筋の収縮)、 意識障害も発現し、数ヶ月で無動、無言状態になり1〜2年で死亡するといわれている。 従来は有病率は100万人に1人といわれる珍しい病気で発病は50〜70歳代と、初老、高齢期とされてきた。 ところが1996年、英国を中心に多発した狂牛病との関連で牛肉を多食した若年者にCJDが発症していると 報告されパニックとなった。病因としては感染型プリオン蛋白(PrP−sc、スクレイピー型プリオン 蛋白)によると指摘されておりプリオン病ともいわれ、症状からは伝達性海綿状脳症ともいわれる。
人でも経脳、経皮、経眼的感染すると発病するが、経口感染、経気道感染での感染では発病しにくい。医源性CJDの感染については、
角膜移植、脳硬膜移植、脳下垂体製剤、脳内深部電極の使用が報告されている。また臓器移植、輸血、血液製剤注射、いれずみ、ピアス、
暴力的性行為もCJDの感染を引き起こす可能性があるという。
(図2)
細胞培養ではコンゴレットが異常プリオン蛋白の蓄積を阻止することが見出されている。 またアンフォテリシンBや硫酸デキストランが発病を遅らせると見出されている。 しかし発症後の治療に対しては無効である。治療法には栄養の補給、呼吸器および尿路の感染に対する予防、 治療が必要である。ミオクローヌスが激しい場合にはdiazepamやclonazepamを用いる。 錘体外路症状改善にはamantandineが有効の場合もある。
CJD病原体では通常のウイルスに対して行われる紫外線、エタノール・ガス殺菌などの消毒法が無効である。 完全にプリオンを失効させる処理・汚染材料の消毒法は、図3・4にまとめてある。患者からの感染の可能性としては、 手の汚染(傷口からの感染針)、注射などの刺傷は感染物の目への飛沫や、汚染した手で目をこする、などがある。 したがって、患者の採血、腰椎穿刺による髄液採取、口腔の清拭時のかみ傷や爪による引っ掻き傷、飛沫による眼の 汚染などに注意する。特に脳外科などの手術場や、手術器具の消毒に注意する。手術着などはディスポーザブルなものを着用し、 汚染したものは焼却する。手術器具などはSDS(sodium dodecyl sulfate)で加熱処理するのが最適で剖検や病理標本作成には 特に注意する。