クールー病
1.クールーとは
- ニューギニア東部高地に住むフォア族にかつて発生(1950年代)
- フォア語で寒さや恐怖で震えるという意味
- 発病後3〜9ヶ月で死亡
- ハーバード大学のガイジュセックの研究によると、患者数は2584名
(内訳:女性70%、成人男性10%、子供20%)
- 現在では、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)が原住民の間で人食いの儀式を通じて広がったものとされている。
2.感染経路
- 1) 経口感染
- フォア族には、石器時代から死者の霊を慰める儀式として、死者を食べる風習があった。
死者がCJDに感染していたと考えられ、異常プリオン蛋白の豊富な脳を食べた者にCJDとよく
似た症状が現れた。男性は狩猟に出かけるためこの儀式に参加するのは主に女性と子供であったため、
上のような内訳になったと考えられる。
- 2) 経皮、経眼感染
- 同じく食人の儀式において死者を調理した際に、傷口から感染したり、断片が目に入ったりした
ことにより感染したと考えられる。実際、食べた人より、調理に参加した人のほうが罹患率が高いこと
から、傷口からの感染が主だろうとされる。
※乳を介しての乳児への感染はない。
- 3) ハイテクノロジーによる共食い(医原性CJD)
- 「食人」というと非常にグロテスクだが、医療における移植なども部分的な食人と考えることも
できる。ガイジュセックはこれを現代社会におけるクールーであると位置づけた。
これについてはCJDを参照。
3.病理
- 1) 組織学的
- ・海綿状脳症の典型的パターンを示す
ニューロンがすべてなくなり、その部分に穴が空き、スポンジ状とな
る。
グリア細胞に影響はない。
(穴の空き方は病気により特徴があるらしい)
- ・ アミロイド斑が見られやすい(CJDとの違い)
感染性プリオンは蛋白分解酵素に抵抗性があるため、自分自身で凝集し
やすくなり、脳のあちこちにロッド状の凝集を作る。これがさらに集合
するとアミロイド斑となる。(厳密にはアミロイドーシスの場合とは全
く異なるので、「クールー斑」と呼ばれることもある)
- 2)臨床症状
- ほぼCJDと同じである。行動異常や性格変化などの精神症状で発症し、そ
の後、小脳症状痴呆、ミオクローヌス、痙攣が出現する。脳波のPJD
(periodic synchronous discharge)が認められないのがCJDとの大きな違
いである。この所見が異型CJDにも特徴的なことは重要である。すな
わち、経口感染によるクールー病との類似性は、牛海綿脳症がヒトに感染
しうることを示唆しているからである。
- ※ 異型CJD
- 1996年3月にイギリス政府は、それまでの古典的なクロイツフェルト・
ヤコプ病とは少し異なる型のものがあり、牛海綿状脳症(狂牛病)と
関係があるかもしれないと発表し、食品衛生、薬物行政の上で大問題
になった。クールーと同じ症状を示す。
4.予防法、治療法
CJDと全く同様。クールーについてのみ言うなら、人は食べるなというこ
と。
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