スクレイピー


1.スクレイピーとは

スクレイピーは脳がスポンジ状になり、神経が侵されるプリオン病である。
18世紀以来ヨーロッパを中心として流行し、畜産に大きな被害を及ぼしてきた。
発病した羊は神経が冒され、はげしいかゆみのために身体を柵などにこすりつけて毛が抜け、 次いで刺激過敏、振戦、後ろ脚の脱力が生じるのが特徴である。数カ月から数年以内に死亡する。
スクレイピーの名前はこする(scrape)に由来する。


2.スクレイピーの感染

動物のプリオン病としては羊のスクレイピーのほかに、牛海綿状脳症、伝達性ミンク脳症などがあるが、 スクレイピーが最も古い疾患であり、Cuille & Chelle(1936)が病気の羊の脳を他のヒツジ、ヤギ、 マウスの脳に接種し、発病させることに成功し、感染性の疾患であることを証明したため、 すべての動物のプリオン病の元となった可能性がある、と言われている。
羊のスクレイピーは病気の羊の胎盤に病原体が多く含まれることから、これをほかの羊が食べたり、 汚染した牧草を食べることで広がるらしい。すなわち経口感染での伝播である。 英国では、牛海綿状脳症は牛の配合飼料に蛋白源として加えられていた羊の肉や内臓が、 十分な加熱処理をされずスクレイピーに汚染していたために、牛の間で広がったものと考えられている。これも経口感染である。 日本では、羊を牛の飼料にしていない、と農水省は話している。

人間はスクレイピーの羊と200年以上接触してきている。これまでに羊から人に病気がうつった可能性について世界各国で検討されたが、 その可能性を示唆するような結果は得られていない。 羊から人への種の壁を越える可能性は考えにくいとみなされている。 しかし、英国を中心に問題となっている新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、 ウシを介することで、ヒツジのスクレイピーが種の壁を越えてヒトに感染する可能性を示している。



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