3. 破骨細胞の機能の解明

破骨細胞の分化と骨吸収の機能制御を分子レベルで明らかにすることを目標としています。破骨細胞は生体防御で重要なマクロファージと近縁の細胞で、炎症性の疾患や癌の研究とも深い関わりのある細胞です。

◆ 破骨細胞について

破骨細胞は、造血系幹細胞に由来した前駆細胞が融合することによって形成される多核の大きな細胞で、骨吸収能(骨を溶かす作用)を持った細胞です。この前駆細胞はマクロファージに近縁の細胞であるので、試験菅の中ではマクロファージ系の細胞から 破骨細胞を形成することが出来ます。また、病原体が侵入したときに活発となるマクロファージから産生される炎症性のサイトカインによって、破骨細胞の骨吸収能が促進されます。このような炎症性のサイトカインによる骨破壊は、慢性関節リウマチや、歯周病などで問題となっています。

破骨細胞の機能や分化は骨形成を行う骨芽細胞の膜上の分子、破骨細胞分化因子(ODF/RANKL)によって制御されていること、その分子は炎症性サイトカインであるTNFファミリーに属する分子であることが明らかにされています。このような分子が明らかにされたことにより、多くの研究者がこれらの分子を中心とした研究を行っています。
 
◆ 我々の研究室で行ってきたこと

私たちの研究室では、このような破骨細胞の分化及び骨吸収能の機能制御を明らかにするために、in vitroで骨髄細胞から破骨細胞を形成し骨吸収能を有することなどを研究してきました。また、破骨細胞はマクロファージの細胞に近縁の細胞であることから、in vitroでマクロファージ細胞から破骨細胞を形成することも報告しています(Endocrinology 1995 )。in vitroで形成した破骨細胞を骨片上に載せて培養すると骨吸収能を見ることが出来ます。

さらに、慢性関節リウマチなどの滑膜液中に高濃度で存在するIL-15やTNFαが実際に破骨細胞の形成を促進することや、そのメカニズムについても報告しています。その結果、IL-15やTNFαは単独では破骨細胞の形成に作用しないが、RANKLと相乗作用することにより破骨細胞の形成を促進し、骨吸収が促進されることなどを明らかにしました。(J. Immunology 1999, Bone 2001)
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◆ 現在行っている研究等

このような破骨細胞の機能を明らかとするために、私達の研究室では、独自に研究室で遺伝子をクローニングした、破骨細胞で働く蛋白質の機能についても研究を行っています。その中の1つであるOsteoclast zinc finger protein (OCZF) はN末端にPOZという蛋白質相互作用に関する領域、N末端にDNAに結合するZnフィンガーを持つ転写制御因子で 破骨細胞の分化制御に関わると考えています(Blood 1999)。現在このOCZFの機能を明らかにするために、in vitroだけでなくトランスジェニックマウスの作成も行い、病態の解析などの研究を進めています。


OCZFのようなPOZドメインを持つ蛋白質の多くは転写抑制作用をもっています。それはPOZドメインを介し染色体を構成するヒストンを脱アセチル化させる酵素ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を染色体に動員させクロマチンの構造を変化させるためであるといわれています。私達はHDACの阻害剤を破骨細胞の培養系に加えると、破骨細胞の分化が著しく阻害されることを明らかとし、報告しています(Blood 2003)。さらに最近、HDAC阻害剤はインターフェロンβの産生を誘導することにより破骨細胞の分化を阻害している可能性があることも、in vitroだけでなくラットアジュバント関節炎のモデルを使用し明らかとしました(J. Immunology 2005)。

破骨細胞で働く分子は様々な免疫系の細胞においても働いているため、免疫系の異常が破骨細胞にも影響を及ぼし、様々な疾患に関連しています。
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研究概要1.レジオネラ2.MRSA▲ このページ (3. 破骨細胞) の先頭へ4.生物兵器対策