狂牛病(牛海綿状脳症 BSE)


1.狂牛病とは

 

狂牛病(牛海綿状脳症)は牛の脳が、スポンジ様に侵されて死ぬ病気で、 1986年にイギリスで発見された。本症はスクレピーと称する病気の羊の内蔵や、 骨が飼料として、牛の体内に入り、病原となる蛋白質のプリオンが脳の性状プリオンを 異型にかえることから起きるとされている。
英国ではすでに約16万頭の牛が感染し、少数ながら、他の国でも感染が報告された。 英国では狂牛病とよく似た人間の痴呆症の一種、クロイツフェルト・ヤコブ病 Creutzfeld-Jacob disease(CJD)と狂牛病との関連が目下注目されている。


2.狂牛病の発生

英国では、羊や牛の内蔵やくず肉を家畜の飼料として長年使用してきた。一方、 羊のスクレイピーは200年以上も前から発生している。
1980年以前には羊や牛の内蔵ないしくず肉の処理 (レンダリング)には140℃以上の熱処理と有機溶媒による脂肪の抽出が実施されていた。 しかし、1980年以降はレンダリング方法を変更し、有機溶媒による脂肪の抽出を行わなくなった。 異常プリオン蛋白質は熱に強いために、1980年以降に行われたレンダリングでスクレイピーに罹患した 羊内に蓄積した異常型のプリオン蛋白(PrPSC)が失活せずに飼料中に残存し、牛の飼料として市販された。 また、狂牛病に罹患した牛に蓄積した異常型のプリオン蛋白(PrPBSE)も同様に家畜の飼料として牛間を 循環していたと推察されている。
1988年に反芻動物の内蔵やくず肉を家畜の飼料にすることを禁止されるまでに PrPSCやPrPBSEの混入した飼料を袷与された牛、猫に海綿伏脳症が発症した。

 1986年以降、英国では158,000頭の牛が狂牛病と診断され,またアイルランドや他の国でも確認されている。 感染牛は神経過敏、体重減少、歩行困難、乳量の低下を示す。英国及び北アイルランドにおける狂牛病の年度別発生状況によると、 1993年に36,533頭と487頭でピークに達し、その後減少している。1988年に反芻動物由来の蛋白質の反芻動物用飼料への使用が禁止され、 それ以後に生まれた牛の狂牛病罹患頭数は著しく減少している。


3.狂牛病の人への感染について

狂牛病の人への感染については、
@ まず、ヒツジ→マウスのように、種の壁を越えて、プリオン病が伝播する場合、 感染は同種よりも起こり難い。また、種の壁を越えると発症までの潜伏期間も延長する。

A 病原性プリオンを含む食品を摂食した場合には、感染する確率は更に低くなる。 例えば病原性のプリオンが最も濃厚に存在するヒツジ脳を、マウスの脳に接種するなど、 かなり極端な感染手段を使わないと、種を越えて発症させることはできない。 マウスへヒツジの脳を腹腔内に投与した場合には(病原性プリオンが体内に入る確率は低く)、 ヒトに換算すると30年もの期間が発症に必要。まして、食べて感染する確率は極めて低くなる。

B また、現在、心配されている食肉(骨格筋)などは、脳と比べて、プリオンの存在濃度が低く、 極めて感染し難い。

C CJD患者を介護した家族や医師・看護婦などに、CJDが伝播した報告はない。
などの根拠により、まず起こらないと思われる。


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